付加製造への3Dスキャナーの応用

付加製造への3Dスキャナーの応用

日本では3Dプリンターという言葉が広く使用されていますが、ASTM規格では、付加製造技術(Additive Manufacturing Technology)が正式とされています。ここでは、付加製造の概要と3Dスキャナ型三次元測定機「VLシリーズ」の応用について紹介します。

付加製造とは

切削加工に代表される除去製造(Subtractive Manufacturing)が材料を削って造形するのに対して、付加製造(Additive Manufacturing)は、3Dプリンターで材料を積層して造形します。

目的形状
除去製造
丸棒やブロック材などの材料から削り出して製作する
付加製造
樹脂や粉末などの材料を積層して製作する

付加製造のメリット

複雑な形状が製造可能:

切削工具の入らない中空形状やオーバーハング形状の製品を製造できます。
複雑な形状の造形や軽量化が可能になります。

目的形状
除去製造
中空形状(A)の加工ができない、
オーバーハング部(B)の加工が困難
付加製造
中空形状(A)の加工ができる、
オーバーハング部(B)の加工ができる
短納期、多品種・少量生産に最適:
金型や治工具が不要で3Dデータさえあれば造形できるため、多品種・少量生産に向いています。また、短納期で製造できるメリットがあります。
部品点数の削減:
従来の除去製造などでは複数の部品を溶接したりロウ付けする必要がありましたが、付加製造は一体で造形できるため、部品点数が削減できます。また、材料を積層して造形するため、材料費を節約できます。
自動化:
3D CADデータさえあれば、専門的な知識がなくても自動的に生産できます。
また、3Dプリンターがあれば全世界どこでも生産可能です。

ASTM規格による付加製造の7つの方式

個人向けに販売されている市販の3Dプリンターは材料押出堆積方式ですが、付加製造では造形する材質に応じてさまざまな方式が実用化されています。キーエンスでは、材料噴射堆積方式を採用しています。

材料押出堆積(material extrusion):
流動性のある材料をノズルから押出し、選択的に固化堆積させます。
原料:熱可塑性樹脂
シート積層(sheet lamination) :
シート状の材料を積層して接着します。
原料:紙、樹脂、金属箔
材料噴射堆積(material jetting) :
液滴状の材料を噴射して選択的に固化堆積させます。
原料:光硬化性樹脂、ワックス
結合剤噴射(binder jetting) :
粉末材料に液体の結合剤を噴射して選択的に固化堆積させます。
原料:石膏、プラスチック
指向性エネルギー堆積(directed energy deposition) :
材料を供給しながら、集光した熱エネルギーの位置を制御し、材料を選択的に溶融し固化堆積させます。
原料:金属
液槽光重合(vat photopolymerization) :
タンク内の液状の光硬化性樹脂(感光性樹脂)を光(光重合反応)によって選択的に硬化させます。
原料:光硬化性樹脂
粉末床溶融結合(powder bed fusion) :
粉末床の領域を熱エネルギーによって選択的に溶融結合させます。
原料:金属、樹脂、セラミック

付加製造への3Dスキャナーの応用

3Dスキャナーを使用すれば、図面のないものを図面化できます。
リバースエンジニアリングと呼ばれ、以下のような場面で活用できます。

  • 部品設計を依頼した調達先から図面がもらえない
  • 製品に組み込まれた現物そのものの形状を使って設計したい
  • クライアントから現物だけ渡されて図面が存在しない
  • 図面とは違うが、実績のある部品と同じ形状のものをつくりたい
  • 古い部品で紙図面しか残っていない

一般的な製造プロセス

  • CADデータ設計書
  • 解析
  • 試作
  • 生産
  • 製品

リバースエンジニアリング

  • CADデータ設計書
  • 解析・データ処理
  • 形状測定
  • 製品

リバースエンジニアリングの課題

測定精度: 測定誤差が大きくなる/人によってバラつく
現物から図面を作成するためには正確に測定する必要がありますが、ノギスやハイトゲージなどで測定すれば測定誤差が大きくなったり、人によって結果がバラつくことがあります。
測定時間: 測定に時間がかかる
形状が複雑になるほど、測定箇所が増えるので、測定に時間がかかります。
データ品質: 形状が正しく再現されない
3Dスキャナを用いて全体形状をスキャンし図面化する方法がありますが、データ品質が良くない、解像度が低い、といったことが原因で、形状が正しく再現されないといった問題があります。

3Dスキャナ型三次元測定機「VLシリーズ」による課題解決

キーエンスの3Dスキャナ型三次元測定機「VLシリーズ」では、従来の困りごとを解決し、簡単にリバースエンジニアリングすることができます。

測定精度:精度の高い測定ができる
XYZの空間内で測定精度±10 μm、繰り返し精度2 μmの精度保証をしています。人によるバラつきなく精度の高い測定ができます。
測定時間:ワンショット約30秒
ワンショット約30秒でスキャンすることができます。複雑な形状であっても、測りたい箇所を簡単に素早く測定することができます。
データ品質:サンプルにあわせてスキャン設定できる

サンプルの形状や大きさにあわせてスキャン設定を行うことができます。
微細な形状には高精細モード、また、サイズの小さいものには高倍率カメラを選択し、どのようなサンプルであっても高いデータ品質を保ちながら形状を再現することができます。

3Dデータ化
スキャンデータ
STLデータ
※CADデータまで変換するためには、専用ソフト、または外部サービスが必要です。
2Dデータ化
平面計測
断面計測(DXF出力)