第5章 防爆構造電気機械器具
防爆安全の概要
可燃性ガスや引火性液体を取り扱う場所において、可燃性ガスや引火性液体の蒸気が空気と混合されると爆発性の雰囲気が生じます。この爆発性の雰囲気に電気火花や高温の物などの点火源が存在すると、爆発や火災が起きる可能性があります。このような危険場所では爆発を防止する防爆構造電気機械器具を使用しなければなりません。日本においては以下のA、B、およびCにより、危険場所に使用する防爆構造電気機械器具は、登録検定機関による検定を受けなければなりません。
- A 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
- B 労働安全衛生規則(昭和47年9月労働省令第32号)
- C 機械等検定規則(昭和47年9月労働省令第45号)
危険場所
可燃性ガス・引火性液体を取り扱う場所において、大気中に放出・漏洩した可燃性ガス・蒸気と空気が混合した爆発の危険性のある雰囲気が存在する場所を危険場所と呼びます。
このような場所では、危険の程度に応じて防爆構造電気機械器具の構造を選定することになっています。
危険場所の分類
危険場所は、JIS C 60079-10(IEC60079-10)により、爆発性雰囲気の存在する時間・頻度に応じて次の3つの区分に分類されます。
Zone0 | (0種場所/特別危険箇所) 爆発性雰囲気が連続して、もしくは長時間存在する場所 例:可燃性ガスが充満する可燃性液体のタンク内 |
---|---|
Zone1 | (1種場所/第一類危険箇所) 通常状態において、爆発性雰囲気を生成する可能性がある場所 例: 通常の作業・保守作業などで爆発性ガスが放出される可能性がある開口付近 |
Zone2 | (2種場所/第二類危険箇所) 通常状態において、爆発性雰囲気が存在しない、もしくは存在した場合でも短時間である場所 例: Zone1の周辺で、爆発性雰囲気がまれに侵入する恐れがある場所 |
※( )内はそれぞれ、電気機械器具防爆構造規格/工場電気設備防爆指針における定義を示します。
防爆電気機械器具の表示
防爆電気機械器具は、以下に示すような内容を表示することにより、その器具の防爆構造、および性能を表します。
※電気機械器具防爆構造規格には、従来の構造規格とIEC規格に整合した技術的基準と呼ばれる二つの規格が存在し、それぞれ防爆性能の記号、および危険場所の区分に適用する表示の違いがあります。
防爆電気機械器具の表記例
構造規格に基づく表記例
d 2 G3
- d:防爆構造の種類
- 2:爆発性ガス・蒸気の爆発等級
- G3:爆発性ガス・蒸気の発火度
技術的基準に基づく表記例
Ex d ⅡB T4 X
- Ex:IEC規格にもとづく防爆構造であることを示す
- d:防爆構造の種類
- ⅡB:防爆電気機械器具のグループ
- T4:爆発性ガス・蒸気の温度等級
- X:使用条件(条件がある場合)
爆発性ガス・蒸気の分類
爆発性ガス・蒸気の爆発等級
構造規格 | 技術的基準 | ||
---|---|---|---|
爆発等級 | 火炎逸走限界値(mm) | グループ | 最大安全すきま(mm) |
1 | 0.6を超えるもの | ⅡA | 0.9以上 |
2 | 0.4を超え0.6以下のもの | ⅡB | 0.5を超え0.9未満 |
3 | 0.4以下のもの | ⅡC | 0.5以下 |
発火度または温度等級
爆発性ガスの発火温度(℃) | 構造規格 | 技術的基準 |
---|---|---|
450を超えるもの | G1 | - |
300を超え450以下のもの | G2 | T1 |
200を超え300以下のもの | G3 | T2 |
135を超え200以下のもの | G4 | T3 |
100を超え135以下のもの |
G5 | T4 |
85を超え100以下のもの | - | T5 |
85以下のもの | - | T6 |
防爆構造の種類
防爆構造の種類とその内容
防爆構造の種類 | 構造規格 | 技術的基準 |
---|---|---|
耐圧防爆構造 | d | d |
内圧防爆構造 | f | p |
安全増防爆構造 | e | e |
油入防爆構造 | o | o |
本質安全防爆構造 | ia, ib | ia, ib |
特殊防爆構造 | s | - |