第2章 レーザ安全規格について
FDA 21CFR Part 1040.10(CDRH)
CDRHによるレーザ規制
レーザ製品に対する具体的な規制内容は、21CFR Part 1040.10に規定されています。ここに明記される要求事項をレーザ製品が満たしていなければ、アメリカ国内への輸入、およびアメリカ国内での販売はできません。
ただし、Part1040.10の代替要求事項として、IEC60825-1を採用してもよいことをCDRHが表明しており(CDRH Laser Notice No.56)、レーザ製品がIEC60825-1における要求事項を満たせば、CDRHの要求事項を満たしたとみなされ、アメリカ国内への輸入、およびアメリカ国内での販売が可能になっています。
なお、IEC60825-1の全ての要求事項をCDRHが許容しているわけではありませんので、その詳細は、CDRHが発行したLaser Notice No.56を参照ください。
レーザクラス分類
レーザクラス | クラスの位置付け |
---|---|
Class I | 危険なものとみなさない。 |
Class Ⅱa | 400~710nmの可視光帯域のレーザ光が分類されるクラスで、ある一定の時間(1000秒)以内での観察は危険とはみなされないが、1000秒を越えての慢性的な観察は危険とみなされている。 |
Class Ⅱ | 400~710nmの可視光帯域のレーザ光が分類されるクラスで、慢性的な長時間のビーム観察が危険とみなされている。一般的に、目の嫌悪反応(瞬き)により長時間の観察から保護されると位置付けられている。 |
Class Ⅲa | 放射照度のレベルにもよるが、慢性的なレーザ光観察も、一時的なレーザ光観察も危険とされる。光学機器を用いて直接レーザ光を観察することは危険とみなされている。 |
Class Ⅲb | 一時的であっても、直接レーザ光を皮膚や目にさらすことが危険とみなされている。 |
Class Ⅳ | 一時的であっても、直接レーザ光を皮膚や目にさらすことが危険とみなされているだけではなく、拡散反射光であっても、皮膚や目に障害をもたらすとみなされている。 |
FDA(CDRH)構造要求事項
保護筐体
保護筐体とは、一般に製品の筐体を意味します。内部のレーザ光が外部に漏れないようにするための筐体(開口部を除く)であり、機械的強度を十分に維持できるものでなければなりません。
セーフティインターロック
セーフティインターロックとは、保護筐体に設置されなければならない安全保護装置のことで、作業者が操作中又はメンテナンス中に保護筐体を開放する仕様になっている場合に、作業者が内部のレーザ光にさらされることを防止することを目的としています。
リモートインターロックコネクタ
リモートインターロックコネクタの機能は、コネクタのターミナルが開放された場合に、レーザ放射を停止する機能です。使用者が非常停止スイッチなどを接続して使用することを意図しています。
キーコントロール
キーコントロールの機能は、キーが「ON」の位置にあるときのみレーザが放射される機能です。したがって、キーが「ON」以外の位置にあるときには、レーザは放射されません。キーが取り外しできるのは、キーが「OFF」の位置にあるときだけです。
コントローラロケーション
コントローラロケーションとは、レーザ製品の操作制御系が、レーザ製品を操作する作業者がレーザ放射に直接さらされることがない位置に存在していることを意味しています。作業者がレーザ製品を操作する際に、レーザ放射にさらされなければ操作できないということを避けることを目的としています。
エミッションインジケータ
エミッションインジケータの機能とは、レーザ製品からレーザが放射される可能性がある、或いは既にレーザ放射がなされていることを視覚的又は聴覚的手段で作業者に知らせる機能です。視覚的手段の場合、保護めがねを通しても認識可能でなければなりません。
ビームアッテネータ
ビームアッテネータの機能とは、レーザ製品から放射されるレーザ光を電気的又は機械的手段で遮断する機能です。この機能は、レーザ製品の主電源スイッチやキーコントロールとは別に、単独で設置されなければなりません。
スキャニングセーフガード
スキャニングセーフガードの機能とは、走査系を有するレーザ製品のレーザ走査が故障した場合に、例えばレーザ走査を停止するなど、当該クラスのAELを越えないように制御する機能です。
マニュアルリセット
マニュアルリセットの機能とは、リモートインターロックコネクタの機能によりレーザ放射が中断された後、手動でなければレーザ放射を再始動できないように制御する機能です。つまり、ある特定の手動による操作を経なければ、リモートインターロックコネクタを再度短絡したとしても、レーザ製品はレーザ放射停止状態を維持し、自動的に復帰することがありません。
識別ラベル/証明ラベル
このラベルは、21CFRのJ章「Radiological Health」の適用を受ける電気製品に要求されるラベルで、製造者の名称及び住所、製造年月、及び要求事項への適合性を示す文章を明示するラベルです。右記は本ラベルの一例です。
警告ラベル/開口ラベル
警告ラベルとは、レーザクラスに応じて定められるラベルで、警告文、レーザの仕様及びレーザクラスの記述を明示するラベルです。また、開口ラベルとは、レーザ光が外部へ放射される際に通過する保護筐体の開口部を明示するラベルです。以下は本ラベルの一例です。
- Cautionラベルの例
- Dangerラベルの例
FDAクラス別構造要件 (レーザ製品の製造者に対する要求事項)
Class I | Class Ⅱa | Class Ⅱ | Class Ⅲa | Class Ⅲb | Class Ⅳ | |
---|---|---|---|---|---|---|
保護筐体 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
セーフティ インターロック ※1 |
△ | △ | △ | △ | △ | △ |
リモート インターロック コネクタ |
- | - | - | - | ○ | ○ |
キーコントロール | - | - | - | - | ○ | ○ |
コントローラ ロケーション |
- | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
エミッション インジケータ |
- | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
ビーム アッテネータ |
- | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
スキャニング セーフガード※2 |
△ | △ | △ | △ | △ | △ |
マニュアル リセット |
- | - | - | - | - | ○ |
識別ラベル | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
証明ラベル | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
警告ラベル | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
開口ラベル | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
保護筐体ラベル ※3 |
△ | △ | △ | △ | △ | △ |
○:当該クラスでは必須要求事項 -:当該クラスでは不要
△:以下注記参照し、条件に該当する場合に必須要求事項
- ※1 保護筐体が取外し又は移動できない構造であれば、セーフティインターロックを設けなくても良いという例外規定があります。
- ※2 走査系を有するレーザ製品であれば、レーザクラスに関係なく要求される構造要件です。
- ※3 保護筐体が開放できる製品で、開放された時に内部から放射されるレーザ光がClass Iを越える場合に要求されるラベルです。