第3章 機械安全規格について
- 機械安全に関する国際規格の階層構造
- ISO12100 - 機械安全の基本規格
- ISO13849-1 - 制御システムの安全関連部
- 日本における機械安全の考え方
- ライトカーテン使用時の安全距離
- レーザスキャナ使用時の安全距離
レーザスキャナ使用時の安全距離
SZを使用する国または地域の規格、規制、法律、および次の規定に従った正確な安全距離を算出し、その安全距離が確保できるように保護領域を設定しなければなりません。
存在検知の例(保護領域に水平に侵入する場合)
- 上方から機械を見たとき
- 側面から機械を見たとき
S=K×T+C+A <ISO13855(2010)およびIEC61496-3(2008)より>
- S:安全距離(mm)
- K:身体または身体の一部の接近速度(mm/秒)
- T:全応答時間(t1+t2)(秒)
t1:SZの応答時間(秒)
t2: SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間(秒) - C:SZの保護領域に侵入する前に身体の一部が危険区域に接近する距離(mm)
1200-0.4×H ただし、850mm以上であること
H:床などの基準面から検出面までの高さ(mm)
1000≧H≧15×(d×-50)
d:SZの最小検出体(mm) - A:保護領域追加距離(mm)
- P1、P2、P3:SZの保護領域として設定する距離
- W1、W2:危険区域の幅
- B:危険区域の端からSZの検出領域原点までの距離
- D:検知できない隙間
- 危険
-
- ・ SZが検出できない隙間(D)から機械の危険区域に侵入できないようにするため、この隙間(D)が最小検出体サイズ未満となるようにSZを設置してください。SZにより検出されずに最小検出体が保護領域と周辺の構造物との隙間(D)を通過できる場合、追加の安全防護策が必要です。
- ・ 床から検出面までの高さHが300mm(非産業用途の場合には200mm)を超える場合、検出面より下に存在する空間(隙間)を通過して危険区域に侵入できるリスクがあります。SZを設置される際に実施されるリスクアセスメントの際は、この点を必ず考慮に入れ、必要に応じた追加の対策をしてください。
- ・ 150mmの最小検出体サイズを選択すると、基準面から検出面までの高さHが1000mmを越えてしまいます。
存在検知用途(保護領域に水平に侵入する場合)でSZを使用する場合、最小検出体サイズは必ず70mm以下の設定としてください。
安全距離の計算例
- K=1600mm/s
- 身体または身体の一部の接近速度(一定)
- T=t1+t2=0.59秒
- 全応答時間
- t1=0.09秒
- SZの応答時間(変更可能)
- t2=0.5秒
- SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間
C=1200-0.4×H=1080mm
- H=300mm
- 床から検出面までの高さ。H≧15×(d-50)を満足しなければなりません。
- d=70mm
- 最小検出体サイズ(変更可能)
- A=100mm
- SZの保護領域追加距離
- B=59mm
- 危険区域の端からSZの検出領域原点までの距離
- W1=W2=1000mm
- 危険区域の幅
安全距離
S=K×T+C+A
=1600×0.59+1080+100=2124mm
保護領域として設定する距離
P1=S-B=2065mm
P2=S+W1=3124mm
P3=S+W2=3124mm
上記の保護領域を設定したときに、保護領域の境界から1.5m以内に高反射率背景が存在する場合は、P1、P2、P3の値に追加安全距離としてさらに200mm足してください。
設定した保護領域が周囲から確認できるように、床などに保護領域を示すマーキングを行なうことを推奨します。
侵入検知の例(1)垂直の保護領域を通過して危険区域に侵入する場合
- 危険
-
- ・ SZの検出面に対し、対象物が±30°を超える角度で接近するような用途でSZが使用される場合、リファレンスポイントモニタ機能を必ずご使用ください。このとき、リファレンスポイントの許容範囲は±100mm以下、応答速度は90ms以下の設定でなければなりません。
- ・ SZが検出できない隙間から機械の危険区域に侵入できないようにするため、この隙間が最小検出体サイズ未満となるようにSZを設置してください。SZにより検出されずに最小検出体が保護領域と周辺の構造物との隙間を通過できる場合、追加の安全防護策が必要です。
- 正面から機械を見たとき
- 側面から機械を見たとき
S=K×T+C <ISO13855(2010)およびIEC61496-3(2008)より>
- S:安全距離(mm)
- K:身体または身体の一部の接近速度(mm/秒)
- T:全応答時間(t1+t2)(秒)
t1:SZの応答時間(秒)
t2:SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間(秒) - C:手、腕の侵入を考慮した追加距離(mm)
安全距離の計算例
- K=1600mm/s
- 身体または身体の一部の接近速度(一定)
- T=t1+t2=0.59秒
- 全応答時間
- t1=0.09秒
- SZの応答時間(変更可能)
- t2=0.5秒
- SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間
C=850mm(一定)
- d=70mm
- 最小検出体サイズ(変更可能)
S=K×T+C=1600×0.59+850=1794mm
侵入検知の例(2)危険区域へ身体または身体の一部が侵入する場合
- 危険
-
- ・ SZの検出面に対し、対象物が±30°を超える角度で接近するような用途でSZが使用される場合、リファレンスポイントモニタ機能を必ずご使用ください。このとき、リファレンスポイントの許容差範囲は±100mm以下、応答速度は90ms以下の設定でなければなりません。
- ・ 危険区域へ接近できる機械の開口部(以下、危険源開口部と呼ぶ)を保護するために保護領域を設定する場合、手や腕の侵入を確実に検出するため、危険源開口部より大きい保護領域(危険源開口部端から、下図のa,bおよびcで示される領域幅を追加した保護領域)を設定してください。
- ・ 危険区域への手および腕の侵入を検出する用途では、最小検出体サイズを30mm、または40mmに設定しなければなりません。
- 正面から機械を見たとき
- 側面から機械を見たとき
S=K×T+C <ISO13855(2010)およびIEC61496-3(2008)より>
- S:安全距離(mm)
- K:身体または身体の一部の接近速度(mm/秒)
- T:全応答時間(t1+t2)(秒)
t1:SZの応答時間(秒)
t2: SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間(秒) - C:追加距離(mm)8×(d-14)
d:最小検出体サイズ(mm) - a、b、c:危険源開口部端より外側に存在する保護領域幅100-d/2(mm)以上
安全距離の計算例
- K=2000mm/秒
- 手、腕の接近速度(一定)
- T=t1+t2=0.18秒
- 全応答時間
- t1=0.06秒
- SZの応答時間(変更可能)
- t2=0.12秒
- SZのOSSD信号を受けて機械が停止するまでにかかる最大停止時間
C=8×(d−14)=128mm
- d=30mm
- 最小検出体サイズ(変更可能)
S=K×T+C=2000×0.18+128=488mm
- 注記
- 安全距離の計算結果が500mmより大きい場合、K=1600mm/秒として計算することができます。ただし、その場合、Sの最小値は500mmとなります。
AGV(無人搬送車)に取り付ける例
S=V×T+Sbrake×L+Z
- S:安全距離(mm)
- V:AGVの最大移動速度(mm/秒)
- T:全応答時間(t1+t2)(秒)
t1: SZの応答時間(秒)
t2: SZのOSSD信号を受けてAGVが応答するまでにかかる最大時間(秒)
Sbrake:AGVの制動距離(mm)
- L:ブレーキの磨耗などに起因する制動距離の安全係数
- Z:追加安全距離 ZSZ+ZG(mm)
ZSZ:SZの保護領域追加距離(mm)
ZG:hが十分確保できない場合の追加距離(mm)
h:地面とAGV底面の隙間(mm)
hが十分確保できない場合、つま先が地面とAGV底面の間に挟まれるリスクを考慮する必要があります。
ZGとhの関係は右のグラフで表されます。
- P1、P2、P3:SZの保護領域として設定する距離
- W1、W2:AGVの幅
- B:SZの先端から検出領域原点までの距離
- D:検出できない隙間
- H:床から検出面までの高さ(Hは200mm以下としてください。)
- 危険
-
- ・ AGVが停止している際に、SZが検出できない隙間(D)から機械の危険区域に侵入できないようにするため、この隙間(D)が最小検出体サイズ未満となるようにSZを設置してください。SZにより検出されずに最小検出体が保護領域と周辺の構造物との隙間(D)を通過できる場合、追加の安全防護策が必要です。
- ・ 倒れている人を検出するため、床から保護領域検出面までの高さHは200mm以下とする必要があります。ただし、150mmの高さの対象物を検出するために、Hは150mmとすることを推奨します。
安全距離の計算例
- V=1500mm/s
- T= t1+t2=0.19秒
- 全応答時間
- t1=0.09秒
- SZの応答時間(変更可能)
- t2=0.1秒
- SZのOSSD信号を受けてAGVが応答するまでにかかる最大時間
- Sbrake=1300mm
- AGVの制動距離
- L=1.1
- ブレーキの磨耗などに起因する制動距離の安全係数
Z= ZSZ+ZG=100+100=200mm 追加安全距離
- ZSZ=100mm
- SZの保護領域追加距離
- ZG=100mm
- hが十分確保できない場合の追加距離
- h=60mm
- 地面とAGV底面の間の隙間
- B=45mm
- SZの先端から検出領域原点までの距離
- W1=W2=1000mm
- AGVの幅
安全距離
S=V×T+Sbrake×L+Z=1500×0.19+1300×1.1+200=1915mm
保護領域として設定する距離
P1=S+B=1960mm P2=W1+Z=1200mm P3=W2+Z=1200mm
上記の保護領域を設定したときに、保護領域の境界から1.5m以内に高反射率背景が存在する場合は、P1、P2、P3の値に追加安全距離としてさらに200mm足してください。