作業者が図面とにらめっこ。作業が始まらないのはなぜ?
加工機を前に作業者が手を止めています。よく見ると、首をかしげながら図面をにらみ、計算をしています。どんな状況が考えられるでしょうか。
これは、必要な情報、正しい情報が図面に記載されていないときにありがちな光景です。
設計者が「わかってくれるだろう」、「簡単に計算できるだろう」と、図面上に必要な値や指示の記載が省略され曖昧になっている、または、記号や記載方法が誤っているなどのケースが考えられます。
- この記事でわかること
設計情報の省略・不足によるリスク
製図時に情報に省略や誤りがあると、多くの場合、加工の現場で下記のような無駄やリスクが発生します。
- ・作業開始前に、作業者の負担と無駄な時間が発生する
- ・計算ミスした場合、不良品の発生とロスにつながる
- ・人によって解釈が異なるため、品質管理が困難になる
作業者の経験値や配慮にかかわらず、正確かつスムーズなものづくりを実現するためにも、「図面に必要な情報を正しく記載する」ことで、曖昧さによる無駄やリスク、トラブルを未然に防ぐことができます。
図面指示の変化
近年では、「幾何公差」を図面に用いることが増加しています。これにより「加工現場で配慮してくれるだろう」といった従来の曖昧さが排除されつつあります。
規格においては、2016年には新たに「JIS B 0420」の制定、そして「JIS B 0420-1」や「JIS B 0420-2」に下記のような改訂されました。
- ・ 全文にわたり、「寸法」を「サイズ」に変更。
- ・「公差域」は幾何公差における公差域と区別して「サイズ許容区間」に変更
- ・「実寸法(actual size)」は測得形体への「当てはめサイズ」に変更
- ・「基準寸法」は「図示サイズ」に変更
- ・「許容限界寸法」は「許容限界サイズ」に変更
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グローバル化への対応
このように、従来の「寸法公差(サイズ公差)」から「幾何公差」に規格が対応してきた大きな要因として、ものづくりのグローバル化が挙げられます。さまざまな国とものづくりを進めるにあたり、これまで日本では常識とされていた図面指示方法や曖昧さが、他国では通用しないケースが顕在化しました。
こうした国や世代によるギャップ、曖昧さを回避するためにも、図面の情報精度と規格遵守は、製図者・加工者の双方に要求される傾向にあるといわれています。