現場改善のヒント

【いまさら聞けない】KPT法の基礎からプロの活用術まで

【いまさら聞けない】KPT法の基礎からプロの活用術まで

品質改善をはじめ、コスト削減や安全対策など、製造業では常に様々な課題に悩まされます。これらの課題を効率よく洗い出し対策に取り組むことが、企業の競争力向上のために重要です。

しかし、いざ課題を洗い出そうとしても、アプローチが体系化していないと場当たり的な取り組みになってしまいがちです。そこで、課題の洗い出しや解決策立案のためのフレームワークを使用することがおすすめです。

今回は、製造業の課題解決に活かせるフレームワークである「KPT法」を紹介します。
KPT法を上手く活用することで、新たな課題を発見でき効果的な対策を打てるでしょう。

今日のポイント
  • KPT法には今すぐ活用したくなる3つのメリットがある
  • KPT法を効果的に活用するためには4つのステップで取り組むのがおすすめ
  • 事例を知り、KPT法に取り組む具体的なイメージを持つことが大切
この記事でわかること

課題解決の強力な武器!KPT法とは?

KPT法は「ケーピーティ法」または「ケプト法」と呼ばれるフレームワークです。課題の洗い出しをしたり、改善のためのアクションを明確化したりすることが得意です。KPT法は以下の3つの要素から成り立っています。

  • Keep:継続すべき良かった点
  • Problem:改善すべき課題や問題点
  • Try:解決のためにこれから実施すること

シンプルで汎用性があるため、様々な業界で取り入れられている手法です。もちろん製造業でも活用されています。例えば、製品の品質管理やプロセス改善、各プロジェクトの振り返りなど多くの場面で生かされるでしょう。

ここがスゴイ!KPT法の3つメリット

業務で重宝されるKPT法について、具体的には以下のような3つのメリットがあります。

  • 課題の早期発見と対策立案
  • チームのコミュニケーションの活性化
  • シンプルで使いやすい

KPT法に取り組む前にメリットを正しく理解しておくことで、そのメリットを最大限に活用できるでしょう。ここでは各メリットについて具体的に解説していきます。

課題の早期発見と対策立案

KPT法のProblemパートでは、各メンバーがあらゆる課題について具体的に書き出します。それにより、これまで漠然としていた課題が明確になり、メンバー間で共通認識を持つことができます。

課題だけでなく、Keepパートでは良かった点についても洗い出します。良かった点や改善すべき点を多角的に見直せるため、効果的かつスムーズに対策案を検討できるでしょう。

KPT法の取り組みは一回きりではなく定期的に何度も実施することがおすすめです。それにより課題の見落としが低減され、早期に対策を打てる可能性が高まります。

チームのコミュニケーションの活性化

KPT法では、業務における良い点や課題などをチームメンバーで集まって議論します。そのため、様々なメンバーと話す機会が生まれコミュニケーションの活性化に繋がります。

例えば、現場作業者、開発担当、管理職など様々な立場のメンバーが集まり話し合うことで、普段は聞けない現場の生の声を聞けるかもしれません。

また、課題解決に向けてチーム一丸となって取り組むためチームワークの向上も期待できます。

議論の場では積極的に発言してチームワークとコミュニケーションの両方をより良いものにしていきましょう。

誰でも使えるシンプルさと汎用性

KPT法は、Keep・Problem・Tryの3要素のみで構成されているためシンプルで使いやすいフレームワークです。

汎用性もあるため社内の様々な部門で取り入れることができます。例えば、製造部門における量産管理や、開発部門における製品設計など活用の幅は広いです。

また、KPT法は比較的短時間で取り組めるフレームワークのため、チームメンバーの負担になりにくいこともメリットです。無理なく定期的かつ長期的に取り組むことができます。

【基本が大切】KPT法に取り組む4つのステップ

KPT法の取り組みは、基本的に以下の4つのステップで進めていくのがおすすめです。

  • KPT法に取り組むフォーマットを準備する
  • 「Keep」と「Problem」を洗い出す
  • 「Keep」と「Problem」を深堀る
  • 具体的な「Try」に落とし込む

適切なステップに沿って取り組むことで、モレなくダブりなく課題の洗い出しや対策立案を進めることができます。

ステップ1:KPT法に取り組むフォーマットを準備する

まずは議論で使用するホワイトボードまたは模造紙などの大きめの紙を用意しましょう。それを下図のような3つのブロックに線で分け、KPT法に取り組むためのフォーマットとします。

また、以降のステップにおけるルールも決めておくとよいでしょう。たとえば、各ステップにて一人一回は必ず発言する、各ステップの時間は15分ずつにするなどです。ルールを決めることで無駄に時間をかけずメリハリのある議論を進めることができます。

ステップ2:「Keep」と「Problem」を洗い出す

フォーマットが用意できたら、次はKeepとProblemについて思いつくままに書き出していきます。KeepとProblemについては以下のとおりです。

  • Keep:継続すべき良かった点(例:ラインの自動化により生産性が向上している)
  • Problem:改善すべき課題や問題点(例:細かいミスが多発し生産性に悪影響を及ぼしている)

この段階ではまだチームメンバーと相談する必要はありません。むしろ、各自が思うKeepやProblemをありのままに書き出すことで、誰もが気付かなかった改善ポイントが新たに見つかるかもしれません。

ステップ3:「Keep」と「Problem」を深堀る

ステップ2で書き出したKeepとProblemについて、メンバー同士で話しながらさらなる深堀りを実施します。「なぜ良い結果に結びついているのか」「なぜ問題が生じているのか」など、具体的に書き出していきます。

例えば、以下のようなイメージです。

(課題)生産現場で細かいミスが多発している。

→原因はチームの連携不足である。

→連携不足の原因は、普段からチームメンバー間の会話が少ないからである。

このように深堀りすることで、課題において解決すべき根本原因が見えてくるでしょう。

ステップ4:具体的な「Try」に落とし込む

ステップ3で深堀りしたKeepとProblemをもとにTryを決定していきます。Tryとは、さらなる良化や課題解決のためにこれから実施することを指します。

例えば、チームメンバー間の会話が少ないことに対して、以下のようなTryを設定するとよいでしょう。

  • 月に一回、業務で工夫したことを発表し合う会を開催する。
  • 朝礼時に、本日の目標について話す時間を設ける。

このようにステップ1〜4を順番に進めていくことで、良い点をさらに良くしたり、課題を改善するための具体的なアクションを決定できます。

知っておきたい!KPT法を成功に導く重要ポイント

課題解決に役立つKPT法をさらに効果的に活用するために、以下のポイントが重要です。

  • ファシリテーターを設ける
  • テーマを絞り込む
  • 発言や議論がしやすい環境づくり

これらを意識することで、時間を無駄にすることなく参加メンバー全員が積極的に取り組むことができるでしょう。ここでは各ポイントについて具体的に解説していきます。

ファシリテーターを設ける

ファシリテーターとは、会議やグループ活動を円滑に進めるためにサポートする役割の人です。KPT法に取り組む際はファシリテーターを設け、司会進行や時間管理を任せることをおすすめします。

ファシリテーターを設けることで、議論が発散したり無駄に時間が延びるリスクを低減できます。

ファシリテーター役は毎回変えても問題ありません。若手メンバーにも経験してもらうことで、グループをまとめる良い経験が積めるでしょう。

テーマを絞り込む

一度の議論で多くのテーマを取り上げると議論が発散して効率が下がる懸念があります。次回のテーマは「〇〇製品の生産効率の改善」というように、あらかじめテーマをひとつに決めてから取り組むのがおすすめです。

また、テーマはできるだけ早めにメンバーに共有し、当日までに各自考えをまとめておいてもらいましょう。そうすることで場当たり的な意見が少なくなり、建設的かつスムーズに議論を進行できるでしょう。

発言や議論がしやすい環境づくり

KPT法の取り組みを含め、グループワークでは誰もが発言しやすい環境づくりが大切です。そのために以下のポイントを守ることが重要となります。

  • 人の発言を否定しない
  • 人の発言を最後まで聞く
  • 互いに質問を投げかける

これらを守ることで各メンバーが積極的に発言できるようになります。現場の生の声や若手メンバーの意見も隔たりなく取り入れ議論しましょう。その結果、意見が偏りにくくなり質の高いKPT法の取り組みが実現できます。

【実践事例】課題改善に向けたKPT法の活用

KPT法を具体的にどのようにして活用しているのかイメージがまだ湧きにくいかもしれません。

ここでは、KPT法を活用した実際の取り組み事例を2つ紹介しています。ぜひご参考いただき、あなたの会社の課題改善に生かしてみてください。

5S活動の振り返りに活かすKPT法活用事例

【会社】金属メーカー

【対策詳細】

社内で半年以上かけ本格的に5S活動に取り組んでおり、その振り返りのためにKPT法を活用した。

議論にはKeep・Problem・Tryの3ブロックに区切った模造紙とポストイットを使用。5S活動の中で、このまま続けていくべきことと、さらなる改善が必要なことを事細かに洗い出した。その中で、特に書類のデータ化に関する課題に注目し、データ化のために必要な具体的なアクションについて積極的に議論ができた。

活発に議論することで社員のモチベーションも上がり、自ら改善に取り組んでくれる姿勢が見られた。

作業の無駄を徹底的に洗い出したKPT法活用事例

【会社】電機メーカー

【対策詳細】

業務における無駄を徹底的に改善すべくKPT法を活用した。課題を洗い出す段階では「作業のチェックシート記入の手間」「作業エリアの狭さ」「欠勤時の情報共有の不便」など、あらゆる角度から意見を出した。

また社員だけでなくパートの方々も議論に参加した。現場の意見もしっかりと汲み取り、些細なものでも漏れなく課題を挙げた。

さらに、それらが解決すればいくらのコスト削減になるのかを計算。具体的な改善インパクトを見積もって優先順位を付けることで効率よく改善案をまとめることができた。

KPT法を活用して課題の早期発見、効果的な対策を実現しよう

KPT法は、その汎用性から製造業をはじめ様々な業界の課題解決ためのフレームワークとして活用されています。

KPT法はKeep・Problem・Tryの3要素のみで構成されており、シンプルで使いやすく短時間で取り組めるためメンバーへの負担が少なく済みます。また、チームのコミュニケーションの活性化も期待できるなど様々なメリットがあります。

効果的に取り組みを進めるためには、ファシリテーターを設けたり、全員が発言しやすいような環境づくりが大切です。そうすることで、より質の高い取り組みが実現するでしょう。

もしあなたの会社で何かの課題にお悩みであれば、ぜひ一度KPT法を試してみてください。課題解決の助けになるかもしれません。

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