世界が認める27億2,925万本の必需品
世界第1位の人口を抱える中華人民共和国と、第2位のインドの人口を足した数に匹敵するこの数値は2018年に日本で国内・海外向けに出荷された「ペン類(油性・水性ボールペン・マーキングペン・シャープペンシル)」の合計本数です。 その内訳は、ボールペンが約16億5,947万本(油性:約3億8,814万本、水性:約12億7,134万本)、マーキングペンは約9億2,471万本、シャープペンシルで約1億4,507万本でした。
ペンの年間出荷量全体の過半数を占めるボールペン。実はこのボールペンという名称は略称で、正式名称を「ボールポイントペン」といいます。
現在のようなボールペンが誕生したのは、1943年にハンガリー人のラディスラオ・ピロ氏が新聞用の印刷インクをヒントに開発した「油性ボールペン」です。
それが日本で知られるようになったのは、1945年。終戦後、日本にやって来た米国兵士のほとんどが油性ボールペンを所持していたことから、あっという間にその存在が知られるようになりました。
その後、国産ボールペンの製造が始まりしたが、当時の国産品はインクや材質の品質が十分でなかったため、とても使えるものではなかったといいます。しかし、1949年に鉛筆型のボールペンが登場すると人気に火がつき、瞬く間に広がっていきます。この頃を境に実用的な国産の油性ボールペンが登場し、均一に出るインクとスムーズな書き心地により、日本国内で急速に普及しました。
そして現在、最も出荷数が多い「水性ボールペン」は1970年に登場します。水性ボールペンは軽快な書きご心地と発色性の良さ、さらに万年筆に似た書き味で、販売当初から国内よりも海外で高く評価されています。海外での評判が日本に逆輸入され、国内でも広まったといわれています。当初は樹脂製だったペン先のチップは、金属製に改良され、現在の水性ボールペンと同様になりました。
1980年代以降は、水性インクにゲル化剤を添加することで、滲みにくく滑らかに書けるものや、パステルやラメといった特殊なインク色。さらに書いた文字をこすると消えるものなど、多種多様なボールペンが日本から発信されました。
日本には大小含め300を超える文具メーカーがあると言われ、毎年行われている「日本文具大賞」では新しいアイデアの文房具が登場して日々進化しつづけています。日本はドイツと並び文房具大国と呼ばれています。品質の高さはもちろん、種類の多さやシンプルでありながらも細部までしっかりこだわったプロダクトが魅力だと言われています。そうした評価を得られるのも、文具大賞のように切磋琢磨できる環境が整っていることが要因に挙げられるかもしれません。
訪日外国人が購入するお土産の上位とはいかないにしても、毎日使う文房具は貰って嬉しいものではないでしょうか。もしも、外国人のお客さまにお土産を渡す機会があれば、日本独自の文房具、たとえば「筆ペン」を贈ってみるのも洒落ているかもしれませんね。