現場改善のヒント

生産性向上につながるコミュニケーション術

生産性向上につながるコミュニケーション術

「日常的にホウレンソウ(報告・連絡・相談)が不足している」「急なトラブル時に現場への周知が遅れてしまう」

そんなお悩みを抱えていませんか?

多くの人が作業を分担している製造の現場では、円滑なコミュニケーションが求められます。一回のミスコミュニケーションが大きなトラブルに発展し、多大な損失となる例も珍しくありません。コミュニケーションの齟齬はどんな現場でも起こり得ます。そのため、一人ひとりが問題意識を持って対策することが重要です。

本記事では、コミュニケーション不足がもたらすリスクや、シーン別のコミュニケーション課題とその改善策について紹介します。この機会に日頃のコミュニケーションを見直してみましょう。

この記事でわかること

製造業ではコミュニケーションが成功の鍵

製造業では円滑なコミュニケーションが企業の成功の基盤であると言っても過言ではありません。
なぜなら製造業は、他業種に比べて部門や立場が異なる人同士の連携が多い傾向にあるからです。

たとえば、小売業といった製造業以外の業種では、営業所に事務職と営業職しか常駐していない場合があります。一方で製造業では、工場だけでも上流工程から下流工程、出荷、生産管理など、あらゆる立場の人が働いています。

もしもコミュニケーションが不足し、情報共有のミスがあると、不良品の増加や納期遅延にもつながるかもしれません。

このように、製造業では円滑なコミュニケーションが企業の業績向上の鍵を握っているといえます。

コミュニケーション不足が現場にもたらすリスク

製造現場でコミュニケーションが不足すると、以下のようなリスクが生じる可能性があります。

  1. 生産性が低下する
  2. 製品の品質に悪影響を及ぼす
  3. 新しいアイデアが生まれにくくなる

たとえば生産性が低下する例としては、作業者同士の声掛けが不十分で、同じ作業を何度も実施してしまうケースがあります。他にも、前後工程で情報伝達のミスがあり、ラインを停止しなければならなくなってしまうこともあるでしょう。

これらが積み重なると、結果的に品質に悪影響が出てしまいます。
また、従業員同士の会話が減ってしまうと新しいアイデアが生まれにくくなります。会話の中から偶然アイデアが生まれる機会が減ってしまうからです。

これらを回避するためにも、日頃から現場での円滑なコミュニケーションが重要です。

【シーン別】コミュニケーションの課題と解決策5選

製造現場ではさまざまなシーンでコミュニケーションに関する課題が生じます。ここからは、コミュニケーションに関する課題とそれに対する解決策をいくつか紹介します。

▼コミュニケーションに関する課題
  1. 報・連・相が不足する
  2. 自分と相手の認識がずれる
  3. 緊急時の情報伝達が遅れる
  4. 言った言わない問題が起きる
  5. 話が冗長で分かりにくい

もしあなたの現場で同じシーンに遭遇した際には、以下の内容をコミュニケーション改善にお役に立てください。

報・連・相が不足する

製造現場では、「報告」「連絡」「相談」、いわゆる報・連・相が不足すると、業務がスムーズに進みません。生産効率が低下すると、業績悪化をもたらしたり、生産遅延で取引先に迷惑をかけたりする可能性もあります。

具体的なシーンと解決策は以下の通りです。

<課題例と解決策>

課題例

製造現場で新製品の生産ラインが導入され、従来とは違う作業が追加されました。しかし、現場リーダーから作業者への指示が口頭のみだったため変更内容が正確に伝わりにくく、作業者が誤った方法で作業を実施しました。その結果、生産ラインが一時停止し、修正作業に多大な時間やコストを費やしました。

解決策

抜け漏れなく報連相をするためには、標準化された報連相のフォーマットを使用するのが有効です。たとえば作業の変更があった際は、「どんな変更があったか」「注意点はあるか」「困った時の連絡先」などをフォーマットにしたがって記入し共有するとよいでしょう。

自分と相手の認識がずれる

工場では新人やベテラン、製造スタッフや技術者など、さまざまな世代・職種・立場の人が働いています。知識量や経験値、置かれた状況が異なれば、同じ話題について話していても前提がずれてしまうことがあります。

そもそもの認識がずれていると会話が噛み合わず、結果的に時間のロスやミスにつながります。認識のずれが生じる具体的なシーンと課題の解決策は以下のとおりです。

<課題例と解決策>

課題例

製造ラインの管理者が新たに作業手順の変更を説明しました。しかし、管理者と作業者の間で正しい作業方法の認識がずれていました。そのため、新しい手順で作業する際に混乱が生じ、作業が滞ってしまいました。

解決策

管理者は、作業手順変更の目的や詳細を作業者に丁寧に説明し、理解してもらうことが重要です。さらに、作業者の認識がズレていないか確認するために、管理者の立ち会いのもと作業内容をテストすることも有効です。テストに合格した人から一人で作業できるような承認制にしてもよいでしょう。

緊急時の情報伝達が遅れる

製造業では、トラブルや想定外の事態が発生したとき、被害を最小限に食い止めるために迅速な情報伝達が重要です。しかし、緊急時は正常な判断が難しかったり、定常作業でない対応が必要だったりします。そのため、緊急時でも冷静に対応できる体制を整えることが大切です。

具体的なシーンと解決策は以下のようなものがあります。

<課題例と解決策>

課題例

製造現場で不良が発見されたため、メインの生産ラインを停止し、直ちにバックアップ用の生産ラインに切り替える必要がありました。しかし、現場メンバーから管理者への連絡網が機能しておらず、発生した不良の詳細や注意点が管理者まで伝わるのに時間がかかりました。その結果、生産ラインの切り替え判断が遅れ納期遅延を発生させてしまいました。

解決策

このような事態を避けるためには、緊急連絡用のマニュアルを整備しておくことが大切です。誰がどんな手順で情報を伝えるのかを明確にし、周知しておく必要があります。また、非常時の情報伝達について事前に訓練しておけば、いざというときに落ち着いてコミュニケーションがとれるためリスク回避に有効でしょう。

言った言わない問題が起きる

製造現場では業務連絡が口頭で行われることも多く、あとから「言った」「言わない」というトラブルが発生するケースがあります。口頭でのコミュニケーションでは、言ったか言わなかったかを証明できないため、結局平行線となり無駄な議論に時間を奪われることになるでしょう。

この問題の具体的なシーンと解決策は以下のようなものがあります。

<課題例と解決策>

課題例

作業内容について管理者から作業者に指示があったものの、作業者は指示内容を忘れてしまい作業ミスを発生させてしまいました。管理者が状況を確認したところ、作業者は指示されていないと述べており、「言った」「言わない」で揉めていました。その間の生産がストップし、その日の生産目標が未達となってしまいました。

解決策

このケースの解決策として「誰が」「いつ」「何を言った」がわかるように、メモやメール、チャットツールを使用することが有効です。文章で記録を残しておくことで「言った」「言わない」問題が解消され、責任の所在が明確になります。また、作業の重要ポイントはチェックシートを作るなどして、理解したことを記録に残すのもよいでしょう。

話が冗長で分かりにくい

製造現場では、コミュニケーションの正確さだけでなく、わかりやすさやスピード感も重要です。説明が冗長でわかりにくいと、聞く側はどれが大切なポイントなのか掴めないこともあり得ます。その結果、作業のミスが発生し生産効率にも影響する可能性があります。

この問題の具体的なシーンと解決策は以下のようなものがあります。

<課題例と解決策>

課題例

生産ラインで不良が発生し、作業者から管理者へ不良に関する詳細の報告がありました。しかし、その作業者の報告は非常に冗長で、話の結論や重要なポイントが分かりづらい状況でした。そのため何度も聞き返す必要があり、不良の対応が遅くなってしまいました。

解決策

説明が難しい場合や長くなりそうな場合は、PREP法を用いて説明するのが効果的です。PREP法は、最初に結論を述べ、その後に理由と具体例、最後にもう一度結論を伝える話し方です。要点を伝えやすく、話が冗長になりにくいメリットがあります。また、口頭で端的に伝えるのが難しい場合は、図表を用いながら視覚的に理解してもらえるようにするのもおすすめです。

【実例紹介】コミュニケーションで実現する現場改善

製造業では、円滑なコミュニケーションができるかどうかが生産効率アップやコスト削減に寄与します。

そのため、 多くの企業がコミュニケーションの改善に向けたさまざまな取り組みを行っています。 ここでは、現場でのコミュニケーション改善に成功した事例をいくつかご紹介します。あなたの職場での改善の参考にしていただければ幸いです。

職種間の交流機会を増やしてコミュニケーション課題を改善した事例

【会社】化学材料メーカー

【実施内容】

こちらの会社では、度々クライアントからの製品仕様の変更依頼がありました。しかし、営業担当と現場メンバーとの間で、製品に対する知識量やクライアントワークの認識が異なっており、上手くコミュニケーションが取れないケースがありました。

そこで、営業担当、現場作業者、および管理職メンバー全員が定期的に集まり、製品の情報やクライアントの情報などを共有する機会を設けました。また、お互いの疑問点について質問する時間も設け、積極的に意見交換するようにしました。

その結果、互いに製品やクライアントへの理解が深まり、理解度の違いによるコミュニケーションの課題が低減しました。また、話す機会が増えたことで職種間の関係性も良好となり、メンバー同士の連携が強化されました。

緊急時を想定した訓練を実施して情報伝達を強化した事例

【会社】電子部品メーカー

【実施内容】

ある電子部品メーカーの製造現場には、新人からベテランまでさまざまなメンバーが在籍しています。その現場では定常作業の教育しかされておらず、緊急時などの特殊なケースでは冷静に対応するのが難しいことが想像されました。

そこで、緊急時の対応フローと緊急連絡先が図解された紙を、現場すべての部屋に貼り付けました。さらに実際に緊急事態になった場合を想定し、どんな処置をして誰に連絡するのかを訓練し、訓練結果が問題なければ上司から合格の認定をもらう制度を作りました。

その結果、万が一問題が起こったときに適切に対処でき、被害を最小限に抑える体制が整いました。
さらに外国人労働者がいる現場では、掲示物に外国語を併記する対策も行いました。

現場のコミュニケーションを強化して生産性向上を実現しよう

今回は製造現場の生産性向上につながるコミュニケーションについて紹介しました。

製造業では正確で円滑なコミュニケーションが重要です。もしコミュニケーションが不足すると、生産性や製品品質の低下、従業員のモチベーション低下など、さまざまなリスクを招きます。

そのため、それぞれの現場のシーンに応じて適切なコミュニケーションができる体制や雰囲気を作ることが大切です。

現場のコミュニケーションを磐石に整備し、生産性が高く従業員が働きやすい現場を目指しましょう。

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