現場改善のヒント

未来を見据えたロボット活用
自動化された生産ラインの実現

未来を見据えたロボット活用 自動化された生産ラインの実現

身の回りには多くの生活必需品が存在し、その必需品の多くは工場の生産ラインを経てお客様の元へ出荷されていきます。

生産ラインでは品質の良いモノが清々と作られ、お客様の手元に届いているように見えるのですが、製品が作られるまでに傷がつく、汚れる、作り直す、納期が遅れる、機械が急に止まる、作業者が急に会社を休む、材料が急に輸入できなくなる、いつのまにかやり方が変わってしまいトラブルになるなど、見えないところで様々な問題が発生しているのも事実です。

実はこのような問題の背景には、4M(人・機械・材料・方法)のいずれかが関わっていると言われています。

生産ラインの自働化とは4Mに関わる問題を見直す効果的な方法であり、多くの企業で注目され実践されています。一方で、当たり前のように自動化の活動が進められていると、つい手段が目的にすり替わってしまいがちです。このようなことにならないためには、自動化の目的を明確にして、効果を数値化することが重要となります。

この記事でわかること

生産ラインの自動化をはじめるまえに

生産ラインの自動化を実践する第一歩として、現状把握が大事です。

現場の改善活動では現状把握からはじまり、問題点や課題の明確化、改善案の検討と、それを実行するプロセスがありますが、生産ラインの自動化も同じようなプロセスで進めます。

現状把握で確認しておく内容は、生産に必要な時間を計測するサイクルタイムと作業内容です。作業内容は作業標準書の整理をしておきましょう。現状把握ができたあとは、QCDの観点から何を優先して自動化したいのかを優先順位を整理します。

作業標準書を作成する

自動化を検討するには、まず作業標準書を整理しておく必要があることを先に述べましたが、作業の内容をできるだけ単純にします。熟練者に頼らず、誰にでもできる方法に落とし込んでから自動化を検討するのです。

そして、単に作業内容を記載するだけではなく、異常と判断したときはラインを止めるなどの、「異常を判断する基準」も同時に決めて作業標準書に織り込みます。

実際に自動車メーカーでは、後工程に問題を流すと問題を解消するためのムダが多くなり効率が悪くなるため、異常と判断した際には誰でもラインを止めることができることを手順の一つとして標準化しています。

何を自働化したいのか

現状把握ができたら、次に何を自動化したいのかをQCDの観点から決めていきます。QCDの定義は以下の通りです。

  • Q:品質 人的ミスを減らす。検査を自働化する。
  • C:コスト サイクルタイムを短くする。歩留まりを改善する。
  • D:納期 リードタイムを短くする。段取り替えを減らす。

実は、ここでもう一つ、考慮しなければいけない文字があります。それは「S:安全」です。例えば、S>Q>C>Dと言われるほど、安全は全てにおいて最優先です。設備の異常時には必ず関連する機器が自動停止するなど、自動化を考えるときは常に「安全」を意識しましょう。

生産ライン自働化のメリット

生産ラインの自動化率を増やすことによって、労働力が削減できるだけではなく、稼働率が向上し、さらに生産能力を上げることができます。また、製品のコストを下げて収益を増やしたり、品質が安定したりするなど、さまざまな恩恵を受けることができます。

労働力削減

厚生労働省のデータによると日本人の人口は2010年をピークに減少の一途を辿っているとともに、高齢化率が上がっています。これは、同じ生産量を維持しようと考えた場合、個人の残業時間が増えていくことを示します。定時に上がるためには、人の労働を機械に置き換え、労働力を抑えながら、生産能力を維持、もしくは上げる必要があります。

稼働率向上

機械は電源を投入すれば特に故障しない限り、ずっと稼働してくれます。機械には毎日の睡眠時間を確保する必要がないため、夜も働いてくれます。もちろん、安心・安全な稼働を維持するためにはメンテナンスは不可欠ですが、人よりはるかに稼働時間は長く、稼働率も向上します。

収益アップ

自動化によってサイクルタイムが早くなると、一定時間内で生産できる台数が増えるため、ST(標準時間)を減らすことができます。1台作るのに必要な作業時間としてSTが決められており、1分あたりの単価が各工程で決まっています。STを減らすことで直接労務費が減り、製品原価が抑えられ、収益アップに繋がります。

品質安定化

受け入れ検査や出荷検査の際、目視確認や感応評価のような、人の感覚を頼りにする評価では、個人の判断のばらつきが大きく、問題がなくてもNGにしたり、問題を残したままラインに流してしまったりする可能性があります。自動化によってセンサで画像判定をし、治具によって寸法検査を容易にすることによって、判定の個人差が無くなり、品質が安定します。

生産ライン自働化のデメリット

一方で、自動化にはデメリットもあります。メリットだけに注目してしまい、デメリットを見過ごして自動化の効果が出なかったということがないよう事前対策が必要です。

例えば、人員を減らすのはメリットだけではなく、逆に雇用を減らしてしまうことも考えられます。また、導入コストが掛かってしまった割にはコスト低減の効果が少なかったということもあり得えます。さらに、新たな機械を導入することは、それを操作するための人の教育が必要だということを考慮しなければなりません。

オートメーション化に伴う人員削減

経営者は人員削減のために自動化を推進しますが、一方で作業者は雇用がなくなることへの不安を抱きます。このような場合、雇用は削減せず、研究開発などより創造的な業務にリソースをシフトするような経営手法を取ることで、より生産性の高い現場を実現することができるかもしれません。

導入コスト(一時的な収益圧迫)

例えば垂直多関節ロボットを導入するだけで、数百万円の本体費用がかかるだけではなく、専用プログラムの開発費用や、操作のための教育費用が発生する場合があります。自動化によるコストの低減効果を見積もって、どの程度の期間で回収できるのかを明確にしましょう。

優秀なオペレーターの確保

自動化装置によって、難易度は異なりますが、入社1日目の作業者がすぐ使えるような機器は少ないでしょう。ユーザーマニュアルが充実していてもそれを熟読するための時間が必要です。マシニングセンタやタレットパンチ、レーザー加工、ロボットなどの操作は、操作スキルだけではなく、プログラミングの知識も必要になります。その他、機械が異常停止した場合のトラブルシューティングができる知識も必要です。

生産ラインの自動化の段階

生産ラインの自動化の段階

全て手作業の状態から、いきなり全て自動化をしようとするとハードルが高くなり自動化の推進が困難になります。そこで、段階的に自動化を進めるのが効果的です。自働化の段階を次の3つの定義で説明します。

【STEP1】 一部が手作業

マシニングセンタ、塗装、レーザーやタレットパンチによる板金の穴開けなどは専用加工機を使用して自動で加工していますが、ワークにセットする段取りは人が担当している状態です。
アーク溶接は熟練者に頼り、板金の曲げ加工は人手によってワークをセットしてプレスブレーキを操作します。組立は人が担当しており、製品の搬送はローラーのコンベアに製品を乗せて人がワークを押して搬送しています。

【STEP2】 ほぼ自動化している

専用加工機による自動加工だけではなく、ワークのセットや組立も自動化できている状態です。部品の搬送は搬送ロボットもしくはサーボモータによるコンベアによって人手を掛けず搬送できています。一部の工程では垂直多関節や水平多関節ロボットが導入され、次の工程の橋渡しも自動です。一方で材料の受け入れ検査や、組み立て部品の準備、出荷検査や梱包はまだ人手がかかっている状態です。

【STEP3】 完全自動化

完全自動化になると工場にはほとんど人がいません。人の作業が必要になるのは、機器のメンテナンスや、故障時の対応のみです。

各機器の稼働状況はIoT機器の導入によって見える化がされており遠隔操作も可能です。部品在庫の管理をシステムで行っており、部品在庫がなくなれば自動発注を出すようになっています。製造担当者だけではなく、調達部門の工数も低減しています。

部品の受け入れ検査も自働化されています。寸法検査は3D測定器で自動的に測定し、判定を行います。製品の出荷検査も同様に、計測機器による自動判定を行います。検査結果がデータとして自動に蓄積され、出荷検査の不良率が管理者のモニターに表示されます。

工場自動化の事例

工場自動化の具体的な事例について工程別に見ていきましょう。

事例① ピッキング作業の自働化

ピッキング作業には倉庫から物を取る作業と、ラインの仕分け作業があります。
倉庫から物を取る作業の自動化手法に、組み立て作業ナビゲーションやデジタルピッキングシステムがあります。前者は作業棚にはプロジェクターとカメラが設置されており、作業内容に対応するバーコードを読み取ると、必要な部品が入った棚がプロジェクターで光る仕組みになっています。後者は棚やコンテナに取り付けたデジタル表示器が、ピッキングする際に表示する仕組みです。いずれも作業者が部品を探す負担を減らすことができます。

また、倉庫ではピッキングの自動化だけではなく、無人搬送ロボット(AGV)による搬送の自動化も織り込むことで組立のための材料を効率良く集めます。

ラインの部品仕分け作業の一例としてパーツフィーダがあります。パーツフィーダはボルトや小物部品の向きを揃え、違う向きになっているのをラインから避けるための設備です。
また、垂直多関節ロボットによる仕分けの手段もあります。物を掴んで離す機能があるため、ワークを別の工程に移動できます。同じラインで仕様が混在していても距離センサやカラーセンサなどの識別機能を使って別の工程に仕分けをします。

事例② 緊急停止の自働化

緊急停止は安全を確保するための重要な機能です。自動車車体のプレス機では過去に人命を失った出来事があり、人が侵入した際に必ず停止するなどの、安全を重視した対策がなされてきました。
このような「通常とは違う」挙動を検知して停止する手段に距離センサが使用されています。距離センサによって指定のエリア内に立ち寄ったら自動停止する機能です。協働ロボットでも、このようなセンサを使用して人にぶつかる、または可動範囲に人が侵入したら停止するようになっています。

事例③ 製品数量計測、棚卸の自働化

部品庫の重量を測定し、部品の数量を自動で計測する手段です。製品に使用する部品の種類が多く、在庫を抱えているほど、棚卸に掛かる時間は無視できないものです。部品の数量が自動で把握できると、多人数による棚卸が不要になり、大幅な人件費の削減が見込めます。

事例④ 受け入れ検査や出荷検査の自働化

画像認識センサを使うことで目視確認を省略します。カメラで撮影した映像を判定基準のアルゴリズムと照らし合わせて合否判定をするしくみです。
同じ色でも塗装業者や塗装の種類を変更した際は、わずかな色の変化を人が判定をするのは難しい場合があります。このようなときにカラーセンサを使うことで自動に、且つ、正確に判定できます。

寸法規格値が狭く、一定量、規格値から外れる製品がある場合は全数検査を行う場合があります。全数人が検査するには効率が悪くなってしまいますが、3D測定機や距離センサによって、自動判定に切り替えることによって、大幅な検査工数が削減できるだけではなく、不良品を後工程やエンドユーザーに流出するのを防ぐことができます。

まとめ

自動化は労働時間の削減やランニングコスト低減などのメリットがある反面、導入コストが掛かるデメリットも存在することを説明しました。生産ラインは作るモノの種類の多さや数量によって異なるため、自動化によって得られる効果の大小は各企業や各現場で異なります。今回紹介した自動化の段階や事例を参考に、まずは現状の業務をしっかりと棚卸し、次にどの作業を自動化するか明確にする。自動化の効果が高い作業から優先して段階的に自動化を推進していくことが求められています。

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