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「時間が足りない」を解消!製造業の時間管理ガイド

「時間が足りない」を解消!製造業の時間管理ガイド

製造業の現場は、納期のプレッシャーや突発的なトラブルなどで常にタイトなスケジュールに追われがちです。そのため、「時間が足りない」と感じる方も多いのではないでしょうか。

そんな中でも生産効率を高めるためには、現場で生じる時間不足の原因を把握し、効果的な対策を講じることが大切です。

今回は、よくある時間不足の原因や、すぐに試せる具体的な解決策、実際に時間不足を改善した事例などを紹介します。

この記事でわかること

あなたの現場は大丈夫?時間が足りなくなる3つの理由

製造現場で「時間が足りない」と感じる要因は様々です。恒常的な人手不足によるものもあれば、トラブルなどの突発的な要因もあります。
以下に代表的な3つの要因について紹介します。

  • 突発的な問題の発生
  • 厳しい納期での生産
  • コミュニケーション不足による非効率化

適切に対策を講じるためにも、まずは時間不足の原因を詳しく把握しましょう。

突発的な問題の発生

製造業の現場では、機械の突然の故障や不良品の発生など、予想外のトラブルが起こることがあります。トラブル時は、急な機械の修理対応や不良の原因調査が必要となり、通常業務との並行作業となれば担当者の負荷が大きくなるでしょう。また、不良の穴埋めのためにバックアップ生産をすることも時間が奪われる原因となります。

さらに、応急処置だけでなくシステム導入などで恒久対策も講ずる場合は、長期的に人や時間のリソースを割く必要があります。そうなれば、ますます「時間が足りない」と感じるようになるでしょう。

厳しい納期での生産

取引先で製品の需要が増したり、急なトラブルが生じたりすると、納期の短縮を要求されることがあります。場合によっては、納期に間に合わせるために他の業務を後回しにせざるを得ず、後々さらに忙しさが増す要因となります。

また、急ぎの作業ではケアレスミスも発生しやすくなります。
例えば、普段は間違わない作業でミスをしたり、チェック作業で見落としがあったりするかもしれません。そうなれば、ただでさえ限られた時間がさらに圧迫され、作業者の負担も大きくなるでしょう。

コミュニケーション不足による非効率化

製造業の現場ではスムーズに業務を遂行するために、部門間や工程間での密なコミュニケーションが不可欠です。しかし、情報共有や連携が不十分だと、ミスが発生したり同じ作業を繰り返してしまったりと余計に時間を費やす原因となります。

さらにコミュニケーションが原因で重大な情報の伝達ミスがあると、大きなトラブルに発展する可能性もあります。その際、トラブル対応に時間が奪われるだけでなく、生産がストップしたり、納期遅延でお客さんから信頼を失ったりする可能性もあります。
日頃から密にコミュニケーションを取ることで、トラブルによる時間の浪費を回避しましょう。

時間がない!と困っている現場で実践できる5つの解決策

現場の時間不足を解消するためには、タスク管理の徹底や無駄の排除が重要です。
時間不足を解消し従業員一人ひとりの負荷が軽減されれば、より働きやすい環境が実現できるでしょう。また、生産性向上にも繋がり、企業の業績アップも期待できます。

  • 重要度と緊急度マトリクスで優先順位決め
  • スケジュールやタスクの見える化
  • タイムブロッキングを活用して計画的に業務遂行
  • 作業導線の改善と5Sによる時短
  • 一日の工数の振り返りとPDCAで時間のムダを改善

重要度と緊急度のマトリクスで優先順位決め

業務を効率的に進めるためには、多岐にわたる業務を「今すぐ取り組むべき仕事」「後回しにしても問題ない仕事」に仕分けして優先順位を決めることが大切です。

そのために役立つのが「重要度」と「緊急度」を軸にしたマトリクスの活用です。このマトリクスでは、タスクを次の4つに分類し、それぞれの優先度に応じた取り組み方を明確にします。

実際にマトリクスにすると以下のようになります。

A領域(重要かつ緊急なタスク)は、最優先で取り組むべき業務です。これらのタスクは、期日が決まっているものや避けては通れない活動であり、実行が不可欠なものです。これらのタスクを放置すると 顧客満足度や収益に直結し、悪影響を及ぼす可能性があります。

B領域(緊急ではないが重要なタスク)は、時間を確保して計画的に進めるべき業務です。これらのタスクは、緊急度が低いためつい後回しにしがちです。しかし、中長期的な企業の業績アップのために重要なタスクが多いため、マイルストーンを設置しながら着実に取り組みを進めましょう。

C領域(重要ではないが緊急のタスク)やD領域(重要でも緊急でもないタスク)は、優先度が低いため、これらのタスクに取り組む必要性を改めて検討することも必要です。特にC領域のタスクは、他者に委任したり、効率化を図ることで、時間を有効に活用することができます。D領域のタスクは、後回しにしても問題ないため、業務の優先順位を見直す良い機会となります。

このように、重要度と緊急度からタスクに優先順位をつけることで、時間を無駄に浪費せず、効率良く業務に取り組むことが可能になります。

スケジュールやタスクの見える化

業務を効率化して時間不足を解消するために、スケジュールやタスクを「見える化」することも有効です。タスク漏れや進捗遅れなどを未然に防ぎ、スムーズに業務を進めることができます。

見える化の手段にはいくつか種類があり、代表的なものを以下に紹介します。

見える化の手段 詳細
ガントチャート ガントチャートはタスクの進行状況やスケジュールを横棒グラフで視覚的に管理できるツールです。 製造業は複数のタスクが並行して進んでいくことが多いためスケジュールが複雑になりがちです。 設計・加工・組立・仕上げ・検査など、各工程ごとに進捗をグラフ化すれば、各工程の進捗状況が一目で把握できます。
ToDoリスト ToDoリストは、やるべきタスクを一覧形式で整理するシンプルな管理方法です。タスクを細分化して書き出し、完了したらチェックすることで漏れなく業務を進められます。 紙やホワイトボードなどのアナログ形式もあれば、デスクトップ付箋などのデジタル形式のToDoリストも使用できます。
デジタル管理
ツール
専用のタスク管理アプリケーションやシステムを導入することで、効率よくタスク管理することも可能です。 誰が何のタスクを担当しているのか、進捗状況は問題ないかなど一元管理できます。 企業として本格的にタスク管理に取り組む場合は、検討してみるのもよいかもしれません。

タイムブロッキングを活用して計画的に業務遂行

タイムブロッキングは、一日のスケジュールを30分や1時間ごとに区切り、それに従って行動することで計画的かつ効率的に業務を進める手法です。限られた時間の中で一つのタスクに集中できるため、生産性が向上し作業ミスの減少が期待できます。

できるだけ帰社前に翌日の計画を立てておくのがおすすめです。そうすれば、翌朝一番でスムーズに作業に取りかかることができます。
また、突発的な予定変更に備えて「調整用ブロック」を設定することも大切です。このブロックがあれば、予期せぬトラブルが発生しても柔軟に対応でき、他タスクへの影響を最小限に抑えられます。

例えば以下のようにスケジュールを組みます。

  • 9:00~9:30:メールチェック
  • 9:30~10:30:資料作成
  • 10:30~11:30:生産会議
  • 11:30~12:00:(調整用ブロック)
  • 12:00~13:00:昼休憩
  • 13:00~14:00:生産対応
  • 14:00~15:00:生産対応
  • 15:00~15:30:休憩(+調整用ブロック)
  • 15:30~16:30:生産対応
  • 16:30~17:00:装置立ち下げ/清掃
  • 17:00~17:30:メールチェック/日報

このようにスケジュールを具体的に立てることで、どの時間に何をすべきかが明確になります。タイムブロッキングを習慣化できれば、ムダな時間が減り計画的に業務を進められるでしょう。

作業導線の改善と5Sによる時短

生産業務においてムダな移動や動作は作業効率を低下させ、時間の浪費を招きます。特に製造業では様々な工具や材料を使用するため、それらを取りに行ったり探したりする時間の短縮が大切です。

たとえば、必要な工具や材料を作業動線上に配置すれば、毎回の探す時間がなくなりスムーズに作業を進められます。
また工具の管理で5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)を徹底し、どこに何があるのか一目で分かる環境づくりも重要です。頻繁に使用する工具を優先的に取り出しやすい場所に配置したり、ラベルやカラーコードを用いて視覚的に分かりやすいよう管理すれば、探す時間を短縮できるでしょう。

少しの導線や動作の改善の積み重ねが大きな時間の短縮に繋がり、生産効率のアップが実現できます。

一日の工数の振り返りとPDCAで時間のムダを改善

限られた時間で効率よく業務を行うには、日々の業務で生じているムダな時間を排除することが大切です。そのためには、一日の終わりに業務を振り返り、どのタスクが計画通りに進まず時間が足りなくなったのか分析・改善するのが効果的です。

特に効果的なのが、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善)に基づく改善方法です。

ムダな時間の改善として、具体例には以下のようにPDCAサイクルに落とし込むことができます。

P(計画) 製造装置を使う際に導線が非効率でムダな時間を費やしている。 それらのムダをなくして、15分の時間短縮を目指す。
D(実行) 製造装置の配置を変更して、作業の導線を最適化する。
C(評価) 一日あたり10分の時間短縮に成功。目標にはあと5分不足している。
A(改善) 装置の作業手順を最適化して、さらに5分の時間短縮を目指す。

このようにPDCAを回すことで、計画的に改善を進めることができます。毎日少しずつの改善でも、長い期間で考えるとムダな時間を大幅に削減できるでしょう。

【改善事例】現場の時間不足を解消した実例を紹介

現場の「時間がない」という悩みを解消するため、様々な企業が改善に取り組んでいます。

こちらでは実際に取り組まれている改善内容について紹介します。参考にしていただき、ぜひあなたの現場でも取り入れてみてください。

工具の5Sにひと工夫して時短に成功した例

ある企業では、製造現場でスパナやレンチ、ドライバーなど様々な工具を使用しています。その際、大きい工具箱から必要なものを探すのが大変だったり、使ったあとに誤って別の工具箱に入れてしまい、次の人が見つけられないなどの問題がありました。

そこで、それぞれの工具の形状にフィットするようにくり抜いたボードを壁に掛け、それに工具をはめ込んで保管するようにしました。

それにより、どこに何の工具があるか一目で分かり、またそれぞれの工具の形状にのみフィットするので、間違った場所に片付ける心配もなくなりました。その結果、これまで時間を費やしていた工具を探す時間がゼロになり、作業効率の改善に成功しました。

現場チームで業務効率化のための改善活動に取り組んだ例

ある企業では、作業の効率化や時短を達成するために現場で少人数チームを組み、時間の無駄になっている作業を月に1回徹底的に議論し洗い出す機会を設けました。

議論はベテランメンバーだけでなく若手からも必ず意見を出してもらうようにし、広い視野で洗い出しを実施しました。

具体的に出てきた意見としては、

  • 日々の日報が形骸化していて意味をなしていないため、週一の報告に変更して時短につなげる。
  • 毎日のミーティングの回数が多すぎるため、回数を減らしてメールでのやり取りを増やす。
  • 分からないことは一人で時間をかけて調べるよりは、まず分かる人に聞いてみる。

など、できるだけ現場の生の意見を取り上げました。

PDCAサイクルを回すために、翌月の議論では実際に効果がどうだったかを確認し、次の対策を検討しました。この取り組みを長期的に行うことで改善が進み、現場のムダな時間を大きく削減することができました。

適切なタスク管理で製造現場の時間不足を解消しよう

今回は現場の「時間が足りない」という課題に対する原因や解決策を紹介しました。

製造現場では、想定外のトラブルや不良の発生などにより、通常業務以外に時間が取られてしまうケースもあります。そのような状況でも大きな問題に繋がらないように、余裕を持った時間の確保やタスク管理が大切です。

タスク管理の方法としては、重要度と緊急度のマトリクスを活用したり、スケジュールやタスクの見える化などが有効です。

積極的にタスク管理の手法を取り入れて、現場の時間不足を解消しましょう。

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