分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルは、工場や大規模施設の電源供給に欠かせない設備です。屋外や工場内に設置されるため、その筐体には高い防塵性や耐候性そして強度が必要であり、高い寸法精度が求められます。しかし、筐体のフレームは長尺であり外板の面積は広く、測定に要する工数は納期に直接影響します。このため、寸法測定は可能な限り短時間で行う必要があります。
ここでは、短納期化と品質の向上が求められる分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体の測定のポイントや課題を説明。さらに、筐体の寸法測定の効率化に欠かせない最新の三次元測定機による測定課題の解決事例を紹介します。
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルとは
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体の特徴
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の必要性
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定のポイント
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の課題と解決法
- 分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の効率化
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルとは
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルは、電力会社から送電される高圧電力を受電して使用する設備です。なかでも一定以上の高圧電力を扱うものは「自家用電気工作物」ともいわれ、電気事業法第38条で「電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物」と定義される、一般需要家の高圧変電設備に含まれます。
このうち、キュービクルは「キュービクル式高圧受電設備」ともいわれます。発電所から変電所を通して送られてくる高電圧の電気を施設で使える電圧に変換する機械を収めた設備のことで、変圧器や断路器、保護装置など複数の機器によって構成されており、分電盤・配電盤・制御盤なども格納されています。変圧や制御に関するさまざまな機械を1つの筐体に収めることで施工費用の削減と縮小化を図り、安全性の保持を実現しています。
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体の特徴
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体には、主に使用環境を考慮した材料や構造が用いられています。
筐体の材料
筐体に用いられる材料は、主に鉄(鋼板)・ステンレス・アルミ・樹脂です。これらは使用環境によって使い分けられます。たとえば海の近くなど塩害による腐食が発生する可能性のある場所に設置する場合は、ステンレスや鉄(鋼板)にメッキなどの防錆加工を施します。また、設置場所に重量制限があり、軽量化が求められる場合はアルミ製や樹脂製の筐体が用いられます。
筐体の構造
筐体の構造は、設置場所によって異なります。屋内で使用する屋内型には、ほこりや粉塵などが筐体内に侵入しない防塵対策が施されます。一方、屋外に設置する屋外型は、高温・低温・雨・直射日光、また工場内では粉塵・蒸気・加工熱などの影響を受けます。このため、たとえば防水性が十分でない構造の筐体を屋外で使用すると内部が浸水し、電気回路などが故障する原因になります。このため、筐体には使用環境に応じた耐候性・防水性・防塵性・耐熱性を高める対策が施されます。
筐体の強度
筐体の強度を高めるには、筐体の角にフレームを設けます。フレームにはL型鋼が用いられ、フレームのない筐体では鋼板を折り曲げてボルト止めまたは溶接して製作します。また、フレームを持つ筐体では筐体周囲のフレームを製作し、フレームのまわりに板をボルト止めまたは溶接して製作します。
フレームを設けると強度が高くなる一方で重量が大きくなるため、小さな筐体では必要ありません。しかし、大型の筐体ではフレームがないと外部からのわずかな力で筐体が揺れたり、ボルト部分の鋼板が裂けたりする可能性があるため必要です。
フレームは筐体の鋼板を支えるだけでなく、フレームを貫通するようにボルトを取り付けることで、筐体の強度を飛躍的に向上させることができます。
筐体の防塵・防水対策
筐体には、外部との受電や配電を行うための電線を通す穴が開けられます。また、熱対策用のファンも取り付けられます。これら筐体の穴の電線と筐体のすき間にはパッキンが取り付けられ、防塵対策が採られています。
防水対策としては、電線と筐体のすき間に防水パッキンを取り付け、さらにシリコンなどによるシール加工を施します。また、筐体の本体と扉が接する部分など開閉を行う部分は「水切り」といわれる構造にし、防水パッキンを装着することで高い防塵性能と防水性能を実現します。
筐体の防水性や防塵性は「IPコード」という保護等級で表されます。防塵性や防水性は高い方が好ましいのですが、品質が上がるため製造コストもアップします。このため設置環境に応じ、品質とコストを考慮したうえで対策を決定する必要があります。
一般に、筐体の保護等級は、室内設置ならIP43以上、屋外設置の場合はIP44以上、さらに厳しい設置環境の場合はIP55以上が目安とされています。
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の必要性
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルは工場や大規模建築物などの高圧変電設備であるため、トラブルが発生すると機械や自動装置が機能しなくなって製造ラインが停止したり、重大な事故の原因になったりすることがあります。
粉塵や雨水などが筐体内部に侵入し、電気回路を破損するといった深刻なトラブルでは、復旧にも時間を要します。大規模な工場の場合、このようなトラブルにより1本のラインが1日停止すると、会社の命運を左右するような多額の損害が発生することもあります。このため、設計通りに仕上がっているか、正しく設置されているかを確認する寸法測定は欠かせません。
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定のポイント
大型の筐体では、必要な強度を得るために骨格であるフレームに、外板となる鋼板が取り付けられます。ここでは、フレームに外板を高精度で取り付けるために欠かせない寸法精度について説明します。
測定のポイント
外板とフレームは、ボルトまたは溶接で接合します。確実に接合するには、ボルト穴や外板の平面度の精度がポイントとなります。
フレームの外寸・穴ピッチ・対角の寸法精度
フレームと外板は、フレームと外板を貫通するボルトによって固定されます。フレームの外寸・穴ピッチ・対角の寸法精度が低いと、外板に開けられたボルト穴と位置が合わなくなるため、組み立て前の寸法測定は重要です。
フレームの直角度や外板の平面度の精度
フレームの直角度や外板の平面度の精度が低いと、設置後に強い応力がボルト穴にかかり、ボルト穴から亀裂が発生したりボルトが欠損したりなど、強度や耐久性を損なう原因になります。また、扉の建て付けが悪くなるため、必要な防塵性や防水性が得られない場合もあります。安全性や耐久性などに関してはJIS規格でも定められているため、フレームの直角度や外板の平面度を厳しく測定する必要があります。
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の課題と解決法
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの製造では、個々の部品の寸法測定はもちろん、組み立て後の直角度や平面度などの測定も重要です。従来、これらの測定はノギス・コンベックスなどで行います。しかし、大型のキュービクルのような製品は、複数人で測定する必要があり測定や調整に多くの工数を要するため、納期に影響が出るといった課題がありました。また、コンベックスやノギスといったハンドツールでは三次元的な形状を直接測定することができません。このため、測定できる箇所の値から演算によって三次元形状の寸法を間接的に得るしかない、といった根本的な問題も抱えています。
これらの問題を解決すべく、最新式の三次元測定機が活用されるケースが増えてきました。キーエンスのワイドエリア三次元測定機「WMシリーズ」は、ワイヤレスプローブで長さが数メートルにもおよぶ筐体のフレームや外板も、高精度測定が可能です。測定範囲内なら製品の奥まった部分にも自由にアプローチでき、1人でもプローブを当てるだけの簡単操作で測定することができます。また、ノギス・コンベックスなどの測定器具に比べて測定結果がバラつくことなく、定量的な測定が可能です。
フレームの外寸・穴ピッチ・対角の寸法測定
大型の筐体ではフレームの外寸や対角の寸法も大きくなるため、複数人でメジャーやコンベックスを使って測定します。また、フレームに開けられたボルト穴やファンを取り付ける穴のピッチは、1箇所ずつ測定します。しかし、測定箇所が多いため、作業には長い時間が必要でした。また、測定器具を当てる角度や強さによって測定値が変わるため、作業者による測定値のバラつきが発生していました。
「WMシリーズ」なら、測定したい箇所にプローブを当てるだけで測定できます。フレームの外寸や対角の寸法はもちろん、穴ピッチもプローブを当てるだけで測定は完了。三次元的な距離や座標も、直接測定することができます。測定作業に不慣れな方でも短時間かつ1人で測定でき、作業者による測定値のバラつきはありません。さらに、どこを測定したかが一目でわかる写真付きの検査成績書が自動で作成可能です。取引先との信頼につながるだけでなく、測定結果をデジタルで残すことができるので、社内のデータ管理の効率化にもつながります。
フレームの直角度や外板の平面度測定
フレームの直角度や外板の平面度は、筐体に組み付けるすべての部品の組み付け精度に影響します。このため、製造中はもちろん組み立て後の寸法検査も重要です。
フレームの直角度や外板の平面度は、メジャーやコンベックスで測定します。しかし、複数人で行わなければならず効率的ではありません。さらに、反りやうねりを平面度として数値化することは困難でした。
「WMシリーズ」なら、フレームの直角度や外板の平面度も1人で測定することができます。測定した平面度や直角度を数値化することができ、仮想線の距離を可視化することも可能です。また、外枠端面から制御盤内部の穴径までの距離、ドアノブ中心点から端面までの距離などの仮想距離や三次元的な寸法も測定することができます。
反りやうねりをカラーマップで表示することができるので、寸法の修正も正確かつ容易に行え、さらに自由に持ち運べるポータブル仕様なので、施工現場に持ち込み、その場ですぐに設置状態を測定することも可能です。
分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定の効率化
「WMシリーズ」なら、ワイヤレスプローブを当てるだけの簡単な操作で分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体を1人で測定することができます。さらに、これまでに紹介した以外に、以下のようなメリットがあります。
- 広範囲を高精度に測定可能
- 最大測定範囲25mの広範囲なエリアを、高精度に測定可能。測定の手順を記憶させ、同じ箇所を測定することができる「ナビ測定」モードも搭載しているため、誰が測定してもデータがバラつきません。
- 測定結果を3Dモデルで出力できる
- 測定した要素は、STEP/IGESファイルとしてエクスポートできます。図面のない製品でも、現物の測定結果を基に、3D CADデータを作成可能です。
- わかりやすいインターフェース
- 三次元測定機のインターフェースというと、難解で馴染みにくいコマンドが多いイメージがありますが、「WMシリーズ」では、画像やアイコンなどで誰にでも親しみやすい操作性を追求し、直感的な操作を可能にしました。
- ポータブルで現場置きが可能
- 本体を台車に入れて、自由に持ち運べるポータブル仕様。現場に持ち込み、その場ですぐに施工状態を測定することが可能です。
「WMシリーズ」は、分電盤・配電盤・制御盤・キュービクルの筐体寸法測定はもちろん、3D CADデータとの照合作業などを強力にサポート。筐体の製造から設置・品質管理に欠かせない業務まで、飛躍的な効率化を実現します。