多数の複雑な構成部品や組み付け精度により、はじめて安定した印刷を実現するプリンター・複合機。また、印刷用紙の品質や特性、インクの染み込みやトナーの定着など複合的かつ精度の高い観察・解析・評価が求められます。
ここでは最新の4Kデジタルマイクロスコープを活用した最新の活用事例を紹介します。

プリンターの印刷品質や構成部品の観察・解析

プリンター・複合機・関連製品の品質と研究開発

プリンターの印刷形式は多種多様ですが、なかでも現在主流となっているのが、「インクジェットプリンター」や「レーザープリンター」です。また、レシート・伝票の発行や、 ファクシミリ単体機、物流の現場でのバーコード印刷などでは「サーマルプリンター」が多く利用されています。
プリンターや複合機の高機能化と省スペース化、より高速で高精細かつ安定した印刷のニーズを背景に、構成部品に対してより高い精度と品質が要求されるようになりました。また、プリンター・複合機の機械部品のみならず、多種多様な印刷用紙、インクの染み込み・トナーの定着による、より高い印刷品質を競い、各社で研究開発が進められています。
より高機能なインクジェットプリンター・レーザープリンター・サーマルプリンターなど印刷機器による高品位な印刷を実現するため、多種多様な構成部品・インク・トナー・感光材・印刷用紙などのテスト・研究が頻繁に行われています。同時に、顕微鏡などを用いた試料の観察・解析・計測・測定・評価において、製品の研究開発・品質保証・品質管理の観点から、より高い精度が求められるようになりました。

プリンターや関連製品の研究開発における観察・解析・評価の課題

プリンターの研究開発において特に重要となるのが、正確な評価を素早く導き出すことです。評価の遅れや不正確さは、優れた製品をスピーディに実現する研究開発の競争において大きなハンデとなります。従来の顕微鏡を使った観察・解析・評価では、たとえば下記のような課題がありました。

  • 高倍率であるほど位置合わせやピント合わせが難しく、凹凸のある表面では一部にしかピントが合わないため、観察に時間がかかる。
  • 色調の薄い印刷用紙やトナーの拡大観察では、解像度の不足により詳細まで観ることができない。
  • 2Dや3Dの計測・測定を行うには、別途検査器が必要となるため、検査工程・工数が増加してしまう。

次項では、従来の課題を解決し、より鮮明な観察、より正確な解析・測定・評価を簡単な操作でスピーディに実現することができる4Kデジタルマイクロスコープの活用事例を紹介します。

プリンター(構成部品・消耗品・印刷品質)関連における観察・解析・測定・評価の最新事例

キーエンスでは、20年以上に渡り現場の声を集めながら、さまざまな課題をクリアし、次世代デジタルマイクロスコープを実現すべく改善・改良を続けてきました。そして、最新の光学系や画像処理技術、独自設計のシステムにより誕生した最先端のマイクロスコープが、高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。簡単な操作で、高解像度4K画質による鮮明な高倍率観察はもちろん、高精度な2D・3D測定、自動面積計測など一連の作業を1台でスピーディに実現します。
ここでは、プリンター関連業界における「VHXシリーズ」の活用事例を紹介します。

メディア(各種プリンター印刷用紙)での活用事例

インクジェット用紙・各種印刷用紙の観察

従来の金属顕微鏡では用紙表面の微細形状までを観察することができず、走査電子顕微鏡(SEM)では観察までに多くの時間を要しました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら、4K高精細画像を簡単に取得することができるため、用紙表面の微細形状や繊維の状態を素早く鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのインクジェット用紙の表面形状観察
従来( 8bit ×100)
従来( 8bit ×100)
VHXシリーズ(16bit ×100)
VHXシリーズ(16bit ×100)
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での印刷用紙表面の繊維観察
左:通常/ 右:可変照明
左:通常/ 右:可変照明

ラベル用紙の不良解析と3D形状測定による定量評価

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高解像度の拡大画像をそのまま用いた、高精度な3D形状測定が実現します。凹凸の高さ情報をカラーで表示することができるほか、3次元寸法測定やプロファイル測定と測定値の取得が可能です。

従来の不良解析における課題だった評価のバラつきを解決し、定量的な評価が可能です。また、別途測定器での検査工程に移行することなく、「VHXシリーズ」1台で観察から解析・測定、そして画像や数値を用いたレポート作成まで、一連の作業をスピーディに完結させることができます。

A.良品サンプル(×300)
A.良品サンプル(×300)
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのラベル用紙の不良解析・3D形状測定
A.不良サンプルの解析(×300) B.不良サンプルの3D形状測定
  1. A.不良サンプルの解析(×300)
  2. B.不良サンプルの3D形状測定
A.再現サンプルの解析(×300) B.再現サンプルの3D形状測定
  1. A.再現サンプルの解析(×300)
  2. B.再現サンプルの3D形状測定
A.かすれサンプルの解析(×300) B.かすれサンプルの3D形状測定
  1. A.かすれサンプルの解析(×300)
  2. B.かすれサンプルの3D形状測定

レーザープリンターでの活用事例

トナー定着状態の高倍率観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと電動レボルバにより、20~6000倍まで自動的に倍率を変更する「シームレスズーム」を実現。レンズ交換の手間を省き、直感的な操作での拡大観察を可能としました。
また、従来の顕微鏡では、立体的な繊維構造を持つ印刷用紙の高倍率観察において、被写界深度の限界により一部にしかピントが合いませんでした。

「VHXシリーズ」であれば、従来の顕微鏡の約20倍の被写界深度と「ライブ深度合成」により全体にフルフォーカスした画像で、用紙の構造とトナーの定着状態を鮮明に捉えることができます。これにより、正確かつスピーディな観察・解析が実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのトナー定着状態の高倍率観察
左:通常 / 右:深度合成(×200)
左:通常 / 右:深度合成(×200)
上:微分干渉 / 下:同軸落射
表面凹凸の3D形状・プロファイル測定
4K高精細画像でのトナー定着状態の高倍率観察例

トナー定着状態の定量評価

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、高解像度な高倍率観察を可能とすると同時に、そのまま高精度な自動面積計測や3D形状測定を実施することができます。
自動面積計測では、用紙のように表面に凹凸のある対象物であっても、画像から計測範囲を指定するだけでトナーの粒子解析を自動かつ高精度に実行可能です。また、3D形状測定では、わずか数秒で3次元寸法や高さデータによる3D形状の色分け表示が可能なためスムーズな解析や比較が実現します。

さらに、あらかじめテンプレートを用意しておくことで、取得した画像や数値を用いたレポートを自動作成することも可能です。
「VHXシリーズ」であれば、定量評価を可能とするほか、1台で一連の作業がシームレスかつ素早く完結するため、作業時間を飛躍的に短縮することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのトナー定着状態の高倍率観察
トナー定着状態の自動面積計測(×2000)
トナー定着状態の自動面積計測(×2000)
3D形状の測定と比較
3D形状の測定と比較

スポンジロールの観察

従来の顕微鏡では被写界深度の限界や解像度不足により、スポンジロールの複雑な凹凸形状の観察が困難でした。4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、直感的な操作で6000倍まで自動的に倍率を切り換える「シームレスズーム」と「ライブ深度合成」により、高倍率であっても高解像度かつ観察箇所全体にフルフォーカスした画像で、スポンジロールの微細な凹凸形状の観察を簡単な操作で実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのスポンジロールの拡大観察
低倍率観察 左:通常 / 右:可変照明(×30)
低倍率観察 左:通常 / 右:可変照明(×30)
高倍率観察 左:通常 / 右:深度合成(×200)
高倍率観察 左:通常 / 右:深度合成(×200)

インクジェットプリンターでの活用事例

インクの染み込み観察

従来の金属顕微鏡を使ったインクの染み込みの高倍率観察では、サンプル断面の品質が不十分な場合、断面のわずかな傾斜によりうまくピントが合わず、観察が困難でした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、断面に傾斜がある場合でも、「ライブ深度合成」により、サンプル断面の全体にフルフォーカスした鮮明な画像を簡単に取得することができます。
これにより、サンプルの条件に左右されず、正確な染み込み観察を素早く実行することが可能です。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのインク染み込みの観察
インク染み込みの高倍率観察・深度合成
インク染み込みの高倍率観察・深度合成

インクのり具合評価

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、高精細4K画像により、インクの表面状態を鮮明に観察できるため、インクのり具合を正確に評価することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのインクのり具合評価
インクの表面状態観察
インクの表面状態観察

サーマルプリンタでの活用事例

サーマルヘッドの3D測定

サーマルプリンターには、テープ(リボンに)塗布されたインクを加熱し転写する熱転写方式や、熱により変色する感熱紙に発熱体を接触させる熱感方式があります。いずれも文字やバーコードを鮮明に印刷するためには、サーマルヘッドの品質が大きく関係します。特に、バーコード出力機能がついた端末などでは、小型なサーマルヘッドの高精度な検査が要求されます。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、高解像度4K画像を活用することで、3D形状測定や指定した箇所のプロファイル測定を素早く高精度に実行可能です。「VHXシリーズ」は、1台で摩耗の観察だけでなく、定量評価もスピーディに実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのサーマルヘッドの摩耗の測定
サーマルヘッドの3D形状・プロファイル測定
サーマルヘッドの3D形状・プロファイル測定

その他プリンター部品の品質保証・品質管理

タイミングベルトの摩耗観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、深い被写界深度により、タイミングベルトのような立体的な部品においても、全体にピントが合った高精細画像が得られます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのタイミングベルトの摩耗観察
摩耗箇所の観察(×50)
摩耗箇所の観察(×50)

プラスチック(樹脂)製ギアのあたり面観察・3D測定

プリンターは数多い構成部品が正常に機能することで、はじめて安定した動作と印刷品質が実現します。そのため小さなプラスチック製ギアやケーシングなどの寸法や形状はもちろん、部品の組み付けに至るまで高い精度が求められます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、これまでコントラストが低く観察が困難だったプラスチック部品の微細な外観不良や、寸法・組み付け不良などによるあたり痕も鮮明に捉えることができます。
また、観察画像からそのまま3D形状・プロファイル測定が可能なため、数値による正確な評価を可能とします。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での樹脂ギアあたり面観察・3D測定
樹脂ギア(×20)の観察とあたり面(×50)の観察・3D形状・プロファイル測定
樹脂ギア(×20)の観察とあたり面(×50)の観察・3D形状・プロファイル測定

プリンタ部品のマイクロクラック観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、従来の顕微鏡では解像度不足などにより観えなかったマイクロクラックも、鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプリンタ部品のマイクロクラック観察
マイクロクラックの観察(×100)
マイクロクラックの観察(×100)

プリンター・複合機・関連製品の研究開発に効く最新ソリューション

プリンター・複合機の構成部品・関連製品は多種多様であるため、さまざまな対象物の観察・解析・評価への対応が求められます。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ここで紹介した以外にも 、研究開発の現場に効く機能を数多く搭載しています。光沢のある対象物でも鮮明な観察を可能とする「ハレーション除去」「リング除去」機能や、自由な角度での観察を可能とする「フリーアングル観察システム」、高機能な照明システムなどで、研究開発を全面的にバックアップします。

「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。