ゴムのデジタルマイクロスコープでの観察・測定
ゴムは、弾力性を持つ高分子化合物で、タイヤ・ホース・ベルトなど、幅広い業界で利用されています。ここでは、ゴムのデジタルマイクロスコープでの観察・測定事例を紹介します。
天然ゴムと合成ゴム
- 天然ゴム
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ゴムの樹の樹液(ラテックス)を乾燥させた生ゴムを加硫※したゴム製品を天然ゴム(NR-Natural Rubber)と呼んでいます。
- ※加硫:
- 生ゴムに硫黄を加え加熱することで分子間結合が起こり、ゴムの弾性と強度が向上します。1839年に、アメリカのチャールズ グッドイヤーが偶然発見し、これ以降、ゴムの産業化が進みました。
- 合成ゴム
- 石油から化学的に合成されたゴムの総称です。使用される原料により、100種類以上存在します。合成ゴムの歴史は浅く、第2次世界大戦が開発の背景になっています。天然ゴムは主に東南アジアで生産されていますが、天然ゴムの入手が困難なアメリカやドイツが国産化し、その後急速に普及していきました。
天然ゴムと合成ゴムの特徴
ゴムの消費量は、天然ゴムが約40%、合成ゴムが約60%で、用途に応じて使い分けられています。
天然ゴム
- メリット
- ゴム弾性が大きく、引き裂き強度が強いため、トラックやバス、産業用の大型タイヤに広く使用されています。
- デメリット
- 耐候性・耐熱性・耐油性が低いため、光・熱・雨などの環境に弱い。
合成ゴム
- メリット
- 天然ゴムに比較し、不純物が少なく性能が安定しています。原料の配合を変えることにより、耐熱性・耐薬性・耐摩耗性など、さまざまな特性を持ったゴムを製造できます。
- デメリット
- 天然ゴムと比較するとゴム弾性や引き裂き強度の面で劣ります。
代表的な合成ゴムの種類と特徴・用途
合成ゴムは大きく「汎用ゴム」と「特殊ゴム」に分類されます。代表的な名称と特徴、用途を下記に示します。
汎用ゴム
- インプレンゴム(IR)
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天然ゴムとほぼ同じ性質を持っています。着色性が良く、においも少なく、低温でも保温が不要です。反面、天然ゴムより耐候性や耐熱性に劣ります。
- 用途:
- 自動車や航空機のタイヤ、ゴムベルトなどに使用されています。また、着色料を加え、卓球用ラケットなどにも利用されています。
- スチレンブタジエンゴム(SBR)
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汎用ゴムの中で最も生産されており、天然ゴムより耐摩耗性、耐老化性に優れています。耐油性には劣るため、Oリングやパッキンには不向きです。
- 用途:
- 自動車用タイヤや靴底、床タイルなどに用いられます。
- ブタジエンゴム(BR)
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スチレンブタジエンゴムに次いで流通量の多いゴムで、天然ゴムより弾性と耐摩耗性に優れています。耐油性には劣るため、Oリングやパッキンには不向きです。
- 用途:
- 自動車のタイヤやゴムベルト、ホースなどに使用されています。また、プラスチックであるABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styreneの略)の主原料にもなります。
特殊ゴム
- ニトリルゴム(NBR)
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耐油性、耐摩耗性、耐老化性に優れています。耐油性ゴムとして広く使用されています。
- 用途:
- Oリング、パッキン、ガスケット、シール材として使用されています。
- クロロプレンゴム(CR)
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耐熱性、耐候性、耐オゾン性、難燃性などに優れています。
- 用途:
- 自動車用のベルトやホース、ワイヤーやケーブルの被覆材料として使用されています。また、粘着性にも優れているため、接着剤や塗料にも使用されています。
- ブチルゴム(IIR)
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耐熱性、耐振性、耐薬品性に優れています。また、電気的な絶縁性もあります。
- 用途:
- ガス透過性が小さいので、タイヤのインナーチューブに使用されています。また、オーディオの防音材や電線の被覆材料にも使用されています。
- エチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)
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耐老化性、耐候性、耐オゾン性に優れ、屋外で劣化しにくいゴムです。反面、耐油性に劣ります。
- 用途:
- 自動車部品(ラジエーターホースやベルトなど)、電線被覆や建築材料などに使用されています。
- アクリルゴム(ACM)
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耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れ、特に高温の耐油性に優れています。反面、耐寒性、耐薬品性に劣ります。
- 用途:
- 自動車用のオイルホースやガスケット、シール材などに使用されています。
- シリコンゴム(Q)
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耐寒性と耐熱性が非常に高く、耐候性・耐オゾン性・電気絶縁性にも優れています。反面、引っ張りなど、機械的な強度が低くなります。
- 用途:
- 人体に無害で耐熱性があるため、食品容器や医療製品などに使用されています。
- フッ素ゴム(FKM)
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耐熱性と耐薬品性がきわめて高い反面、高価です。
- 用途:
- 食品や薬品の設備や部品に使用されています。
- ウレタンゴム(U)
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引っ張り強度と耐荷重性に優れ、耐油性・耐摩耗性にも優れています。反面、耐熱性や耐水性に劣ります。
- 用途:
- タイヤや靴底、ローラーなど重い物を支える部分に使用されています。
形状によるゴムの分類
- シート
- ゴムを板状のゴムシートに加工したものです。
ガスケット、パッキン、シール材などに加工されます。 - フォーム
- ゴムに発泡剤を配合し、ゴムを多孔性の状態(スポンジ)に加工したものです。
フォームには、以下の2種類があります。
ゴムの硬さ
ゴムの硬さは硬度で表現されます。0から100の数値で、0に近いと柔らかく、100に近いと硬くなります。
- a:マシュマロ
- b:グミ
- c:タイヤ
- d:硬球
- e:ゴルフボール
デジタルマイクロスコープによるゴムの観察・測定事例
キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いたゴムの観察・測定の最新事例を紹介します。
Opt-SEM画
Opt-SEM機能(Optical Shadow Effect Mode)を使用することで、
黒いゴム表面の凹凸を可視化できます。
3D画像
3Dにすることで、白いゴム表面の凹凸が可視化できます。
Opt-SEM カラーマップ画像
カラーマップ画像で、ベルトの摩耗状態が可視化できます。
ZS-20 30x 自動面積計測画像
自動面積計測機能で、ゴムの劣化が定量化できます。
自動面積計測画像
自動面積計測機能で、ゴムの粒子を定量化できます。
ZS-200 200x リング照明+HDR
HDR機能でフォーム断面を詳細に観察できます。