めっき不良の種類・原因と観察・評価の課題解決
めっきの高機能化に伴い、外観検査などによる品質保証にも高いレベルが要求されるようになりました。ここでは、品質や機能を損なう代表的なめっき不良の種類や現象、原因を解説します。
また、最新の4Kデジタルマイクロスコープによるめっき不良検査の最新事例や、課題解決事例を紹介します。
めっき不良の分類・種類と原因
さまざまな形状・素材(金属・プラスチック・セラミックなど)の表面処理に多用される「めっき」。材料表面に必要な膜厚で被覆することにより、装飾目的のみならず、耐摩耗性・耐腐食性・耐熱性・耐薬品性・電気伝導性・潤滑性・接着性・装飾性など多種多様な機能の付与が可能です。一方で、各工程で発生するめっき不良は、材料や製品の品質や特性に大きく関わります。
金属皮膜を材料に被覆させるめっきにおける、代表的なめっき不良の3大分類と不良現象や原因を下記に示します。
密着不良:「はがれ」「ふくれ」
さまざまな原因により下地表面との結合力が低下し、めっきが密着しない現象。また、めっき処理後に密着不良がみられない場合でも、後工程の曲げ加工時に、下地とめっき皮膜の柔軟性の違いが原因となり、「ふくれ」や「はがれ」が生じる場合があります。
異物付着不良:「ざら(ざらつき)」
湿式めっきにおいて、めっき皮膜表面に小突起が生じる現象。めっき浴中の固体浮遊物(金属粒)がめっき層に入り込むことが原因です。
未析出:「しみ」「むら」、「ピット」「ピンホール」
外観上の「光沢むら」や「しみ」の多くは、メッキ表面の部分的な「くもり」や、環境などによりめっき面が本来の色調を失う「変色」によるものです。これらの現象は、素材表面の粗さむらや脱脂不足、成形工程でのむらなどが原因となります。
「ピット」「ピンホール」は、ともにめっき皮膜表面の凹状欠陥です。析出不良により、素材表面まで達しておらず巨視的(マクロ的)に確認できる穴が「ピット」、素地や下地層まで達する細孔が「ピンホール」です。後者は、めっき皮膜の「ふくれ」や素材の「腐食」など2次的な不良・欠陥の原因ともなります。
こうした不良を正確に見極めるには、2次元の写真だけでなく、Z方向(膜厚や穴深さ)の情報が必要となります。
4Kデジタルマイクロスコープを活用した、めっき不良の検査事例
材料表面の装飾性のみならず機能の付与の役割を担うめっきの不良は、製品の外観品質だけでなく、機能・性能・耐久性に大きく関わります。また近年は、めっきの高機能化を背景に、不良解析・信頼性評価への要求も高度化しています。
しかし、めっき皮膜は薄く光沢があるうえ、多くの場合そこに生じる不良は、微小かつ立体的です。従来の顕微鏡で撮影した写真(
2次元画像)や測定器による検査では、確かな品質保証を実現するうえで、さまざまな課題がありました。
キーエンスの高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと4K
CMOSなど最先端技術を採用し、鮮明な4K画像でめっき皮膜の状態を正確に観察・解析することができます。
また、拡大画像からそのまま2次元寸法測定や3D形状・プロファイル測定などが可能なため、めっき不良検査による品質管理・品質保証に求められる作業が、1台で簡単かつスピーディに完結します。
ここでは「VHXシリーズ」を用いた、めっき不良の最新検査事例を紹介します。
めっきの変色・腐食
めっき皮膜のピンホール
めっきはがれ
めっきのクラック
ざら(異物付着)の解析
めっき膜厚の測定(樹脂埋め試料)
4Kデジタルマイクロスコープによる、めっき検査の課題解決事例
めっき面の拡大観察・不良解析・各種計測・測定などは難易度が高く、従来の顕微鏡や測定器を用いた外観検査において、さまざまな課題がありました。
ここでは、キーエンスの最新4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いた、めっき検査における課題解決の事例を紹介します。
高倍率でもめっき表面を鮮明に表現
従来の課題:顕微鏡の場合
めっき表面の高倍率観察では、凹凸によりピント合わせが困難なため作業工数が増加していました。また、解像度の不足により正確な評価ができない場合がありました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら
高分解能HRレンズと4K CMOSにより、高倍率での観察においても深い被写界深度を実現。めっき表面の凹凸に影響されることなく、全体にピントが合った鮮明な高倍率観察が可能です。
フルフォーカス画像と自由なズームを実現
従来の課題:顕微鏡の場合
高倍率であるほど、凹凸のある対象物の一部にしかピント合わないため、観察に時間がかかりました。また、倍率によってレンズ交換・管理が必要となるため、拡大観察に伴う作業の煩雑化や作業工数増加の原因となっていました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら
「ライブ深度合成」により、凹凸のある対象物全体にフルフォーカスした画像を瞬時に得ることができます。これまでピント調整にかかっていた時間を削減できると同時に、全体像の観察により分析・評価の効率化が実現します。
また、高分解能HRレンズと電動レボルバを搭載することで20~6000倍までレンズ交換不要な「シームレスズーム」を実現しました。
倍率に応じて自動的にレンズを切り換え、ピント調整するためスピーディな拡大が可能です。撮影した画像にレンズや倍率の情報をまとめて記録されるため、データ管理も効率化することができます。
- A.高分解能HRレンズ
- B.電動レボルバ
拡大観察からそのまま3D形状・プロファイル測定が可能
従来の課題:顕微鏡の場合
Z軸(高さ・深さ)がわからないため、立体的な不良を判別・測定することができませんでした。また、別途の3次元測定に対応する測定器を使用する必要があるため、検査工程と作業工数の増加が課題でした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら
豊富なメニューを利用することで、簡単な操作で3D形状とプロファイル測定が可能です。
これにより、異物か打痕、またはピットかピンホールかを定量的に評価することができます。「VHXシリーズ」1台で、拡大観察から2D・3D測定まで効率的に行うことができます。
自動面積計測による評価の定量化
従来の課題:顕微鏡の場合
肉眼での結晶カウントでは、定量評価ができませんでした。また、計測は別途、専用の計測器やソフトウェアを利用する必要があったため、検査工程と工数の増加が課題となっていました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら
自動計測により指定した範囲内の面積計測や結晶粒度・粒子カウントが簡単に実行できます。さらに、2値化処理や計測結果の一覧表示、ヒストグラム化、そしてレポート化までを簡単な操作で完結します。
照明切り換えでめっき表面の外観評価を効率化
従来の課題:顕微鏡の場合
照明条件を変更しながらめっき表面を観察する際、異なる照明条件下の画像をリアルタイムで比較しながらの解析・評価ができませんでした。また、以前と同じ照明条件を素早く再現することは困難でした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら
さまざまな照明条件での画像を瞬時に取得し選択可能な「マルチライティング」機能により、照明によって表情が変わるめっき面の解析・評価を効率化できます。
また、異なる照明条件の画像を並べて表示することもできるため、総合的な判断による解析・評価をスムーズに行うことができます。
- A.同軸落射
- B.リング照明
- C.同軸片射
- D.MIX光
めっきの検査・評価を高度化・合理化する1台
高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、これまでの顕微鏡では観察・解析・定量評価が難しかった、めっき不良を鮮明な4K画像で大幅に効率化します。また、これまで不可能だった2D・3D測定や2値化計測、レポート化までを1台でシームレスに実行することができます。
「VHXシリーズ」はここで紹介した他にも便利な機能を数多く搭載しています。
「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。