半導体ウェハ・ICパターンの顕微鏡的観察と測定
製品の小型化・多機能化と生産効率向上、コスト低減などにおいて、厳しい競争が続く半導体業界。パターンの微細化やウェハの大口径化に伴う、品質保証への要求も高度化の一途を辿ると同時に、研究開発や検査のスピードも求められるようになりました。
ここでは、半導体業界における従来の検査を大幅に高度化・効率化する、最新の4Kデジタルマイクロスコープの最新事例を紹介します。
ウェハの大口径化と新たな要求
半導体製造に欠かせないウェハ。デバイスの微細化を背景に、より小型で高機能・高品質な半導体製品が求められています。付加価値の高い製品をいかに効率よく製造できるか、研究開発や生産技術、品質管理において各社が競い合っています。
たとえば、シリコンウェハを大口径化することで1度に多くのチップを生産し、生産性を向上する手法が注目されてきました。ウェハの大口径化は、欠陥によるロス低減や高い平面度、コストなどの要求を満たすべく長年研究されています。大口径化と平面化の両立において、片面研磨に比べ両面研磨ウェハのほうが優位とされており、直径12インチの両面研磨ウェハが主流となりました。近年では12インチを超えるウェハも登場し、将来的には15インチ以上のウェハも展開が可能になるといわれており、安定したウェハ品質とICチップのさらなる生産効率向上を実現すべく研究開発が進められています。
また、回路パターンの構築においては、MEMSにも対応する微細なパターン印刷を高効率に実現する高精細スクリーン印刷や、製版不要でデータからパターン塗布を可能とし、少量多品種生産の効率化やスピーディな試作・検証を可能とするインクジェットコーター(インクジェットプリンター)などが注目されています。こうした背景により、より高精度かつスピーディな観察・検査・評価が求められるようになりました。
ウェハ・ICパターンの観察・検査と従来の課題
ウェハや、そこに微細なパターンを多数形成するICチップなど半導体の研究開発・品質保証に欠かせないのが、拡大観察による検査と評価です。
半導体製造では、きわめて微細な欠陥や異物付着(コンタミ)が不良につながるため、従来からローダーで被検物を搬送し、光学式顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)など複数の装置を用いて観察・検査されてきました。しかし、近年の激しい市場競争、観察箇所の微細化により、観察・検査の精度の高さのみならずスピードも要求されるなか、従来の装置では下記のような課題が生じています。
従来の観察手段における課題
- 光学式顕微鏡
- 微細化するパターンなどの高倍率観察において、解像度が不足し、細部の観察では、走査電子顕微鏡(SEM)やレーザー顕微鏡などに移行する必要があり、前準備などに時間がかかった。
- 微細なコンタミを見つけるには、観察に多くの時間を要した。
- アングルが固定されているため、ウェハの端面(エッジ)の観察が不可能。
- 各種測定ができないため、別途検査器に搬送・位置決め・測定を要し、検査工程が増加。
- 走査電子顕微鏡(SEM)
- ローダーで真空室に搬送した後、真空引きなどの前処理に時間がかかる。
- モノクロ画像での観察となるため、検査できる内容が限られる。
ウェハ・ICパターン観察・検査の最新ソリューション
従来の光学式顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)の課題をクリアし、より高度な観察環境を提供すべく、キーエンスは20年以上に渡り現場の声を集め、デジタルマイクロスコープの改良を重ねてきました。そして、最先端の4K技術などにより、大きな進化を遂げたのが、高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
ここでは、高解像度4K画像によるSEMに迫る鮮明な高倍率観察・解析、2D・3D測定、自動面積計測など多項目の検査がマイクロスコープ1台で実現する「VHXシリーズ」を用いた、ウェハやICパターンの検査事例を紹介します。
ウェハの4K「Opt-SEM」での観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、専用設計した高分解能HRレンズ・4K CMOS・照明により、まったく新しい観察方法「Opt-SEM(Optical Shadow Effect
Mode)」を実現しました。
多方向からの照明で撮影した画像の変位(コントラスト)を解析する「多方向照明変位解析」により、表面の微小な凹凸の検出が可能になりました。
SEMに迫る観察画像により、ウェハ表面の微細な凹凸形状まで鮮明に観察できます。
また、Opt-SEM画像にカラー情報を重ね合わせることで、凹凸情報とカラー情報を同時に表現できます。さらに、凹凸情報の色分け表示も可能なため、よりわかりやすい表現を可能とします。
ウェハのエッジ観察・測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「フリーアングル観察システム」により、ウェハの端面(エッジ)の傾斜観察が可能です。
深い被写界深度と「ライブ深度合成」により、高倍率においてもウェハ表面・端面・不良箇所のすべてにフルフォーカスした鮮明な4K画像を得ることができます。
また、高解像度な拡大画像からそのまま高精度な2次元寸法測定や、不良箇所の3D形状・プロファイル測定が可能なため、1台でシームレスかつスピーディに作業が完結します。
ウェハのプロセス欠陥の観察・解析
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、従来の一般的な光学式顕微鏡に比べ約20倍以上の被写界深度を実現。また、シャッタースピードの異なる複数の画像から高階調・高コントラスト画像が得られる「HDR機能」を搭載。きわめてコントラストが低く反射率の高い対象物であっても、簡単な操作で微細な欠陥を素早く解析可能です。
さらに、少ない画像枚数で3D画像の生成・3D形状測定、高さカラー画像により欠陥部の凹凸の測定値の取得と解析が可能です。また、「自動面積計測ツール」により、フォトマスキングの計測と計測値・ヒストグラムの表示が可能なため、作業効率が飛躍的に向上します。
ウェハに付着した異物の観察と3D形状測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、最高6000倍までの高倍率に対応し、高解像度の4K画像を得ることができます。ウェハに付着した微細な異物の高倍率観察から、そのままサブミクロンオーダーの高精度な3D形状測定を可能とします。さらに、異物の任意の断面におけるプロファイル測定が可能なため、高度な観察から測定までマイクロスコープで完結することができます。加えて、「自動面積計測・カウント機能」により、コンタミを自動で解析することが可能です。
キーエンスでは、ご要望に合った別注システムのご提案・組み込みにも対応しているため、たとえば、ローダーとしての機能を追加することも可能です。
「VHXシリーズ」の詳細やラインナップに関しては、以下のボタンからカタログをダウンロードしてご覧ください。
また、商品や別注システムなどに関するご質問は、「ご相談・お問い合せ」ボタンからお気軽にお問い合せください。
ICパターンの高解像度観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと4K CMOSにより、高解像度撮影が可能です。通常のマイクロスコープを使ったICパターンの高倍率観察では、解像度が足りず不鮮明な画像しか得られないことがありました。しかし、「VHXシリーズ」なら高解像度4K画像により、微細なICパターンを高精細に観察することが可能となりました。
ICパターンの全体像観察とズーム観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと電動レボルバにより、20~6000倍まで感覚的な操作で自動的にレンズを切り換える「シームレスズーム」を実現しました。
また、高倍率観察したい箇所を変えても常にフルフォーカスの高解像度画像が得られる「ナビライブ合成」機能を搭載。観たい箇所をクリックするだけの簡単操作で、自動でステージ移動・深度合成します。微細な凹凸のあるIC表面のパターンの高倍率観察において、視野を逃さずに鮮明な画像で観察可能です。
さらに、ボタンを押すだけで高倍率・高解像度の4K画像を自動でズレなく高速に繋ぎ合わせる「超高速画像連結」により、50000×50000ピクセルまでの広視野でフルフォーカスした全体の画像が得られます。簡単操作でさまざまな観察目的にスピーディに対応します。
ICパターンの3D形状測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、凹凸のあるICパターンであっても、ピント位置の異なる画像を合成することで、フルフォーカスした画像が瞬時に得られます。それらのデータを用いて「3D表示」することで、ICパターンの表面形状をさまざまな角度から自由に観察することができます。
また、そのまま高さデータを活用した高精度なプロファイル測定も可能なため、検査の精度と作業効率が大幅に向上します。
半導体分野の強力な新パートナー、VHXシリーズ
高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ここで紹介した以外にも研究開発や生産の現場で役立つさまざまな機能を搭載しています。半導体ウェハやICパターンの拡大観察・解析から2D・3D測定、そして取得した画像や数値を用いたレポートの自動作成まで、1台で完結することができます。
高度な自動制御や画像処理により、習熟度を問わない簡単な操作で鮮明な4K画像が素早く取得できます。それにより、検査精度と作業スピードの両方を飛躍的に向上させることができます。
「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。