中空糸は、糸の中が空洞になっている加工糸です。糸が詰まっていないため、軽く柔軟性があり、保温性・吸水性・速乾性が高い特徴がありますが、アパレル用途だけでなくろ過装置としても幅広く使用されています。ここでは、中空糸のデジタルマイクロスコープでの観察・測定を紹介します。

中空糸のデジタルマイクロスコープでの観察・測定

中空糸膜フィルターとは

溶解した原材料をノズルから吹き出して作られた中空円筒状の糸膜である中空糸膜を用いたフィルターです。中空糸膜の膜壁には、無数の微細孔(ポアという)が開けられています。
孔径を調整することで異なる成分や異物を分離・抽出することが可能です。

家庭用浄水器への中空糸膜フィルターの活用

1980年前半までは、活性炭を使用した浄水器が一般的でしたが、その後、活性炭と中空糸膜を併用した浄水器が普及していきました。中空糸膜には、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用されており、細いストロー状の繊維を束ねたフィルターです。膜壁に細かい孔が開いており、そこに不純物の粒子が吸着されます。
活性炭で、残留塩素・カルキ臭・カビ臭・トリハロメタン・農薬などを吸着し、中空糸膜で、鉄さび・細菌・濁りなどを除去します。

医療向け中空糸膜フィルターの活用

医療分野でもさまざまな形で中空糸膜フィルターが活用されています。

主な活用例

人工腎臓(ダイアライザー)
人工透析で使用される人工腎臓の中空糸では、孔径は約5ナノメートルです。赤血球や白血球、種々の血漿タンパク質は孔径より大きいため、余分な水分や尿毒症物質(老廃物)のみ中空糸の外に出て行きます。
血漿分離器
孔径を約300ナノメートルにすると、赤血球や血小板などの血球成分と、タンパク質などが含まれる血漿成分を分離できます。
血漿成分分離器
孔径を約10ナノメートル、約20ナノメートル、約30ナノメートルなどに制御した中空糸が組み込まれているのが血漿成分分離器です。

デジタルマイクロスコープによる中空糸の観察・測定事例

キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いた中空糸の観察・測定・計測の最新事例を紹介します。

人工腎臓用中空糸の表面観察
VH-Z500 500x 同軸落射照明 + HDR
上:深度合成画像 下:通常画像
HDRと深度合成を併用することで、SEMを使用しなくても不具合の解析が可能になりました。
中空糸断面の自動面積計測画像
VH-Z20 50x リング照明
中空糸断面の自動面積計測画像
VH-Z20 100x リング照明
従来は、手で寸法測定を行っていましたが、自動で面積計測できるようになりました。
人工腎臓の自動面積計測
VHX-E20 20x リング照明+HDR
HDR機能を使用することで、安定した本数のカウントと内外径の評価が可能になりました。