医療技術の発展の歴史は、医療機器の小型化の歴史でもあり、より高精度で正確な検査が求められるようになりました。特に人体に直接使用される医療機器には、高水準な品質管理・品質保証が要求されます。
高度な検査要求に対し、鮮明な画像による観察のみならず、簡単な操作で各種検査の効率化を実現した、最新の4Kデジタルマイクロスコープによる検査事例を紹介します。

医療機器の測定・検査による品質管理・保証

高度化する医療機器の品質保証

医療機器の多くは人体に直接使用されるため、高レベルな安全性・機能性・有効性が要求されます。特に医療針(医療用ニードル)やカテーテル、ステント、ペースメーカーなど体内に使用する製品においては、微細な傷やバリなどの不良・欠陥が、人体や人命の安全を脅かす可能性が高いため、厳格な品質管理・品質保証が不可欠となります。

医療機器または体外診断用医薬品の製造販売業者や登録製造所では、製品の製造管理・品質管理に関する基準である(QMS:Quality Management System)に適合する必要があります。品質管理においては、原材料から製造工程、最終製品の出荷に至るまでQMSの規格に従った厳格な検査要求を満たすことで、品質保証が実現します。

医療機器検査・品質管理における4Kデジタルマイクロスコープの活用事例

医療の高度化に伴い、医療機器の機能性への要求、そして製品の検査・解析における要求も高度になっています。製品製造はもちろんのこと、研究開発においても顕微鏡・マイクロスコープを活用したきわめて高いレベルの検査・解析が求められます。

キーエンスでは、現場の声を活かして課題を解決すべく、20年以上に渡り新しいデジタルマイクロスコープを製作し続けてきました。その最新シリーズが、次世代のマイクロスコープといえる超高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
ここでは、「VHXシリーズ」を用いて高度な品質管理・品質保証を実現する、医療機器の検査・解析の最新活用事例を紹介します。

カテーテルの検査

バルーンカテーテルの検査

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、新開発の高解像度HRレンズと4K CMOSセンサ、深度合成により深い被写界深度を実現。それにより、従来の顕微鏡では一部にしかピントが合わなかった、立体的なバルーンカテーテルの検査において、対象物全体にフルフォーカスすることを可能としました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのバルーンカテーテルの検査
バルーンカテーテルの拡大観察: 左(×20)・右(×100)
バルーンカテーテルの拡大観察: 左(×20)・右(×100)

ガイドワイヤーの検査

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、シャッタースピードを変えた画像を複数枚取得し、65000以上の高階調を表現する「HDR(High Dynamic Range)機能」を搭載。これまで観ることができなかったガイドワイヤーの微細な箇所も高精細・高コントラストな観察が可能になりました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのガイドワイヤーHDR撮影
通常(×300)
通常(×300)
HDR画像(×300)
HDR画像(×300)

親水性コーティングの検査

親水性コーティングは、ガイドワイヤーなどに血管内での潤滑性を付与する重要な技術ですが、従来の顕微鏡では、親水性コーティングのような色調の薄い対象物の外観の観察・検査は難易度が高く、品質管理・品質保証における課題となっていました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、これまで観察が難しかった親水性コーティングも簡単な操作で高精細な4K画像による観察が可能です。また、画像から2次元寸法測定することで、コーティング膜厚を測定することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での親水性コーティングの観察
カテーテル親水性コーティング
カテーテル親水性コーティング

カテーテル表面の3D形状測定と外観検査

カテーテルのような凹凸のある対象物を高倍率で観察する場合、従来のマイクロスコープでは、全体にピントが合った画像を得ることができませんでした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、高倍率であってもピント位置が異なる画像を瞬時に深度合成します。それにより、対象物全体にフルフォーカスした2D画像の表示に加え、2次元寸法測定が可能です。

さらに、そのまま3D画像を作成し、表面状態をさまざまな角度から観察・3次元寸法測定することで、表面の細かな傷の測定や部品の構造を把握することが可能です。
これにより、高倍率での拡大観察や外観検査・寸法測定の定量化と同時に、一連の作業を大幅に効率化することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのカテーテル表面の3D形状測定
カテーテル表面観察
カテーテル表面観察
カテーテル3D形状測定
カテーテル3D形状測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのカテーテル表面の傷 2D・3D形状測定
傷の2次元寸法測定
傷の2次元寸法測定
傷の3D形状測定とプロファイル測定
傷の3D形状測定とプロファイル測定

医療針(医療用ニードル)の検査

医療針(医療用ニードル)先端の観察

従来の光学顕顕微鏡では、医療針(医療用ニードル)先端の外観観察に要求される高倍率において、一部にしかピントが合いませんでした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、立体的な形状を持つ針先端の高倍率観察においても、深い被写界深度により、全体にピントが合った画像を素早く簡単に得ることができます。
また、シャッタースピードが異なる画像を複数枚取得することで素早く高階調画像が得られる「HDR機能」により、高精細かつ高コントラストな観察が可能となりました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での医療針の針先観察
左:従来の顕微鏡 / 右「VHXシリーズ」
左:従来の顕微鏡 / 右「VHXシリーズ」
左:通常画像 / 右: HDR画像
左:通常画像 / 右: HDR画像

医療針先端の形状検査

従来は、顕微鏡での観察のほか、さまざまな測定器を用いて医療針を測定する必要があったため、検査工程の増加により手間と時間がかかっていました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、観察からそのまま2次元寸法測定が可能です。豊富なツールを使用することで、角度や幅などさまざまな測定が簡単かつスピーディに実行できます。
さらに、3次元寸法測定も可能で、3D形状の表示やプロファイル測定により、医療針先端の詳細な形状を検査することができます。鮮明な画像による観察から2D・3D測定、数値データの活用までを1台で素早く完結することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での医療針先端の2D測定
豊富なツールにより簡単な操作で2次元寸法測定が実現
豊富なツールにより簡単な操作で2次元寸法測定が実現
豊富なツールにより簡単な操作で2次元寸法測定が実現
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での医療針先端の3D測定
医療針先端の3D形状・プロファイル測定
医療針先端の3D形状・プロファイル測定

ステントの検査

ステントのフリーアングル観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」の「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」を活用することで、従来の顕微鏡では不可能だった自由な角度からのステント観察が実現します。
視野・回転軸・傾斜軸の3軸を簡単に合わせることができる調整機構を搭載。傾けたり回転させたりしても視野が逃げないユーセントリック性を実現し、立体的で複雑な形状のステントをさまざまな角度から簡単に観察することができます。

「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」
「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのステントのフリーアングル撮影
ステントのフリーアングル撮影(×20)
ステントのフリーアングル撮影(×20)
ステントのフリーアングル撮影(×20)
ステントのフリーアングル撮影(×20)

ステント支柱の曲げ半径測定

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高解像度4K画像を用いることで、 従来の顕微鏡では不可能だった2次元寸法測定を高精度に行うことができます。豊富なツールにより測定箇所を選択するだけの簡単な操作で、ステント支柱の曲げ半径の非破壊測定を実現します。
また、「ハレーション除去」「リング除去」機能により、ステント特有の金属面の反射の影響を受けません。さらに、異なるシャッタースピードでの撮影により高階調画像が得られる「HDR機能」により、支柱の割れなどの外観不良の検査も可能としました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのステント支柱曲げ半径測定
ステント支柱のHDR画像・曲げ半径測定(×150)
ステント支柱のHDR画像・曲げ半径測定(×150)

生体吸収性ステントの検査

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、反射を最小限に抑えることで、生体吸収性ステントの正確な観察が可能です。高解像度な4K画像により、高倍率での外観検査で微細な割れなどの不良も検出することができます。
また、3D形状やプロファイル測定値を素早く簡単に取得することができるため、支柱の傷などの外観検査や立体構造を正確に把握可能です。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での生体吸収性ステントの割れ検査
生体吸収性ステントの拡大画像(左:×200 / 右:×20)
生体吸収性ステントの拡大画像(左:×200 / 右:×20)
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での生体吸収性ステントの3D形状測定
生体吸収性ステントの3D形状・プロファイル測定
生体吸収性ステントの3D形状・プロファイル測定
生体吸収性ステントの3D形状・プロファイル測定

移植ワイヤーの検査

移植ワイヤーの観察・測定

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、従来の顕微鏡の20倍の被写界深度と4K CMOSにより、医療用の移植ワイヤーであっても鮮明なフルフォーカス画像による観察を可能としました。また、拡大画像からそのまま2次元・3次元測定が可能なため、検査を大幅に効率化することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での移植ワイヤーの観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での移植ワイヤーの観察

ペースメーカーの不良解析

ペースメーカー部品の検査

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ペースメーカー部品の割れや裂け目などの不良箇所を鮮明な4K画像で観察することができます。また、「フリーアングル観察システム」と透過照明を併用することで、穴の側壁も簡単かつスピーディに検査することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのペースメーカー部品の外観検査
ペースメーカー部品の表面と穴の側壁の外観検査(×200)
ペースメーカー部品の表面と穴の側壁の外観検査(×200)
ペースメーカー部品の表面と穴の側壁の外観検査(×200)

従来の光学顕微鏡を用いた高倍率観察では、被写界深度が不足し、凹凸のある対象物では一部にしかピントが合いませんでした。
「VHXシリーズ」であれば、「ライブ深度合成」により立体物の高倍率観察においても、全体にフルフォーカスした鮮明な画像がリアルタイムに得られます。これにより、ピント調整の煩わしさから解放され、作業効率が飛躍的に向上します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」と従来の顕微鏡の画像比較
従来の顕微鏡
従来の顕微鏡
「VHXシリーズ」深度合成画像(×200)
「VHXシリーズ」深度合成画像(×200)

ペースメーカー部品の3D形状・プロファイル測定

走査電子顕微鏡(SEM)にはない利点として、高さ情報の取得により3D画像を生成できることが挙げられます。高解像度の4K画像を用いることで、高倍率の画像からサブミクロンオーダーの3D形状やプロファイル測定のデータを得ることができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのペースメーカー部品の3D測定
ペースメーカー部品の表面と穴の側壁の外観検査(×200)
ペースメーカー部品の表面と穴の側壁の外観検査(×200)
ペースメーカー部品の3D形状・プロファイル測定(×500)
ペースメーカー部品の3D表示(×500)
ペースメーカー部品の3D表示(×500)
ペースメーカー部品の3D表示(×500)

パッケージングの検査

樹脂パッケージングの外観検査

パッケージング(包装)の不良や欠陥は、中の製品の保護性・保存性・安全性・信頼性などに影響します。医療機器の品質保証は、出荷前の製品のパッケージング(包装)における品質管理をもってはじめて完結します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、偏光照明を使用することで、包装に多用されるプラスチック(樹脂)製のフィルムやパッケージ表面の反射を最小限に抑え、正確な外観検査を実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での樹脂の光沢を抑えた観察
通常(×20)
通常(×20)
偏光照明(×50)
偏光照明(×50)

樹脂パッケージングの拡大観察と測定

プラスチック(樹脂)製材料を使用したパッケージングの高倍率観察はピントが合いにくく困難な場合があります。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、シャッタースピードを変えながら高階調画像・高コントラストな画像を取得する「HDR機能」により、鮮明な高倍率画像の観察が可能です。簡単な操作でHDR画像を用いた正確な測定が可能なため、検査の精度とスピードが大幅に向上します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのHDR撮影と2次元寸法測定
左:通常 / 右:HDR撮影(×30)
左:通常 / 右:HDR撮影(×30)
HDR画像(×30)を用いた測定
HDR画像(×30)を用いた測定

樹脂パッケージングの3D形状検査

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」の深い被写界深度と鮮明な「HDR画像」により、凹凸のある表面であってもフルフォーカスした高倍率画像が得られます。また、その画像から3D画像を生成し3D形状を表現・測定することができるため、「VHXシリーズ」1台で検査に求められる一連の作業をスピーディに完結させることができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのHDR撮影と3D形状測定
プラスチック製パッケージング・HDR撮影(×200)
プラスチック製パッケージング・HDR撮影(×200)
プラスチック製パッケージングの3D形状測定
プラスチック製パッケージングの3D形状測定

シビアな要求に応える4Kデジタルマイクロスコープ

最新の高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高度化・小型化する医療機器の品質管理・品質保証に求められる検査が1台で完結します。鮮明な4K画像での高倍率観察から、高精度な測定・検査、そしてレポート出力までをシームレスに行えるため、作業効率が飛躍的に向上します。

「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。