マイクロニードルやその金型の傾斜観察・3D測定
医療分野のみならず、美容化粧品の分野においても広く用いられているマイクロニードルは、痛みを与えず表皮に対して薬液を簡単に投与できます。また、針自体が体内で溶解するタイプは新しいドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)として注目されています。そのメリットからマイクロニードルの需要が高まり、大量生産において高い品質と信頼性が求められるようになりました。ここでは、マイクロニードルの種類や用途などの基礎知識から、製造に用いられる金型の観察やマイクロニードルの極小針に対する非接触での3次元形状・寸法測定の事例までを紹介します。
マイクロニードルとは
マイクロニードルとは、直径や長さが1mm未満の極小針のことです。一般的に、シートに対して垂直に多数のマイクロニードルが狭いピッチでグリッド状に配列されています。経皮投薬において、一般的な塗布剤や貼り薬とは異なり、極小な針を刺すことで皮膚表面の角質層を通過し、表皮に直接投薬することができます。
マイクロニードルの用途
麻酔やインスリン、ワクチン、ヒアルロン酸などの医薬品のほか、医療目的以外でも美容目的の液剤の投与などにも広く使用されています。
マイクロニードルのメリット
真皮やそれよりも深い皮下組織に1点で投薬する一般的な注射器の針とは異なり、皮膚の浅い部位(表皮)に多点で投薬することができます。痛点の多い真皮まで針が届かないようにすることができるため、痛みを与えず簡単に薬剤を投与できることもメリットです。
マイクロニードルの種類と用途
従来は金属製の針が主流でしたが、現在は、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチック、水溶性高分子などさまざまな材質や形態、製造方法のマイクロニードルが普及しています。マイクロニードルの代表的な分類を以下に挙げます。
- 非溶解型(生分解性)マイクロニードル
- 医療機器に用いられるポリマーであるポリグリコール酸(PGA)やポリ乳酸(PLA)などを材料とした極小針の先端部に薬剤を塗布したマイクロニードルです。高コストではありますが、微量投与の薬剤やワクチンに最適なマイクロニードルとして用いられています。代表的な用途としては、インフルエンザワクチンやC型肝炎治療薬、糖尿病治療薬、骨粗鬆症治療薬などが挙げられます。
- 溶解型マイクロニードル
- 水溶性高分子(ヒアルロン酸など)やペプチド、蛋白薬で作られた極小針を有するマイクロニードルです。多くの場合シート状のマイクロニードルを皮膚に貼り付け、皮膚の水分で針自体を溶解させることにより、表皮に薬剤を投与します。代表的な用途としては局部麻酔薬のほか、近年は育毛剤やシミ、シワ改善など美容目的のマイクロニードル化粧品も多く流通しています。
マイクロニードルやその金型の傾斜観察・3D測定事例
マイクロニードルは、その種類や材質によって製造方法が異なります。金型を使用して成形する場合、高い精度が問われるため一定のショットごとに金型に摩耗や欠陥が生じていないか確認することは、不良発生を防止したり、不良発生時に原因を特定したりするうえで重要です。
マイクロニードルの製造方法には、金型での成形のほかディスペンサでシート上に針を作る方法やレーザー加工、3Dプリンティングなど多種多様で、新しい技術に関する研究が盛んに行われています。マイクロニードルの品質管理や品質保証、研究開発において、どのような製法でも共通して重要となるのが、成形された針の3D形状の観察・測定とそれによる評価です。
しかし、従来の顕微鏡や測定機器では、緻密に配置されている極小針とその金型の観察や、針それぞれの3D形状や3次元寸法測定が非常に困難であることが課題でした。
キーエンスでは、現場の声を活かして課題を解決すべく、30年以上にわたり、まったく新しいデジタルマイクロスコープを開発し続けてきました。そして、最新の技術と長年蓄積されたノウハウを活かして誕生した次世代のマイクロスコープが、超高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
ここでは、「VHXシリーズ」で簡単に実現するマイクロニードルの金型の傾斜観察やマイクロニードルの3D画像化・測定の事例を紹介します。
マイクロニードルの金型の傾斜観察
金型を使った成形はマイクロニードルの代表的な製造方法の1つです。多数配列する極小針1本1本を不具合や不良なく製造するためには、金型の管理が重要となります。
しかし、金型は緻密で複雑な立体形状を持つため、従来の顕微鏡ではステージ上で小型な対象物を治具で固定して傾けたり、金属素材特有の光の乱反射により照明の条件出しに多くの手間と時間を要したりすることが課題でした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z電動ステージ」を活用することで、視野・回転軸・傾斜軸の3つの軸を簡単に合わせながら傾斜観察が可能です。レンズ側を傾けても回転させても視野が逃げることがありません。これにより、簡単かつスムーズに傾斜観察を行うことができます。
「VHXシリーズ」は、一般的な光学顕微鏡の20倍以上の被写界深度と高解像度を両立した光学系と4K CMOS、簡単な操作で多彩な機能を活用できる独自の観察システムを搭載。深い被写界深度により、立体的な対象物の全体にピントを合わせることができます。加えて、「深度合成」機能を活用することで、高倍率で立体的な対象物を観察する際も視野全域にフルフォーカスした画像を簡単に取得可能です。もちろん、傾斜観察においても深度合成を活用することができます。
また、ボタンを押すだけで全方向からの照明で撮像した複数の画像データを自動取得する「マルチライティング」機能を搭載。これにより、目的に適した画像を選ぶだけですぐに観察を始めることができ、これまで条件出しにかかっていた時間を飛躍的に短縮可能です。
これらの高い性能と多彩な機能により、立体形状を持つマイクロニードルの金型に対しても、高精細な4K画像での傾斜観察が簡単かつスピーディに実現します。
マイクロニードルの3D測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高解像度な4K画像での観察だけでなく、そのまま3D測定も実行することができます。
ピント位置の異なる複数の画像を瞬時に合成することにより、テクスチャや表面の粗さまでを捉えた3D画像を表示することができます。これにより、ステージ上の対象物やレンズの角度を動かすことなく、画面上に3D表示された画像を回転させて自由な角度から観察することを可能としました。
また、取得した高精度な3D情報から3次元寸法測定を実行することができるほか、画面を見ながらマウスを操作して任意の断面を選択するだけでプロファイル測定が可能です。これにより、微小かつデリケートなマイクロニードルの極小針に対して、非破壊・非接触で極小針の3次元寸法や断面形状、凹凸の測定値をサブミクロンオーダーで取得することができます。
マイクロニードルの品質維持や研究開発を強力にサポートする4Kデジタルマイクロスコープ
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、マイクロニードルやその製造に用いられる金型のような微小形状を持つ対象物であっても、鮮明な4K画像での観察や2次元・3次元測定、プロファイル測定などを簡単な操作でスピーディに行うことができます。
また、ここで紹介した以外にも観察・解析を効率化する多彩な機能を簡単な操作で活用でき、1台でレポートの自動作成まで完結させることができます。
高い信頼性や安全性に加え、開発研究での競争力も求められるマイクロニードル製造において、「VHXシリーズ」の高い性能と機能、そしてユーザビリティは、業務を飛躍的に効率化することができます。
「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。