レンズのデジタルマイクロスコープでの観察・測定
レンズは、カメラ・顕微鏡・望遠鏡・眼鏡などに使用され、日常生活で身近な光学部品です。レンズには大きく分けて凸レンズと凹レンズの2種類がありますが、これらを複数枚組み合わせることで、望遠レンズやズームレンズなどの光学レンズが設計されています。ここでは、レンズの仕組みを解説するとともに、レンズのデジタルマイクロスコープでの観察・測定事例を紹介します。

- 屈折率(Refractive index)とは
- 分散(Dispersion)とは
- 色収差(Chromatic aberration)の原理と補正方法について
- 色収差を極限まで補正する蛍石(フッ化カルシウムCaF2)レンズ
- デジタルマイクロスコープによるレンズの観察・測定事例
屈折率(Refractive index)とは
屈折率は、「空気中の光の速度/物質中の光の速度」で表わされます。
光の速度は、物質や光の波長の違いで変化するため、屈折率も物質と光の波長で変化します。光の屈折する方向は、スネルの法則で求めることができます。
スネルの法則 (n1sinα=n2sinβ)
屈折率1(空気など):n1
屈折率2(水・ガラスなど):n2
入射角:α
屈折角:β

- A:入射光
- B:反射光
- C:反射面
- D:屈折光
分散(Dispersion)とは
白色光をプリズムに通すと光のスペクトルが現れます。
これを光の分散と呼びます。光の分散は、光の波長の違いで屈折率が異なるために生じる現象です。
光学ガラスの分散は、アッベ数vという値で表現されます。



- A:白色光
分散が大きいとき、光のスペクトル幅が
広くなる

- A:白色光
分散が小さいとき、光のスペクトル幅が
狭くなる
色収差(Chromatic aberration)の原理と補正方法について
光の分散により、レンズの焦点位置は、下図の様に波長の短い光は短く、波長の長い光は長くなります。このため、ある波長の光にピントを合わせても他の波長の光がピンボケとなり、色が滲んだ画像になります。この現象が色収差です。

- A:光線
- B:焦点
- C:焦点距離のずれ
球面収差(Spherical aberration)とは
光の波長の違いで発生するのが色収差ですが、1色の光でも発生する収差が単色収差で、球面収差が代表的です。凸レンズの表面は丸い球の一部を切り取った形をしています。このため、レンズの外側になるほど入射角が大きくなり、屈折角も大きくなります。レンズの中心近くと外側とで焦点の位置に差が生じる現象が球面収差です。

- A:光
収差を補正する方法
収差が逆方向になる凸レンズと凹レンズを組み合わせたり、屈折の大きさが異なるレンズを組み合わせたりすることで、収差を打ち消すことが可能です。

- A:光
球面収差を打ち消す方法の一つに非球面レンズ(Aspheric lens)があります。複数のレンズを組み合わせる替わりに、レンズの外側を球面ではなく曲面に加工することでレンズの数を増やすことなく焦点位置の補正が可能になります。

- A:光
色収差を極限まで補正する蛍石(フッ化カルシウムCaF2)レンズ
色収差を極限まで補正したい場合に使用するのが、蛍石を使用した蛍石レンズです。
天然の蛍石を原料とし、通常のガラスにはない低屈折率、低分散特性を持っています。
さらに、赤から緑の波長は低分散特性でありながら、緑から青の波長が大きく分散する異常部分分散という特性も持っています。キーエンスのデジタルマイクロスコープにも蛍石レンズが採用されており、収差の少ない良好な画質を実現しています。


- A:赤
- B:緑
- C:青
デジタルマイクロスコープによるレンズの観察・測定事例
キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いたレンズの観察・測定の最新事例を紹介します。

2D画像

3D形状測定画像



透過偏光観察で残留応力・異物・クラックが可視化できます。

不具合箇所を写真で残せる様になりました。

同軸落射照明 + Optical Shadow Effect Mode

リング照明 + Optical Shadow Effect Mode