LIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)は、パルスレーザを使用して元素成分を特定する元素分析手法です。ここでは、 LIBSの概要とデジタルマイクロスコープでの元素分析事例を紹介します。

LIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)によるデジタルマイクロスコープでの元素分析

LIBS(レーザ誘起ブレークダウン分光法)とは

LIBSは、Laser Induced Breakdown Spectroscopyの略で、パルスレーザをサンプルに照射し、発生するプラズマの波長を分光器で分解して、波長ごとの光強度を分析することで含有する元素成分を特定する元素分析手法です。
NASAの火星探査でも使用されている分析手法で、大気中で元素分析が可能です。

  1. パルスレーザをサンプルに照射します。
  2. サンプル表面がプラズマ発光します。
  3. プラズマ発光した光を分光器にて波長ごとに分解します。
  4. 波長ごとの強度を検出器で検出します。
  5. 得られた強度データからスペクトルを取得し、入っている元素の割合を計算します。

LIBSを使用するメリット

LIBSには、次のようなメリットがあります。

  • 水素(H)、リチウム(Li)などの軽元素から検出可能です。
  • 真空引きが不要です。
  • 切断・研磨・導電性処理などの前処理が不要です。
  • 大気中で使用できるため、試料サイズの制約がありません。
  • スポット径が約10ミクロンで微小なサンプルの分析が可能です。
  • 液体の分析が可能です。
  • パルスを複数回連続照射することで、深さ方向の元素分析が可能です。(ドリリング機能)

デジタルマイクロスコープによる元素分析事例

キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」とレーザ元素分析ヘッド「EA-300シリーズ」を用いた元素分析の最新事例を紹介します。

バッテリー業界導入用途事例

リチウム電池負極材の解析
対象物を溶かすことなく軽元素のリチウムを検出できます。
電池の液漏れ・腐食の解析
前処理不要なので大きな時間短縮になります。液体や粉体でも分析でき、色の情報があることでより視覚的にわかりやすい報告書が作成できます。

メッキ業界導入用途事例

メッキ断面の元素分析
短時間で解析できるため、解析のN数を増やすことが可能になりました。
金メッキ内部の異物解析
ドリリング機能でメッキ内部の異物の解析が可能です。
メッキの膜厚評価
ドリリング機能でメッキの膜厚評価が可能です。厚みの管理だけでなく、正しい素材が使用されているかが確認できます。

食品・製薬業界導入用途事例

結晶の成分検査(塩の結晶)
観察だけでは同定できない結晶が元素分析で同定可能になりました。
錠剤の異物分析
ドリリング機能で錠剤内部の異物の解析が可能で、いちいち異物を取り出す手間が省けます。
製造工程内の異物分析
Ag(銀)を検出することで銀歯であることが判断できます。またモリブデンを検出することで歯科材料由来であることがわかります。短時間で混入経路を特定し、再発防止が図れます。

電子部品・半導体業界導入用途事例

ウイスカの解析
ウイスカなのか繊維の異物かの判定が可能です。
プローブピンのメッキ剥がれ解析
プローブピン先端のメッキ剥がれが解析可能です。
金メッキの染み解析
クロムであれば付着、ニッケルであれば下から染み出していることが確認できます。

自動車業界導入用途事例

エンジン部品の異物解析
鋳造品内の異物が解析可能です。
切子の解析
切子を元素分析することで製品が特定できます。
インジェクターピンのクロムメッキの剥がれ確認
表面のメッキが剥がれているか、母材まで見えているか、相手方の成分が付着していないかがわかります。立体的な対象物もフリーアングルで解析できます。
焼結後のギアの不良解析
製品が黒くなる不良が発生していましたが、表面が炭化しているのではなく、アルミナの付着が原因であることがわかりました。

化学業界導入用途事例

防振ゴムの異物解析
有機物か無機物かが特定できます。無機物は、ゴムの性能に影響します。
塗装被膜の不良判定
被膜の色が通常と異なる場合に、被膜中に含まれる成分を分析することで良品との比較が可能になります。不良原因を特定し、仕入れ先に指示を出すことができました。
製品に付着した塗料の特定
元素分析することで、製造工程のどの部分で混入した塗料かが特定できます。有機物・無機物の判定だけでなく、色情報でも特定できます。1m以上ある大型の製品もそのまま分析可能です。
樹脂コーティングの異物解析
切断したり、異物を取り出すことなく解析できます。

金属業界導入用途事例

ダイヤモンド砥石研磨時の薬品の残留検査
非破壊、蒸着無しで分析できるので、洗浄液(フッ素の薬品)残りの検査が容易にできます。また、表面をセリウムでコーティングしますが、ドリリング機能で、コーティングムラが確認できます。
工具の刃先のコート剤の有無検査
工具の再研磨の際にコート剤(チタンやクロム)を剥がします。剥がし残りがありますと新しいコートが乗りません。元素分析することで点在しているコート剤をピンポイントで検出できます。
工具の刃先のコーティング層の解析
ドリリング機能でコーティング層や母材の材質が分析可能です。従来は、切断・研磨して分析していましたが、EA-300の導入で工数が削減できました。刃先の耐久性や寿命は、コーティング層によって異なりますが、その違いも分析可能です。
継手の錆びの解析
変色している箇所をピンポイントで解析できます。表面に付着した貰い錆びなのか、ステンレス内部から発生した錆びなのかが判断できます。

フィルム・シート業界導入用途事例

TACフィルム上の異物分析
色の異なる部分を有機物と判断していましたが、錆びであることが特定できました。
フィルム内の異物分析
フィルム内の細かい異物は取り出すのが困難で分析できていませんでしたが、EA-300のドリリング機能で分析ができるようになりました。
プリンタフィルム上の異物分析
対象物が大きくSEMに入りませんでしたが、EA-300は、大気中でそのまま解析可能です。カルシウムが検出されれば紙由来の異物、ケイ素が検出されればトナー由来の異物であることがわかります。
グラビア製版のフィルム上の顔料の検出
有機物とチタンを検出することで、フィルム表面に顔料が乗っているかが確認できます。

キーエンス元素分析ヘッドEA-300シリーズの特長

マイクロスコープで観察しながら気になる箇所をそのまま元素分析

Step1:拡大観察をしながら
step2:ワンクリックで元素分析

超高速LIBS解析

ステージの上に置くだけで観察しながら、大気中で元素分析可能。対象物の破壊や導電性処理、真空引きも不要です。
レーザ誘起ブレークダウン分光法を採用し、安全性が高いクラス1のレーザを使用。レーザにより対象物表面をプラズマ化し、発光色を広帯域(深紫外線~近赤外線)・高分解能の分光器で検出。マイクロスコープ観察系を同軸に入れることで、狙った場所の元素を検出できます。

A: ナノ秒レーザ B: プラズマ発光
A: ナノ秒レーザ B: プラズマ発光

AI-サジェスト世界初

元素分析後の物質を、誰でも適切に判断できます。
数千種類の元素パターンを内部データベースに保有しているため、検出した元素だけでなく、その物質名まで瞬時に示唆します。物質データは階層的に構成されており、固有の名称から総称、さらにはその説明まで簡単に確認できます。また、自社での分析結果を蓄積することで、過去に同様の異物が検出された事例を検索することも可能です。誰でも簡単に、専門知識不要で物質を瞬時に判断できます。

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