株式会社アルファ様
株式会社アルファ
住設機器事業部 製品開発部 メカ設計課
遠藤勇貴氏(左)/堀越悟史氏(中)/永田康洋氏(右)
他社製3Dプリンタではできなかった漏水チェック、ギア・レバーの組付け確認なども
できるようになりました。
8ヶ国13拠点に事業展開電気錠でシェアトップ
株式会社アルファの事業をご紹介ください。
自動車部品
- インテリジェントキー
- ステアリングロック
- アウトサイドドアハンドル
(インテリジェントキー用アンテナ内蔵) - インサイドドアハンドル
株式会社アルファは、キー&キーレス商品を様々な分野に提供する総合ロックメーカーです。
また、海外に8ヶ国13拠点を展開しているグローバル企業でもあります。
「自動車部品事業」、「住設機器事業」、「ロッカーシステム事業※1」の3つの事業を展開しています。
- 1 ロッカーシステム事業は子会社「株式会社アルファロッカーシステム」が展開。
株式会社アルファの特色をご紹介ください。
住設機器
- 携帯器式玄関電気錠
(ドアハンドル一体型) - 非接触ICード式玄関電気錠
- 宅配ボックス
(マンション向けトータル認証システム対応) - 産業用ロック
(自動販売機用補助錠)
ロッカーシステム
- ICカード電子マネー対応
コインロッカー - 指静脈認証式フリーボックス
「自動車部品」、「住設機器」、「ロッカーシステム」の各分野で開発した技術を相互に移転することで、新たな価値を創造できることは当社の強みの一つです。
たとえば、自動車のリモコンキーの技術を応用した玄関用電気錠、住宅のピッキング対策技術を応用した自動車用ロックなどに、こうした強みが活かされています。
玄関用電気錠は、玄関錠の新たな標準になりつつあり、当社がトップシェア※2を占めています。
手のひらに収まる携帯器を身につけているだけで自動車のドア施解錠、エンジン始動/停止ができる「インテリジェントキー」、集合住宅のエントランス・宅配ボックス・エレベーター・各戸玄関等での入居者認証をハンズフリーでできる「マンション向けトータル認証システム」など、精密なメカニカル技術と高度なエレクトロニクス技術に最先端の通信技術・認証技術を組み合わせ、暮らしの安全・安心・利便性を高める製品・システムを開発しています。
- 2 アルファ調べ
よりきめ細かなデザインのすり合わせが可能に
3Dプリンタをどのような用途に活用していますか。
3Dプリンタは、製品の企画・開発に活用しています。
「edロックPLUS」のキーパッド部分の試作部品(キーエンスの3Dプリンタで出力)
キーエンスの3Dプリンタを活用して開発した、暗証番号・非接触ICカード併用式玄関電気錠「edロックPLUS」
「edロックPLUS」のシリンダーカバー部分の試作部品
(キーエンスの3Dプリンタで出力)
キーエンスの3Dプリンタで出力したサムターン(ドア錠の室内側つまみ)の試作品モデリング材が半透明なので、各部の肉厚が適切かどうかも確認できる。
キーエンスの3Dプリンタで出力したドアノブの試作品(手前)とその実物(奥)造形強度が高く積層ピッチが細かいため、デザインの細部や握り心地もチェックできる。
3Dプリンタを導入したことで、製品の企画・開発は どのように変わりましたか。
制作室の一角に設置された
キーエンスの3Dプリンタ
造形物に強度と耐水性があるので、自動車部品の試作にも頻繁に利用されています
(遠藤氏)
3Dプリンタを導入したことで、製品の企画・開発が特に5つの点で変わりました。
1.開発したい製品のイメージを、企画会議で共有しやすくなった
企画会議で新しい製品の開発を提案する時、以前はアイデアを図や絵で伝えていましたが、画面や図面では製品のイメージを伝えきれないことがよくありました。3Dプリンタを導入してからは、開発したい製品のイメージを情報量豊かに共有できるようになりました。
2.デザインを納入先とすり合わせやすくなった
自動車のドアハンドルのデザインも、住宅の玄関錠のデザインも、車体や玄関ドアのデザイン全体との調和が求められるようになっています。
このため、自動車メーカーや建材メーカーと、デザインをきめ細かくすり合わせながらの開発が必要になります。
3Dプリンタの導入で、製品のサンプルを簡単かつスピーディーに出力できるようになったおかげで、納入先とのデザインのすり合わせも行いやすくなりました。
3.より洗練されたデザインを追究できるようになった
製品サンプルをその都度外注する必要がなくなったため、設計した製品のデザイン性を、スピーディーに確認できるようになりました。このため、実際にサンプルを見た上でのデザイン修正に掛けられる時間が増え、同じ開発期間でより洗練されたデザインを追究できるようになりました。
4.部品同士の干渉を、確実かつスピーディーにチェックできるようになった
「かぎ」と言えば以前はほぼメカニカルなものでしたが、電気錠の発達により、機械部品と電装部品が複雑に組み合わされるようになりました。デザインもより洗練されたものが求められるようになりました。
このため、各部品が収まるべきところに収まるか、通るべき配線が通るか、部品同士が干渉しないかといったことを、よりシビアにチェックしなければならない製品が増えています。こうした組付性の確認を、3Dプリンタを使うことで確実かつスピーディーに行えるようになりました。
5.加工を海外に外注する場合も、加工内容を伝えやすくなった
部品の加工を海外に外注する際、3Dプリンタで造形したサンプルを見せれば、言葉の壁があっても、希望する加工内容を正確に伝えられます。
海外への見積り取りや発注が、3Dプリンタの導入で非常に楽になりました。
他社製3Dプリンタからキーエンスの3Dプリンタに乗り換え
使用している3次元CADを教えてください。
住設機器部門では「Pro/ENGINEER」を、自動車部品部門では「CATIA」を、それぞれ使用しています。
3Dプリンタの導入歴を教えてください。
実験用の器具や治具の製作にも、キーエンスの3Dプリンタを活用しています(堀越氏)
モデリング材が半透明なので、歯車やレバーの作動チェックや、樹脂部品の肉厚チェックにも使っています(永田氏)
「edロックPLUS」の暗証番号ボタンの耐久試験を行うための、エアシリンダーを固定する治具。
3Dプリンタを初めて導入したのは2009年です。当時キーエンスの3Dプリンタはまだ発売されておらず、他社製の熱溶融積層式3Dプリンタをリースで導入しました。
リース契約が切れる2012年を前に、改めて各社の3Dプリンタを検討したところ、ちょうど発売されたばかりのキーエンスの3Dプリンタが、既存の他社製3Dプリンタと比べて様々な点で優れていることがわかりました。
そこで、既存機のリース契約が切れると同時にキーエンスの3Dプリンタに乗り換えました。
キーエンスの3Dプリンタは、どのような点で既存の3Dプリンタより優れていましたか。
キーエンスの3Dプリンタが優れていた点は、主に4つありました。
1.造形強度が高い
以前使用していた熱溶融積層式の3Dプリンタは、造形物に負荷を掛けると、積層の境界で簡単に「ペキッ」と割れてしまいました。このため、「形状を確認する」「部品が納まるかチェックする」といった程度に用途が限られていました。やむを得ず造形物に負荷をかける場合は、割れにくい方向を考えて造形する必要がありました。
キーエンスの3Dプリンタの造形物には、ある程度の負荷に耐えるだけの強度がありました。
2.積層ピッチが細かい
以前使用していた3Dプリンタは積層ピッチが粗かったため、あまり細かい形状の確認には使えませんでした。キーエンスの3Dプリンタは積層ピッチが細かいので、より微細な形状の確認に使えました。
3.モデリング材が半透明
以前使用していた3Dプリンタは、モデリング材が不透明の樹脂でした。キーエンスの3Dプリンタのモデリング材は半透明ですので、この点でも用途の広がりを期待できました。
4.サポート材を除去しやすい
以前使用していた3Dプリンタは、出力後の後処理に手間と時間が掛かりました。
サポート材の大きな部分をバリバリと割り、ニッパーやドライバーを使って細かい部分をコツコツ除去する必要がありました。
キーエンスの3Dプリンタは出力後の造形物を水につけておけば大半のサポート材が除去されるので、後処理にかかる手間と時間を大幅に削減できました。
キーエンスの3Dプリンタと既存の熱溶融積層式3Dプリンタ以外に、導入を検討した機種はありますか。
粉末造形の3Dプリンタも検討しました。
サポート材の除去は既存機より楽でしたが、粉が散って周囲が汚れる問題があったため、途中で検討対象から外しました。
3Dプリンタでできることが広がった
他社製3Dプリンタからキーエンスの3Dプリンタに乗り換えたことで、どのようなことが可能になりましたか。
玄関用電気錠の駆動部の試作品キーエンスの3Dプリンタで出力した半透明の筐体に、モーター・ギア等を組み付けて動作確認を行った。
今後もキーエンスの3Dプリンタを活用して価値ある製品を開発して参ります(遠藤氏)
たとえば次のようなことが可能になりました。
1.ギアやレバーの動作も確認できるようになった
造形物にある程度の強度があるので、ギアやレバーがどのように作動するかも確認できるようになりました。
モデリング材が半透明なので、筐体内部の部品の動作もチェックできます。
2.漏水チェックもできるようになった
自動車部品部門では、キーエンスの3Dプリンタを製品の漏水チェックにも活用しています。
造形物に耐水性があり、かつ半透明なので、たとえば着色した水をかけると、水が中に浸入しないか、浸入するとすればどこからどのように浸入するかを、直観的に確認できます。
3.デザインの細かい部分まで確認できるようになった
積層ピッチが細かい分、より実物に近い状態でデザイン性を確認できるようになりました。
4.ハンドルの握り心地もチェックできるようになった
より精細な造形が可能になったので、ハンドルの握り心地なども、3Dプリンタで出力したサンプルでチェックできるようになりました。
5.樹脂成形品の肉厚もチェックできるようになった
リモコン式ロックの受信部筐体には電波を遮断する金属が使えないこともあり、施錠製品にも、樹脂成形品が使われることが多くなっています。
成形時のゆがみを防ぐため、樹脂成形品は各部の肉厚を適切に保つ必要があります。
しかし部品の形状が複雑になると、不透明なサンプルや3次元CADの画面では、肉厚が不適切な部分がないかどうかのチェックが困難です。
キーエンスの3Dプリンタの造形物は半透明なので、肉厚が不適切な部分がないかどうかを簡単にチェックできます。
6.治具製作にも活用できるようになった
造形物にある程度の強度があるので、実験用の器具や治具も、3Dプリンタで出力できるようになりました。複雑な形状の器具や治具が必要になった時に助かっています。
7.開発期間をより短縮できるようになった
サンプル製作を外注しなくて済むケースが増えた分、開発期間をより短縮できるようになりました。
問い合わせに対する対応の早さ・的確さも評価
最後に、キーエンスのサポート体制への評価をお聞かせください。
問い合わせへの対応がいつも早く的確で助かっています。定期的にメンテナンスしてくれるのもありがたいです。今後もよろしくお願いします。