株式会社童夢様
株式会社童夢
開発部 マネージャー 貴家伸尋氏(左)/検査室 古場誠次氏(右)
レーシングカーなどの風洞実験・デザイン確認・組付確認・イベント出展用の部品を造形しています。
自動車メーカー各社からコンセプトカー、先行試作車、レーシングカー等の開発・設計・製作を受託
株式会社童夢の事業をご紹介ください。
写真1
プロトタイプスポーツカー「童夢-零」(ドウム・ゼロ、1978年)
写真2
ル・マン24時間レースに参戦したDOME S102(2008年)
写真3
風洞実験施設「風流舎」
写真4
模型による風洞試験の様子
株式会社童夢は、1.自動車の開発・設計・製作を主たる事業としています。
関連事業として、2.カーレースへの参戦、3.風洞実験施設の貸出・受託開発、4.各種エンジニアリングおよびコンサルティングも行っています。
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1. 自動車の開発・設計・製作※写真1
創業時よりレーシングカーを自社開発しており、多くのサーキットで活躍しています。そのノウハウを生かし、レーシングカーの開発・設計・製作を、国内外の自動車メーカー各社から受託しています。
また、四輪・二輪・部品メーカーを問わず新型車の先行試作車、研究用車両や部品、モーターショー出展車などの開発・設計・製作も受託しています。
企画・デザインから設計、構造・流体解析、風洞試験、製作・組立て、テスト走行まで、1台の自動車を社内で一貫して開発できるのは、日本では当社だけが持つ強みです。
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2. カーレースへの参戦※写真2
レーシングチームを自社で持ち、自社で開発・製作したレーシングカーで、ル・マン24時間レースや、スーパーGT選手権など国内外のレースに参戦しています。
自社開発車による“真剣勝負”のレース参戦を繰り返して得られた、豊富な経験とノウハウは、設計・材料・生産技術・戦略立案など、様々な分野における当社の優位性の源泉になっています。
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3. 風洞実験施設の貸出・受託開発※写真3、4
風洞実験施設を敷地内に持ち、自動車の空力特性を50%スケール模型でテストできます。
この風洞施設を利用した「空力特性試験の受託」や、「風洞試験用模型の製作」、「風洞施設の専有使用貸出」も行っています。
また、車両を走行させながら風洞実験を行うための、「ムービングベルト」も自社開発で、卓越したノウハウを持ちます。
空力特性を重視したスポーツカー・レーシングカー開発とレース参戦で、30年以上にわたり培った当社の風洞実験ノウハウおよび風洞設備は、業界内外から高く評価されており、自動車だけでなく、鉄道車両、二輪車、自転車の風洞実験や、汎用品の耐風試験にも活用されています。
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4. 各種エンジニアリングおよびコンサルティング
レーシングカー開発で培った空力、カーボンコンポジット(複合)材料、車両運動等のノウハウを活用し、自動車に限らず様々な技術分野で、軽量化、高強度化、高剛性化、省力化、コンパクト化等の最適化課題の解決およびコンサルティングを受託しています。
キーエンスの3Dプリンタを
「社内での開発・設計・製作」と「社外向け3Dプリンタ出力サービス」に活用
キーエンスの3Dプリンタをどう活用していますか。
当社では、キーエンスの3Dプリンタを次の3つの用途に活用しています。
- 社内での開発・設計・製作
- 風洞施設を利用中のお客様向けの3Dプリンタ
出力サービス - 一般のお客様向けの3Dプリンタ出力サービス
3次元CADソフトは何を使っていますか。
「CATIA」(キャティア)を使っています。
制作室の一角に設置されたキーエンスの3Dプリンタ
約何人のオペレーターがキーエンスの3Dプリンタを使いますか。
3次元CADは、約20人いる設計スタッフ全員が使います。キーエンスの3Dプリンタからの出力は、今のところ1人の担当者に集約しています。
これは、3Dプリンタの利用希望が集中した際に、案件ごとの重要度を考慮して出力順序を決めるためです。
設計スタッフがキーエンスの3Dプリンタから3次元データを出力する流れは、当社では次のようになります。
- データを3次元CADソフトでSTL形式に変換する
- 変換したデータを、サーバー上の専用フォルダに送る
- 伝票に記入し、3Dプリンタ担当者にメールで出力を依頼する
伝票は、キーエンスの3Dプリンタの「利用状況」と「コスト」を把握するために活用しています。
キーエンスの3Dプリンタをどれぐらいの頻度で活用していますか。
稼働率はかなり高いです。1週間まったく止まらずに出力し続けていることも、よくあります。
キーエンスの3Dプリンタが活躍する場面
はじめに、「社内での開発・設計・製作」へのキーエンスの3Dプリンタの活用についてうかがいます。
キーエンスの3Dプリンタを社内での開発・設計・製作に活用するのは、どのような場面ですか。
デザイン確認用のパーツ模型
ブレーキディスクの50%
スケール模型(奥の円盤)
エアロパーツをフライスで追加加工するための治具
キーエンスの3Dプリンタを社内での開発・設計・製作に活用するのは、たとえば次のような場面です。
活用場面1.「デザインを確認したい時」
新しい自動車の開発中に、3次元CAD上で構築したデザインの妥当性を模型で確認したい時や、発注主とディスカッションしたい時に活用します。
模型制作を外注しなくても、模型での確認が気軽にできるので、デザインを納得いくまで追究できます。
活用場面2.「組み付けを確認したい時」
設計した部品やモジュールが、設計通りの場所に収まるか、設計通りに動かせるかなどを確認したい時に活用します。
3次元CADにも組み付けを確認する機能がありますが、3Dプリンタで出力した模型で試すほうが、早くて確実です。
活用場面3.「50%スケール模型で風洞実験する時」
風洞実験に使用する50%スケール模型にも、キーエンスの3Dプリンタで出力したパーツをよく使用します。
風洞実験用の模型のパーツをすべてキーエンスの3Dプリンタで出力するわけではありませんが、サイズ的にキーエンスの3Dプリンタで出力できて、それほど強度が必要なく、わずかな量しか使わないパーツは、ほぼすべてキーエンスの3Dプリンタで造形しています。
活用場面4.「治具が必要になった時」
加工時や塗装時に対象や工具の位置・方向を固定する治具も、よくキーエンスの3Dプリンタで造形します。
活用場面5.「モーターショーなどの展示会」
モーターショーなどに出す展示車にも、たとえばバックミラーなどに、キーエンスの3Dプリンタで造形したパーツを使うことがあります。きちんと着色すると、3Dプリンタで出力したとは気づかれないほどの仕上がりになります。
導入したメリットを実感する時
どんな時に「キーエンスの3Dプリンタを導入してよかった」と感じますか。
たとえば、特に次のような時にキーエンスの3Dプリンタを導入したメリットを実感します。
1.開発中の製品の仕様が急に変更された時
仕様が急に変更され、すぐに設計を修正し模型を用意しなければならなくなった時は、外注先に待たされず模型を造形できるキーエンスの3Dプリンタのメリットを実感します。
2.展示会の直前に新しいアイディアを試したくなった時
キーエンスの3Dプリンタのモデル材は、サポート材を除去した後磨き込んだり着色したりすると、外部への公開にも耐えるクオリティのパーツに仕上げられます。
展示会の直前にデザインを改良したくなった時など、キーエンスの3Dプリンタによる造形のスピードとクオリティに助けられます。
3.複雑な3D形状の治具が必要になった時
複雑な3D形状のパーツに後から穴あけなどの加工をしたくなった時、加工対象の形状にぴったり合った治具が必要になります。
こういう時もキーエンスの3Dプリンタがあるおかげで、3次元CADの設計データから適切な治具を簡単に作れます。
風洞実験施設の付加価値も向上
「風洞施設を利用中のお客様」と「一般のお客様」向けの3Dプリンタ出力サービスについて
教えてください。
当社の風洞施設を利用中のお客様には、3次元ソリッドデータをご提供いただければ、実費と管理費のみでキーエンスの3Dプリンタから造形するサービスを提供しています。
風洞実験は、なかなかシミュレーションどおりにはいかないものです。
どこか一箇所をいじくれば、それがいろいろな部分に波及して、とりとめがないところがあります。この3Dプリンタ出力サービスを提供し始めたことで、風洞施設を利用中のお客様に、「実験結果から得たアイディアをすぐ形にし、再実験でアイディアの正否を試す」というサイクルを、よりスピーディーに回していただけるようになりました。
一般のお客様には、当社規定価格に管理費を加えた料金で、3Dプリンタ出力サービスを提供しています。
キーエンスの3Dプリンタを選んだ理由
導入にあたり、他社の3Dプリンタと比較しましたか。
開発部 マネージャー 貴家氏
検査室 古場氏
はい。キーエンスを含む複数のメーカーの3Dプリンタを比較検討しました。
3Dプリンタをどのように選定しましたか。
まず、次に該当する3Dプリンタは、候補から外しました。
除外1.価格が1千万円以上の3Dプリンタ
費用対効果で考えて、価格が1千万円未満の3Dプリンタに候補を絞りました。
除外2.造形強度の無い3Dプリンタ
当社ではパネル型のパーツを造形する機会が多いので、造形強度の無い3Dプリンタは除外しました。
除外3.「積層ピッチが荒い3Dプリンタ」
モーターショーに展示する自動車にも使えるクオリティの造形が必要だったので、積層ピッチが荒い3Dプリンタは除外しました。
以上の基準で絞り込んだ結果、キーエンスの3Dプリンタと、他にもう1社の3Dプリンタが候補に残りました。
最終的に、キーエンスの3Dプリンタを選んだポイントは何でしたか。
「サポート材の除去しやすさ」が決め手になりました。
もう1社の3Dプリンタは、造形後にサポート材を除去するため、専用の装置を使って人手をかける必要がありました。
3Dプリンタを導入する目的の1つは、「模型製作のスピードアップ」です。
サポート材の除去に人手と時間を取られると、せっかくの3Dプリンタの導入メリットが低減すると考えました。
これに対してキーエンスの3Dプリンタは、造形後に水につけておくだけでサポート材を除去できます。
この方式であれば、「模型製作のスピードアップ」というメリットを十分享受できると判断し、導入を決めました。
1年弱使っての評価
導入から1年弱が経過した現時点での、キーエンスの3Dプリンタへの評価をお聞かせください。
まず、「サポート材の除去しやすさ」について。
サポート材は、実際に水につけておくだけで除去できます。
空洞部にびっしり詰まっているサポート材も、問題なく除去できています。
モデリング材がバージョンアップして、サポート材がさらにきれいに除去されるようになりました。
「造形精度」についてはいかがでしょう。
キーエンスの3Dプリンタで造形したレーシングカー用ショックアブソーバー(手前)。
造形精度にも満足しています。
導入して間もないころ、「どれぐらいの精度で造形できるのか知りたい」という好奇心もあって、ピストンやバルブやネジ接合を組み合わせてできている複雑な部品を、分解状態ではなく、組立状態のまま出力してみました。
驚いたことに、サポート材を除去すると、3次元CAD上での設計どおりピストンは出し入れできましたし、バルブは回して開閉できましたし、ネジ接合部はゆるめて外すことも、再び締めて結合することもできました。
「モデリング材のクオリティ」についてはいかがでしょう。
一般的な模型用のスプレー塗料で塗装すれば、モーターショーへの展示車にも使用できるクオリティが得られ、満足しています。また、サポート材を除去した後にペーパーでていねいに磨くと、無色透明にかなり近くなる点も評価しています。ヘッドライトのカバーや計器パネルのカバーのような透明部品も、キーエンスの3Dプリンタで造形してペーパーで磨き、一部の展示車で使用しています。
「使い勝手」についてはいかがでしょう。
コツらしいコツもなく、導入してすぐ使いこなせました。
ソフトウェアがバージョンアップされるたびに、使い勝手がよくなっています。
「STLデータ補正機能」も重宝
実際に使ってみてわかった「キーエンスの3Dプリンタの便利機能」などあれば教えてください。
「STLデータ補正機能」は重宝しています。10回の出力中、1、2回は使っています。3次元CADソフトでのSTL変換の際に、それだけの頻度でエラーが発生しているということです。
STL形式への変換エラーがキーエンスの3Dプリンタ側のソフトで発見された時、この機能を使うと、元の3次元CADデータの作成者に問い合わせなくても、変換エラーを補正できます。
当社ではキーエンスの3Dプリンタからの出力担当者を1人に集約しているので、これは不可欠の機能です。
キーエンスの3Dプリンタで造形できないサイズの形状を自動で縮小して造形する機能も、よく使っています。
半透明なモデリング材のおかげで用途が広がる
今後キーエンスの3Dプリンタを活用していみたい領域があれば教えてください。
まだ試していないのですが、レーシングカーのオイルタンクの開発にも、キーエンスの3Dプリンタは有効ではないかと考えています。
一般的な自動車ですと、オイルはエンジンの底にたまっています。
しかしレーシングカーの場合、オイルタンクがエンジンの横にあります。
このオイルタンクはできるだけ細長く縦長に作るのですが、たとえば空間的な制約を解決するため横方向にタンクを膨らませた時、コーナー通過時の横Gに対して、円滑なオイル供給が妨げられるような挙動がオイルタンク内で起きないかというのは、開発設計上1つのポイントになるはずです。
キーエンスの3Dプリンタのモデリング材が半透明であることには、このようなメリットもあります。
最後に、キーエンスのサポート体制への評価をお聞かせください。
問い合わせに対する担当者のレスポンスも的確で、いつも助かっています。今後もよろしくお願いします。