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自動ブレーキ義務化で何が変わる?
新しい国際基準について(1/2)

分類:
次世代安全技術
自動ブレーキ義務化で何が変わる?新しい国際基準について

国際欧州経済委員会(ECE)が2019年2月12日、日本や欧州連合(EU)など40カ国・地域で「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」の導入を義務付ける規則の原案に合意したと発表しました。自動ブレーキの義務化については、2020年はじめに運用開始予定となっています。今回のコラムでは、新しい規制の内容のほか、「自動ブレーキって何?」といった基礎知識から解説。自動車製造の現場は、今後どのように変わるのかも含めて紹介します。

自動ブレーキ義務化の基本情報について

自動ブレーキ義務化は、日本と欧州連合(EU)が主導し、国際欧州経済委員会(ECE)の下部組織である「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」で議論されてきました。そして2019年2月12日、日本や欧州連合(EU)など40カ国・地域で「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」の導入を義務付ける規則の原案に合意したと発表。その背景には、交通事故の防止および被害軽減に国際的なルール整備が必要不可欠だという判断があります。日本国内においても高齢ドライバーによるペダル踏み間違い事故などがニュースで取り上げられ、社会問題になっていますが、その根本的な対応策といえるでしょう。また、現在研究が進められている自動運転に向けた国際ルールとも言えます。現在、自動運転の開発競争が激化しており、その安全性の確保を徹底する狙いもあります。

今回の規則制定には、日本や欧州連合(EU)のほか韓国やロシアが参加していますが、アメリカや中国、インドは参加していません。ただし、参加していないアメリカなどでは、自動車メーカーレベルで自動ブレーキの搭載が進んでいます。自動車製造業という立場から今回の国際ルールを見ると、2020年以降は自動ブレーキ非搭載のクルマは対象国で販売できなくなる可能性もあります。

「衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)」とは

今回の自動ブレーキ義務化の軸になるのが「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)」の搭載義務です。衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)とは、「先進緊急ブレーキシステム(Advanced Emergency Braking System)」の略で、ミリ波レーダーや前方カメラで捉えた情報から衝突の危険を判断し、状況に応じてドライバーに警告または自動でブレーキを作動させるシステムの総称です。

国際欧州経済委員会(ECE)の発表によると、衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)が搭載されると低速走行時の衝突38%減、EU内で年間1000人超の命を救えると試算しています。また、搭載の義務付けが開始になると、EUでは年間1500万台以上、日本では400万台以上の新車が対象になると発表しています。

ただし、日本ではすでに7割以上の新車に自動ブレーキが搭載され、各自動車メーカーでは自動ブレーキを取り入れた安全運転支援システムの導入が進められています。日本国内においては、すでに自動ブレーキが普及しているので、その内容を国際基準に合わせていくことが今後の課題となります。ちなみに日本政府は、2020年の新車9割に衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)を搭載するという目標を掲げています。

各種センサとブレーキの統合制御がカギを握る

現在の自動車でもエアバッグやABS(アンチロックブレーキシステム)などの安全装備が採用されています。今回の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)義務化は、その進化系と言えます。その重要な役割を果たすのが、クルマの“目”に相当する「ミリ波レーダー」や「前方カメラ」です。衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)では、前方の歩行者や車両などの障害物を検知し、分析して危険と判断した場合に車両を停止させることが最重要項目です。ミリ波レーダーや前方カメラなどの安全機能部品については、以下の関連コラムも併せてご覧ください。

自動ブレーキとブレーキアシストの違い

自動ブレーキと似た言葉として「ブレーキアシスト」があります。自動ブレーキは、「衝突被害軽減ブレーキ」と呼ばれ、前方の障害物を検知し、衝突の可能性がある場合はドライバーへの警告および被害軽減のために自動でブレーキを作動させる装置です。一方でブレーキアシストは、ブレーキ操作の判断はドライバーが行い、緊急時などにブレーキ踏力が弱いと判断したときにブレーキ力を増す装置です。ブレーキアシストは、あくまでブレーキ力の補助装置で、自動でブレーキをかける装置ではないということです。これが自動ブレーキとの決定的な違いです。

ブレーキアシスト

ストロークセンサーで検知したブレーキを踏んだ力をECUに送り、ブレーキ力が弱い場合はブレーキ倍力装置でブレーキ力を増加。危険を判断してブレーキを踏むのはドライバーの役割です。

ブレーキアシスト

a:ブレーキペダル b:ストロークセンサー
c:ブレーキ倍力装置 d:ソレノイドバルブ

自動ブレーキ

自動ブレーキは、ミリ波レーダーや前方カメラなど、クルマの“目”で危険を検出し、クルマが危険と判断した場合にはドライバーに警告、さらに危険になるとクルマが自動で判断してブレーキを作動します。

ブレーキアシスト+ミリ波レーダーや前方カメラなど、クルマの“目”の採用。さらにブレーキ操作を判断するECUと、ソフトウェアの高度化。

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