2Sなくして、5Sならず!?
2S徹底からはじめる「みんなの現場改善」
「整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」のローマ字の頭文字5つをとった「5S」 。これにいくら取り組んでも、なかなか浸透・継続しない、また、現場のモチベーションが維持できないといったケースは少なくないといわれます。
5Sには「人」に関係するポカミス防止や教育・訓練の充実などが含まれるなど、複雑になりがちな性質が挙げられます。 そこで、「2S(整理・整頓)」は、ほかの5S項目と親和性が高いたことから、まずは2Sを徹底することが、5S実現の近道になるといわれています。
- この記事でわかること
(1)自分事化で2Sを浸透させる
5Sの基礎となる2つが、整理・整頓の「2S」です。2Sは、仕事環境に直接関係するため、自分事化しやすい性質があります。テーマ設定による自分事化の例を下記に挙げます。
「自分事化」を目的とした2Sのテーマ設定例
テーマ設定の例 | 自身へのメリット(自分事) |
---|---|
■スローガンの設定例 「安全でストレスフリーな環境」 |
・怪我などのリスクが低減 ・作業時の無駄や負担が低減 |
■効果の設定例 歩く・かがむ・背伸び・運ぶ・探すなどの「負担や手間を削減」 |
・無駄な動作が減り、疲れが軽減 ・無理な姿勢がなく、負担や危険を回避 ・置き場を守ることで、探す手間が減少 |
作業者本人へのメリットが鍵
安全性と作業のしやすさを考慮したレイアウト、工具などを戻す所定の配置を決め、守るという基礎にあたるのが「2S」です。しかし、会社やクライアントのための現場改善という印象が強いと、現場や実務、作業者本人との関連性が希薄に感じられてしまいがちです。同じ改善内容でも、「本人へのメリット」として表現することで、現場全体のモチベーションは大きく変わります。
このように視点と表現方法を変え、やる気をマネージメントすることで、改善・持続できる事象は、ほかにも沢山あるかもしれません。また、施策・管理する側も自分事に変換することで、セルフマネージメントに役立つことがあるかもしれません。
(2)2Sの実践ポイント
(1)「自分事化」による2S浸透のヒントを紹介しまたが、次のステップである「実践」においても自分事化は重要なポイントとなります。
現状分析とレイアウト設計のポイント
ここでも「自分事化」は重要な要素です。できるだけ作業者が自分たちで決めるのが理想的です。たとえば、小さな班ごとに作業者自身が現状の作業効率や安全性を見直し、配置や通路、導線などをテーマに改善案をプレゼンします。それらを基に、1つの改善案に集約していきます。これは、自分たちの仕事場を「考える・つくる・維持する」という習慣にもつながります。
道具の棚卸しのポイント
作業に使う必要最小限のものを「必要品」とします。さらにそれらを使用頻度でランク付けします。現場や工程の特性にもよりますが、たとえば下記のような分け方です。
- ・Aランク:毎時間・毎作業使うもの
- ・Bランク:製造ロットごとに使うもの
- ・Cランク:1日1回程度使うもの
- ・Dランク:毎週使うもの
月1回・年1回などの使用頻度にもE以降のランクを付けます。破損品・旧製品用・用途不明で長期間使用していないものは「不用品」とし、この機会にできるだけ処分しましょう。
必要品の置き場所・置き方のポイント
たとえば、必要品Aランクは、作業場に整理して置く、または身に着けます。Bランクは準備台車などに。Cランクは作業エリア内、Dランクは作業エリア外の近い場所に置きます。 E以降は倉庫などに保管し、使用時のみ出庫します。
また、道具を種類別に置くとその中から選ぶ手間が生じるため、「使う順」や「使用頻度順」で配置することで、使いやすさ(=作業効率)につながります。
最大の目的は使用者への最適化
「2S(整理・整頓)」は、使用者への最適化とも言い換えることができます。製造現場においては、複数の使用者に共通する最適化が求められます。そのため、2Sの計画の始点となる現状分析や設計の時点で現場の声を集めることは多少手間がかかりますが、後に発生する現場の不満や修正を可能な限り削減するためにも有効です。
(3)2Sのチェックポイント
5Sの基本となる「2S(整理・整頓)」。これまで、参加意識を促す(1)「自分事化」や、具体的な(2)「実践ポイント」について考察してきました。最後にその仕上げとなる維持・継続のためのチェックポイントについて考えてみましょう。
配置を仕上げるチェックポイント
実際に作業しやすいか、体に無理がかからないか、下記の3つの観点から検証し、調整していきます。
- ・姿勢に無理がないか
- 背伸びしない・しゃがまない(平均身長の胸から膝ぐらいの高さに物を配置する)
- ・動作に無駄が発生していないか
- 素早く適切な道具が取れるか・使えるか(道具を取った手で、持ち直さずに作業できるか)
- ・無理なく元の位置に戻せるか
- 使用後の道具を、感覚的に元の場所に戻せる(使用時の姿勢から無理なく戻せるか)
チェックポイントの可視化で維持・継続を容易に
最後に、決めた配置が守られているか、誰が見てもわかるように表示しておくことが重要です。その例を下記に挙げます。
- ・置き場と、置いてあるものが一致(表示で判別可能にしておく)
- ・必要品の置き方が守られている(色分けなどで判別可能にしておく)
- ・置き場の表示がないところには、何も置かれていない
- ・仮置きしていない(仮置きの場所を設けない)
- ・「バミリ(床の位置表示) 」から物がはみ出ていない
- ・先入れ先出しルールが守られている(表示通りになっている)
- ・棚の上などラベリングされていない場所に物が置かれていない
- ・箱の中身が何か表示されている(表示がない箱は置かない)
普段から2Sが順守されているか目視で簡単にチェックできるようにしておけば、チェックリストもチェック工数も不要となります。 このように、順守チェックにおいても、「無理」や「無駄」を削減し、2Sの維持・継続を容易にすることが重要です。
全体を通して、現場のみんなが取り組みやすい、取り組みたくなる工夫を施すことで、「みんなの2S」が完成します。地道な作業も沢山ありますが、現場の自発性や5Sの実現・継続に繋がるため、可能な限りじっくり取り組みたい活動といえます。
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