3分でおさらい。「CAD」と「CAM」、そして「CAE」とは
多くの製造業で欠かせない「CAD」や「CAM」、「CAE」。業務経験や配属された部署・現場・工程、また、企業として請け負う工程の内容によっては、あまり馴染みがないかもしれません。しかし、近年は技術の進歩により、さまざまな工程において、これらのデータの活用が注目されています。
この記事では1文字違いのこれら3つのワードについて、3分程度でおさらいします。
- この記事でわかること
CAD・CAM・CAEの基礎知識
「CAD」とは
「キャド」と読みます。Computer Aided Designの略で、コンピュータ支援による設計という意味を持ち、コンピュータ上で設計や製図を行うツールです。
2次元の平面図を作成する2D CADと、立体像のモデリングで曲面や複雑な形状も可視化できる3D CADがあります。従来の紙を使った製図とは異なり、データ化により管理や共有、修正、転用などが簡単に行えることがメリットです。
CADには、製品や治工具の設計など、さまざまな用途に対応する「汎用CAD」のほか、建築土木関連用・配管用・電気用・服飾デザイン用など、各用途に応じて専用設計された「専用CAD」があり、幅広い業界で活用されています。
「CAM」とは
「キャム」と読みます。Computer Aided Manufacturingの略で、コンピュータ支援による製造という意味を持ちます。つまり、製品や部品の製造・加工を行う際、CADで作成した図面を基に、工作機械での加工に必要なNC(数値制御)プログラムなどを作成するツールです。
一般的には、CADシステムで作成した設計データをCAMに出力して加工を行います。CADとCAMの工程をまとめたツールも多く、「CADCAM(キャドキャム)」とも呼ばれます。工作機械との互換性により、さらに高い精度での製造・加工を実現することができます。
「CAE」とは
「シーエーイー」と読みます。Computer Aided Engineeringの略で、コンピュータ支援によるエンジニアリングという意味を持ち、主にコンピュータ上で仮想試作・試験といったシミュレーションや解析を行うためのツールです。
たとえば、物理現象(力の状態・流体・熱など)の計算や、物体内外に生じる目には見えない現象(応力・温度・電磁場など)をシミュレーション・解析して可視化することで、CADでの設計やCAMでのプログラムの検証や改善に利用できます。
コンピュータの処理能力が向上するにつれ、CAEでより高度なシミュレーションができるようソフトウェアの性能も向上しています。たとえば、樹脂成形工程での成形材料や成形条件などによって、CADで設計した金型内でどのように溶融樹脂が流動するかのシミュレーション・解析も可能です。これにより生産効率の良い条件で安定した品質が保てるよう、あらかじめ金型の設計(CADデータ)を改善しておくことができます。
このようにCAEの技術進歩により、製品の開発・試作段階での品質向上が可能となり、量産での立ち上げや納期の短期化、高い歩留まり率の実現に繋げることができます。
CAD・CAM・ CAEの違いや関係性のまとめ
ここまで説明した各ツールの違いや関係性を以下の表にまとめます。
CAD | CAM | CAE | |
---|---|---|---|
用途の違い | 設計や製図とそのデータ作成・出力 | 工作機械などに用いるプログラムの作成 | シミュレーションや解析で検証を行う |
特徴 | 3D形状を可視化できる(3D CAD)。データを共有・修正・転用可能 | NC(数値制御)、または工作機械専用のプログラムを作成可能 | 物理現象や不可視現象を可視化・把握し、設計の検証が可能 |
相互関係 | 製品の基礎となるデータを出力し、CAMやCAEに活用可能 | CADデータを基に、加工に必要なプログラムを作成可能 | CADデータを基に仮想で検証を行い、設計改善に活用可能 |
開発・設計だけじゃない。CAD・CAM・CAEのデータ活用が競争力の鍵に
CAD・CAM・CAEを上手く駆使することで、試作品や製品の精度を可能な限り向上させることができます。その一方で、実際の製造工程では工作機械や工具の状態、材料や条件の細かなバラつきなど、物理的な影響による誤差はほぼ不可避です。そのため、検査の工程や回数の削減が難しいことが課題でした。 しかし、近年は技術の進歩により、製品のDNAともいえるCADデータは、検査工程の合理化にも役立てることができるようになりました。
たとえば、従来は拡大印刷した2次元の図面と製作したワークの像を投影機で照合して寸法不良箇所を目視確認するため、多くの時間と手間を要しました。現在は、測定機で製品を高精度に測定し、CADデータと比較してNG箇所とその差異値を簡単に把握できたり、インラインでも任意の値と実際の製品の測定値の差を自動判定したりといった自動全数検査も可能になりました。
また、製品をスキャンして3D形状のデータを取得し、CADデータを起こすリバースエンジニアリングなどの手法も注目されています。
デジタルデータの利点を活かした定量的な検査は、傾向の解析と把握、改善、そして自社のノウハウ蓄積に活用できます。企業が競争力を得るために、これらのツールの重要性は増すばかりでしょう。
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