品質保障に欠かせない測定機器の校正はいつ行う?
測定機器は、定期的な校正作業が必要とされています。ではなぜ、校正作業を行わなければならないのでしょうか。 たとえば、会社がISO9001(国際標準化機構による品質マネジメントシステムに関する国際規格)を取得していても、測定機器の校正は必要です。
測定機器の校正作業は、定期的に行わなければ、会社の信用を失う大きなミスとなる可能性もあります。校正作業を行う意味や、実施方法、校正したことを証明するために必要な書類について解説していきます。
- この記事でわかること
なぜ測定機器に校正が必要なのか?
どんな機械も、長く使っていれば各種の部品が劣化して壊れます。異常の有無を確認するには、定期的な点検作業が必要です。自動車ならば、法律で定期的に車検を受けることが定められています。工作機械に対しても、日々の社内での点検や、メーカーによる定期点検が通常行われています。測定機器も同じです。長く使えばさまざまな場所が劣化し、正しい値を示さなくなることがあります。明らかな故障がなく作動していたとしても、調整が狂っていたり、測定部が接触で摩耗していたりすれば、正確な測定値が得られていないかもしれません。
そこで必要になるのが、測定機器の「校正」です。校正とは、使用している実機が正しく測定できているかを確認する作業です。実機の値と標準機の値を比較し、差異(ズレ)を把握します。校正によって調整が必要であると判断された場合は、修理やメンテナンスが行われます。正しく測定できない測定機器を使っていては、製品の品質を保つことができません。社内での検査を通っても、納品先の検査で不良品と見なされれば、会社の信用を大きく損なう事態となります。定期的な校正作業で測定値の精度を保つことにより、自社の製品の品質は間接的に保障されます。測定機器の校正は、製造業においておろそかにしてはならない重要な作業といえます。
校正を行うタイミングは?
校正作業をいつ、どの程度の間隔で行うかについては、明確な決まりがありません。ISO9001の「監視機器及び測定機器の管理」の項目においては、定められた間隔または使用前に行うこと、そして国際または国家計量標準にトレーサブル(追跡可能)な計量標準に照らし合わせて行うことが示されていますが、校正作業の間隔については明記されていません。各現場で、それぞれの状況に合わせて決めることになります。
通常、測定機器のメーカーでは、1年ごとなど推奨する校正の間隔を設けています。それを基準として、過去の校正実績をチェックし、校正の間隔を設定することが多くなっています。前回の校正データと今回の校正データを比較し、許容精度内なら次回の校正間隔を延長しても問題ありません。許容精度外なら、直ちにメンテナンスを実施し、校正間隔も短縮する必要があります。測定頻度が高く、精度の基準も厳しい製品に使用するものならば、安全や品質を担保するために校正の頻度を高める場合もあります。測定機器の使用頻度や使用環境、作業工数や人員、コストなどを考えながら、自社製品の品質管理として問題ないと判断できる期間を定めることが肝心です。
校正により発行される校正証明書類とは
測定機器の校正は、ただ実施すれば良いわけではなく、校正結果が有効である根拠を示すことが重要です。校正結果の有効性が立証できなければ、いくら校正を行っていても品質保証を担うことができません。対外的に有効な校正が成立する要件としては、以下のことが挙げられます。
- 資格認定された校正員により定期的に校正が実施されている
- 校正に使用する標準機のトレーサビリティ(追跡可能性)が確立されている
- 校正の手順が手順書により明確になっている
- 校正を証明する記録がある
上記の要件を満たした校正業務が行われたことを証明するものとして、校正証明書類があります。校正証明書類には、校正証明書やトレーサビリティ体系図などがあります。
校正証明書とは
測定機器の校正結果を記載した書類です。校正を行った日や、校正を行ったメーカー名、検査試験項目、検査結果などが記載されています。通常は、測定機器のメンテナンスと併せて校正を依頼すると、返却時に添付されています。
トレーサビリティ体系図とは
ISO9001が求める校正をクリアするには、校正時の比較対象となる標準機が、国際計量標準あるいは国家計量標準に準拠していることがトレーサブル(追跡可能)になっている必要があります。トレーサビリティ体系図は、校正に用いた機器の校正経路を記載した書類です。上位にさかのぼることで、どのような基準を使って校正が行われたかを明らかにします。最上位までたどると国際計量標準あるいは国家計量標準に行き着くことがわかるように記載されています。
これらの書類によって、ISO9001が要求する基準を満たした校正が行われていることが立証されます。
校正は、自社製品の品質や精度を証明するためにも必要なものです。顧客から校正証明書やトレーサビリティ体系図の提出を求められることもあるため、測定機器の適正な校正を実施することは不可欠であるといえます。
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