セルカウント・面積計測の効率化

食品や化粧品、医薬品などの安全性を評価する微生物試験や遺伝毒性試験などにおいて、ウェルプレートの全面観察や微生物や細胞数及びそれらが形成するコロニー(集落)の正確な解析、定量的な評価を効率的に行うことは大きな課題の1つです。また、再生医療研究の分野においては、iPS細胞(人工多能性幹細胞:induced pluripotent stem cell)を用いた新しい治療法や治療薬の実用化に向け、さまざまな実験や研究が広く行われています。その研究項目の1つである、ウェルプレートでのiPS細胞の維持培養におけるコロニー(集落)形成を評価するためのカウントや計測においても同様の課題が挙げられます。
ここでは、大型の電動ステージでウェルプレートの全面観察を可能とする蛍光顕微鏡を使った課題解決の事例や、ウェルプレート上のiPS細胞に対するセルカウントと面積計測の事例を紹介します。

セルカウント・面積計測における課題

製品の安全性確保を目的に行われる遺伝毒性試験の1つにAmes試験(エームス試験)があります。この試験では、本来は自らアミノ酸を作ることができない菌株に被験物質を投与し、そこで形成されるコロニーやその割合で突然変異誘発性を評価します。ウェルプレート上で経時的に増殖・変化する生菌のコロニーを見分けて計測する必要がありますが、計測者の目視によるカウントでは、値のバラつきや誤差なくすべてのウェルプレートを解析・評価することは不可能といえます。高倍率の狭い視野でウェルプレートを観察したり、形成されたコロニーをカウントして評価したりといった際、即座にウェルプレート上の全体像を観察することが困難であるほか、多くの時間を要してしまううえ、見落としのリスクが伴うことも重要な課題として挙げられます。
また、再生医療研究の分野において、ウェルプレートの全面観察やiPS細胞のコロニー形成を正確に解析することは、実験結果を定量的に評価するうえで欠かせません。加えて、培養プロセスの改善や効率化などの目的においても、異なる培養条件や培地交換、継代作業方法それぞれのデータ集積は大変重要です。

しかし、セルカウントや計測においては、作業者による結果のバラつきが正確なデータの集積を妨げる要因として取り上げられることが多々あります。特にiPS細胞は維持培養の過程でコロニーの形成とともに増殖する際、コロニー内の細胞の形態に変化が生じます。このとき、細胞間の境界が曖昧に見えてしまうことがあり、目視での正確なカウントがより困難になるため、人によって計測値や評価にバラつきが生じる原因となり得ます。

こうした問題は、手動カウントでのミスや自動セルカウンターでの誤検出が発覚した際、解析または実験のやり直しに多くの時間と労力を要するため、特に顕著となります。各種の検査や試験、実験などにおいて、限られた人員の労力と時間のムダを排除して、より多くの成果をあげるには、データの正確性と作業効率の両方を向上させる必要があります。

セルカウント・面積計測の課題解決事例

キーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡 BZ-Xシリーズは、1台で蛍光・位相差・明視野での観察やさまざまな撮影方法にオールマイティに対応します。そして、ウェルプレートの全面観察や定量的なセルカウント、面積計測などを可能とし、実験・研究または試験・検査における諸課題を解決します。
電動ステージの自動制御を活用した画像連結でのウェルプレートの全面観察、そして、iPS細胞を例としたウェルプレート全面画像での解析の効率化など、BZ-Xシリーズの導入メリットを事例とともに紹介します。

大型の電動ステージを活用したウェルプレートの全面観察

顕微鏡で細胞を高倍率観察する際、視野が狭くなるためステージ座標を記録しながら部分的な観察を繰り返す必要があります。そのため、ウェルプレート全面を一望することと微細な細胞の高倍率観察を両立することは困難でした。高倍率で撮影した画像を画像処理によって1枚の画像につなぎ合わせて、広視野画像の獲得を試みるケースもありますが、手作業による連結作業は難易度が高いうえ、多くの時間を要します。こうしたことから、時間経過によって変化が生じる生細胞に影響することなく、いかにして素早くウェルプレート全面を観察するかが課題となっていました。

BZ-Xシリーズは、大型の電動ステージをX・Y・Z軸方向に制御しながら高倍率画像を高速に自動撮影して連結する「イメージジョイント」により、ウェルプレート全面の高解像度画像を簡単に取得することができます。広視野でのウェルプレート全面観察とコロニーが形成された箇所の高倍率像をシームレスに行き来することができるため、形成されたコロニーを見逃したり、座標を見失ったりすることなくスムーズな観察が可能です。
また、マルチウェルプレートの複数のウェルに対する一括イメージジョイントも自動で実行することができます。

ウェルプレート全面におけるiPS細胞のセルカウント・面積計測の効率化事例

時間経過による生細胞や生菌の変化は、ウェルプレート内の解析結果と評価に影響するため、素早く定量的に解析結果を得ることが重要です。
下の画像はBZ-Xシリーズのイメージジョイントで得たiPS細胞のウェルプレート全面像に対し、「ハイブリッドセルカウント」を用いて自動でカウントや面積計測を実施した例です。広視野観察から、ウェルプレート全面におけるコロニーの個数や面積の平均・標準偏差・総数の値を定量的に計測して、素早く解析結果を取得することができます。これにより、手動カウントにかかる膨大な時間や労力、そしてヒューマンエラー発生のリスク排除が可能です。

  1. 大型ステージによるウェルプレート観察
  2. 大型ステージによるウェルプレート観察
    個数
    251個
    平均面積
    8,315µm2
    面積標準偏差
    12,652µm2
    面積総数
    2,086,967µm2

使用対物レンズ:CFI60 CFI Plan Apo λ 10x
イメージジョイント:7枚×9枚

マルチウェルプレートを使用する場合、BZ-Xシリーズの「マクロセルカウント」を用いることにより、1枚の画像と同一条件で、他の複数の画像を一括で自動計測することができます。
従来は複数のウェルにおける解析に膨大な時間と手間を要すうえ、計測者によって解析結果や評価にバラつきが生じてしまうことが課題でしたが、BZ-Xシリーズであれば、定量的な計測と評価を簡単にかつ短時間で実現します。

同一条件で一括計測

オールインワン蛍光顕微鏡 BZ-Xシリーズを導入すれば