表面積を正確かつ簡単に測定する方法

表面積を正確かつ簡単に測定する方法

表面積とは立体の表面の面積のことで、立方体や球体、円錐形の表面積などが一般的と思います。しかし、これらの測定は非常に難易度が高く、顕微鏡やマイクロスコープ・CNC画像測定機などによる面積測定の結果で代用しています。また、2次元データから表面積を算出する方法もありますが、表面積の正確な測定は不可能です。変位計や粗さ計でも測定できますが、点や線で測定するため、表面積の測定には多くの手間が必要です。
ここでは、さまざまな対象物の表面積の説明と測定方法の課題およびその解決方法について紹介します。

表面積とは

表面積とは、立体の表面の面積のことであり、見える部分の面積です。表面積は質感・密着性・滑り性・放熱性など、粗さなどの指標と並んで、機能性評価における重要な指標の1つです。たとえば金属破断面や摩擦面、PGAやレーザーマーカによる刻印などは、表面積を測定することでさまざまな情報を得ることができます。

金属破断面の表面積

金属破断面を詳細に観察すると、その破壊形態から破壊の原因をある程度特定することができます。また、表面積を測定することで、破面に占める脆性破面の割り合いである延性破面率などを算出することができます。このように、金属破断面の破面解析は、破壊原因調査の有力な手段であるといえます。

摩耗面の表面積

固体表面には、粗さやうねりが存在するため、平面同士の接触であっても、突起同士(真実接触面積)の接触になります。真実接触面積は、摩耗面の表面積と粗さから算出することができ、これにより摩擦の状況を把握することができます。このように、摩耗面の表面積を測定することで、摩耗の要因を知ることができます。

PGA(Pin grid array)の表面積

PGA(Pin Grid Array)とは、ICのパッケージ形式の一種です。ピンは高密度に実装されており、ソケットに差し込むため、ピンの太さ、高さ、角度に狂いがあると、ソケットへの装着ができなくなります。このため、ピンの高さや体積、表面積など多くの箇所の測定が重要になります。

レーザーマーカーの刻印の表面積

レーザーマーカーの刻印の品質は、刻印部分の体積や表面積、断面積を測定することで評価できます。これらの値はレーザーの照射強度や材料のレーザー光吸収率、スポット径などの設定にも役立てることができます。

従来の表面積測定の課題

これまで、表面積の測定には顕微鏡やCNC画像測定機、粗さ計、変位計が使われてきました。しかし、面積測定の結果を代用したり、2次元データから表面積を算出するなど精度に問題がありました。さらに、測定に時間がかかるという問題もあり、きわめて難易度が高いとされてきました。

顕微鏡による表面積測定の課題

顕微鏡による表面積測定の課題

顕微鏡による測定は、対象物が小さい場合には有効です。特に、近年開発されている顕微鏡は測定データの定量化にも対応しており、使いやすさも向上しています。しかし、対象物が大きい場合、対象物全体の表面積や面積、体積を測定することができません。また、測定できたとしても、対象物を移動しながらの測定にはたいへん長い時間と手間を要します。

CNC画像測定機による表面積測定の課題

CNC画像測定機による表面積測定の課題

一般に、CNC画像測定機ではステージにセットした対象物をCCDカメラで読み取り、三次元測定を行います。

カラー画像による観察も可能ですが、表面積を測定では下記のような課題があります。

  • バリや欠けなど、製品欠陥による突起があると、誤検出する場合があります。また、測定ポイントなどの設定が異なると、測定精度にバラつきが出ます。
  • X、YさらにZなど、測定項目が増えるとプログラムが複雑になり、高い専門知識と必要になると同時に設定工数がかさみます。このため、測定する対象物の数に比例して、測定時間が長くなります。

さらに、測定室が必要である、測定室を基準温度にしておく必要があるなど、現場の誰もが正確に測定できるわけではないということが大きな課題でした。

粗さ計や変位計による表面積測定の課題

粗さ計は表面の粗さの測定は、高さ方向は点または線でしか測定できないため、正確に形状を把握するには測定箇所を増やす必要があります。プローブまたは針を移動することで測定するため、測定箇所が多くなるほど測定時間がかかります。また、設置後の対象物は位置補正が必要です。さらに、測定者によって測定ポイントがバラつく可能性があり、測定値は信頼性に欠けます。

表面積測定における課題解決方法

従来から使用されている一般的な測定機には、対象物の固定に時間がかかる、立体的な対象物・測定箇所に対して点や線で接触しながら測定している、という課題があります。こうした測定の課題を解決すべく、キーエンスでは、ワンショット3D形状測定機「VRシリーズ」を開発しました。
対象物の3D形状を非接触で、かつ面で正確に捉えることができます。また、ステージ上の対象物を最速1秒で3Dスキャンして3次元形状を高精度に測定することができます。このため、測定結果のバラつくことなく、瞬時に定量的な測定を実施することが可能です。ここでは、その具体的なメリットについて紹介します。

メリット1:最大200mm×100mmの広範囲を測定可能

測定に必要な作業は、対象物をステージに置いて、ボタンを押すだけ。厳密な位置決めなどの事前準備が不要なので、測定機の知識や経験がなくても、すぐに高精度な測定が可能です。

メリット1:最大200mm×100mmの広範囲を測定可能

従来の測定機と異なり、ステージに置いた対象物の特徴を抽出し、自動的に位置補正することができます。これまで多くの手間と時間を要した厳密な位置調整は不要です。さらに、最大200mm×100mmの広範囲を連結して測定することができます。そのため、測定作業が属人化することなく、不慣れな方でも簡単・瞬時に測定することができます。
「VRシリーズ」なら、冷却板のような広い面積の対象物も、ステージに置いてボタンを押すだけの操作で、正確な表面積測定が可能です。

メリット2:表面積・断面積も定量評価が可能

金属延性破面の表面積と断面積、さらに表面積と断面積の比率を測定することができます。
「VRシリーズ」は、高さデータを用いて、対象物の体積や面積、指定高さのXY径を測定することができます。また、個数のカウントも同時に実行できます。

メリット2:表面積・断面積も定量評価が可能

まとめ:測定しづらい表面積測定を飛躍的に改善・効率化

「VRシリーズ」なら、高速3Dスキャンにより非接触で対象物の正確な3D形状を瞬時に測定可能。表面積はもちろん、体積・断面積・表面積と断面積の比率などの測定において、従来の測定機における課題をすべてクリアすることができます。

  • 面積、体積、表面積を同時に測定できます。
  • 人による測定値のバラつきを解消し、定量的な測定が実現します。
  • 位置決めなどなしに、ステージに対象物を置いてボタンを押すだけの簡単操作を実現。測定作業の属人化を解消します。
  • 簡単・高速・高精度に3D形状を測定できるため、短時間で多くの対象物を測定することができ、品質向上に役立てることができます。

他にも、過去の3D形状データやCADデータとの比較、公差範囲内での分布などを簡単に分析できるため、製品開発や製造の傾向分析、抜き取り検査などさまざまな用途で活用することができます。