非接触で体積を測定する方法

非接触で体積を測定する方法

測定要素のひとつに『体積』があります。体積は、液体や気体、個体などで幅広く使われますが、定規やノギスなどで直接できる長さなどに対し、各辺の長さなどから公式を利用して導き出すという違いがあります。

水を菜種(なたね)に置き換える菜種置換法や、レーザー体積計を使用して体積を測定する方法が一般的ですが、液体に濡れてしまう、表面の変形によって正確に測れないといった課題がありました。

今回は、そんな体積測定の基礎知識に加え、非接触で体積を測定する方法について解説。従来の測定方法における課題と、その解決策をまとめています。また、非接触で体積を測定する有効な手段が3Dスキャナの活用です。キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』は、さまざまなワークの形状を短時間かつ3次元で捉えることができ、非接触で簡単に体積の算出が可能。こちらでは、『VL-700シリーズ』を活用した体積測定についても紹介します。

体積とは

体積とは、3次元空間において、その領域の大きさを示す物理量です。日本語では『嵩(かさ)』と訳され、国際単位系(SI/SI単位)では『m3(立方メートル)』が用いられます。数学的には、三次元空間内の部分集合(=図形)の定義関数を積分することで体積を求めますが、実際の現場では、積分ではなく専用の測定機を用いて実測値を求めます。また、体積を測定する器具・機械を総称して『体積計(Volume Meter)』と呼びます。
たとえば、体積の測定は、不定形な原材料であったり、食品の大きさであったり、また容積になりますがエンジンのシリンダー内の容量を調べる際に用いられます。ちなみに容積とは、ある容器の中に入る量を示し、体積と同じく、単位は『m3(立方メートル)』が用いられます。

体積の計算方法

体積は、立体の形状によって以下の公式によって求めることができます。ただし、公式は立方体や直方体、柱体、球体などに限られ、複雑な形状の計算はできません。そのため現場では、体積計を用いて測定しますが、体積測定の基礎として公式を理解しておく必要があります。

立方体の体積
立方体の体積
V
体積
a
一辺の長さ
直方体の体積
直方体の体積
V
体積
a
たての長さ
b
横の長さ
h
高さ
柱体の体積
柱体の体積
V
体積
S
底面積
h
高さ
錐体の体積
錐体の体積
V
体積
S
底面積
h
高さ
球の体積
球の体積
V
体積
r
半径
正四面体の体積
正四面体の体積
V
体積
a
一辺の長さ
正八面体の体積
正八面体の体積
V
体積
a
一辺の長さ

体積計の種類

体積を測定する体積計には、日本古来の『枡(ます)』をはじめ、科学実験や医療用で使われるフラスコやメスシリンダー、ピペット、ビュレット、そのほか非接触で測定できるものとして、音圧を利用した『音響式体積計』、レーザー光を利用した『レーザー体積計』などがあります。また、これらは容量計と呼ばれることもあります。

一般的な体積の測定方法

体積の測定方法として、『アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法』『レーザー体積計を利用した体積の測定方法』『音響式体積計を利用した体積の測定方法』の3種類が一般的です。また、アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法と原理は同じですが、『菜種置換法』も食品などの体積測定でよく用いられます。

アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法

アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法は、『流体中の物体は、その物体が押しのけている流体の重さ(重量)と同じ大きさで上向きの浮力を受ける』という物理法則を利用したものです。アルキメデスの原理は、浮力が発生する原理を示した法則ですが、沈めた物体と押しのけられた流体の量が同一になることから、その法則を利用して体積の測定が行われています。

わかりやすい例で例えると、浴槽いっぱいに張ったお湯に浸かると、自分の体と同じ量のお湯が浴槽からあふれます。これを体積測定に用いたのが『アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法』です。代表的な方法として、メモリ付きのメスシリンダーを使った体積の測定が挙げられます。測定対象を液体(通常は純水)に沈め、液面の変化を読み取ることで体積を知ることができます。

浮力=排除した流体の重量

菜種置換法を利用した体積の測定方法

基本的な原理は、アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法と同様ですが、液体を粒状の菜種(なたね)に置き換えて体積を測定する方法です。主に液体に沈ませることができないパンや菓子などに用いられ、菜種置換法のほかに、疑似流体としてビーズを用いる『ビーズ置換法』、砂を用いる『砂置換法』などの体積測定方法もあります。

レーザー体積計を利用した体積の測定方法

アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法は、高精度な体積測定ができる一方で、液体に濡れてしまうという問題があります。また、菜種置換法は濡れる心配がありませんが、柔らかい測定対象物の場合は潰れて誤差が生じる可能性があります。そのような場合に用いられるのが『レーザー体積計を利用した体積の測定方法』です。

レーザー体積計は、レーザー光を用いて距離を検証し、対象物の形状をスキャンし、非接触・短時間で体積測定を行います。また、測定結果を2Dや3Dで表示、さらに形状を数値化できるといった特徴があります。

音響式体積計を利用した体積の測定方法

非接触で体積や容積を測定する方法として、『音響式体積計を利用した体積の測定方法』も用いられています。主にエンジンのシリンダー容積などの測定に用いられ、スピーカーとマイクを使用し、音圧から体積や容積を測定します。具体的には、基準槽と測定槽の2重構造になった測定機を使用し、基準槽にマイクとスピーカーを設置。基準槽と測定槽の境界に設置したスピーカーから音を発することで、基準槽と測定槽の空気が振動し、その微小な音の振動は体積・容積に反比例します。この性質を利用して対象物の容積・体積を測定します。

従来の体積測定における課題

体積の測定方法には、『アルキメデスの原理を利用した体積の測定方法』『レーザー体積計を利用した体積の測定方法』『音響式体積計を利用した体積の測定方法』などがありますが、アルキメデスの原理を利用した体積測定であれば水に濡れてしまう、レーザー体積計を利用した体積測定であればレーザー光の届かない複雑形状の測定ができないといった課題がありました。

アルキメデスの原理を利用した体積測定の課題

アルキメデスの原理を利用した体積測定は、簡易的な設備で正確な体積測定ができます。一方で液体を使用するので測定対象物が濡れてしまったり、スポンジのように吸水する素材の測定ができなかったり、衛生面から食品に対応しなかったりと、測定対象が限定的でした。また、精密な体積測定では、液体の温度管理や気泡・水滴除去といった手間がかかります。そのほか、液体に水銀などを使用する場合は、取り扱いに注意が必要です。

菜種置換法を利用した体積測定の課題

菜種置換法は、液体を使用しないので濡れる心配がなく、液体同様に正確に体積測定が可能です。一方で柔らかい測定対象物は、つぶれて誤差が生じる恐れがあります。また、表面に油やクリームが付着しているものは測定できず、環境や測定者による誤差が生まれやすいといった課題がありました。

レーザー体積計を利用した体積測定の課題

レーザー体積計は、非接触で測定できるので、測定対象物が濡れたり、つぶれて変形したりといった心配がありません。さらに測定後に2D/3Dデータで表示でき、数値化しやすいといったメリットがります。ただし、レーザー光が届かない場所の測定が難しく、大きな測定対象物、また複雑な測定対象物に不向きでした。

非接触で体積測定を実現する課題解決方法

さまざまな体積測定の方法がありますが、上述のような課題がありました。それらの課題を解決し、非接触で体積測定を実現する方法がキーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』です。『VL-700シリーズ』は、ステージ上に置いた対象物をワンショット最速8秒で360°スキャンを実現し、高精度に3次元形状を測定可能。非接触でスキャンし、そのまま体積算出が可能です。
また、従来の測定方法であった濡れたり、変形したりといった心配もなく、複雑形状の体積測定も可能です。

メリット1:非接触360°スキャンで体積の測定ができる

キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』は、最速8秒で360°スキャンを実現し、3次元形状の高精度な測定が可能です。さらにスキャンしたデータから体積算出もできるので、これまで測定が難しかったワークにも対応し、なおかつ短時間で体積を知ることができます。また、複数のワークを一括でスキャンし、データを分割することもできるので、効率的な体積測定を実現します。

メリット2:柔らかいもので正確に体積測定ができる

クッキー断面積/体積測定

接触式の測定方法では、変形などが起こり、正確な体積測定できない場合もありました。たとえば、クッキーなどのやわらかいものは、正確な体積測定が困難でした。しかし、キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』は、高精度レンズによる非接触式スキャンなので、正確かつ衛生的に体積を測定できます。

メリット3:シリンダー内の容積なども測定できる

自動車用エンジンなどのシリンダー容積測定では、高い精度が求められますが、従来の方法では正確に容積を測定できないこともありました。キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』は、高い精度で寸法測定でき、そのデータからシリンダー容積なども算出可能です。また、大きなワークでもまるごと3D測定できるので、短時間で効率的な検査を実現します。

3Dスキャナを活用すれば、非接触かつ高精度・短時間で体積の測定が可能

従来の測定方法では、濡れてしまったり、変形してしまったり、課題も多かった体積測定。キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』を使えば、非接触で簡単かつ短時間、さらに高精度で体積測定を実現します。

  • ワンショット最速8秒で360°スキャンが可能なので、測定にかかる時間を大幅に短縮できます。
  • 非接触で体積を算出できるので、変形などの問題もなく、正確な測定結果が得られます。
  • サイズを問わず、小型のものか大型のものまで、ワークのサイズを問わずに体積測定ができます。
  • レーザー体積計では測定が難しい複雑な形状のワークにも対応します。

キーエンスの3Dスキャナ型 三次元測定機『VL-700シリーズ』ならワンショット最速8秒のスキャンで完了し、そのデータをもとに体積算出が可能です。複雑な形状や大型のワークにも対応し、1台でさまざまな体積測定が可能。体積測定の手間や時間を大幅に削減し、正確性の高い検査を実現します。