幾何公差(平行度)(1/3)
- 分類:
- 難易度の高い寸法測定

精密な加工・測定でも誤差ゼロは不可能、そこで公差が重要です
地球上にある物質は、温度が1℃上昇しただけでも膨張して寸法が変化するので、どれだけ精密に加工・測定をしても誤差をゼロにすることは不可能です。そこで重要なのが、設計段階で許容される誤差の範囲を明確にしておくことです。あらかじめ基準値に加え、許容される最小値と最大値の差を「公差」もしくは「許し代(ゆるししろ)」として指定します。
そんな公差は、寸法公差(普通公差)と幾何公差に分けることができます。今回は、幾何公差の中でも姿勢偏差にあたる「平行度」についてご説明していきます。
寸法公差(普通公差)と幾何公差の違い
寸法公差(普通公差)とは文字通り、基準寸法に対して許容される誤差を表したものです。そのことから、寸法を制御する公差とも言われています。たとえば基準寸法が10mmで許容される最小値が9.9mm、最大値が10.1mmであれば、「10±0.1」のように図面に記載します。
一方で幾何公差は、形状を制御する公差と言われます。たとえば、寸法公差を満たしたOリングがあったとしましょう。寸法公差は満たしていますが、円がゆがんで変形しているために組み立てられないということもあるかもしれません。そのような製品は、寸法公差を満たしていてもNG品になってしまうので、寸法に加えて“丸さ”や“ゆがみの少なさ”も指定する必要があります。このような形状の誤差範囲を指定する公差を幾何公差と呼んでいます。ちなみに“丸さ”や“ゆがみの少なさ”を指定する幾何公差を「真円度」と言います。
寸法公差 | 幾何公差 | |
---|---|---|
内容 | 大きさ・長さ・角度など2点測定による実寸法値 | 形体の寸法ではなく、その形体の理論的な形状または位置からの偏差 |
測定方法 | ノギスやマイクロメータなどで測定 | 定盤やブロックゲージ、真円度測定器、三次元測定機などで測定 |
一般的な加工精度であれば、幾何公差を指定しなくても満足いくレベルで仕上げられますが、高い精度を求めるのであれば図面で幾何公差を指定すべきでしょう。ただし、幾何公差を指定する場合には、「どのように加工するのか?」「どのように測定するのか?」を指定する必要があるので、製図に加えて加工や測定の知識が必要不可欠です。とはいえ、旋盤やフライス盤による加工、真円度測定器や三次元測定機を使った測り方など、基本的な知識があれば問題ありません。