パターンプロジェクション方式
ここではパターンプロジェクション方式の原理や実際のパターンプロジェクション方式の3次元カメラや照明装置+カメラのインライン3次元検査への活用、メリットなどについて解説します。
パターンプロジェクション方式の原理
パターンプロジェクション方式とは、複数の異なる方向から複数枚のストライプパターン(縞模様)を対象物に投光し、その反射光を画像センサ(CMOS)で受光。投光と反射光のパターンの変化を解析することで3次元画像を生成する方式を指します。
複数の方向からパターン投光することで、光の方向性・影による影響を回避し、死角なく3次元情報を取得することができます。
パターンプロジェクションの種類
キーエンスでは、この方式・原理を採用したパターンプロジェクション3次元カメラや、カメラと組み合わせて3次元検査を可能とするパターンプロジェクション照明をラインナップしています。
これらのヘッドまたは照明+カメラを画像処理システム(コントローラ)と組み合わせることで、高速かつ高精度なインライン3次元全数検査が実現します。
パターンプロジェクション3次元カメラ
パターンプロジェクション3次元カメラ「XTシリーズ」は、複数のプロジェクターと高機能カメラを搭載し、視野全域の高精度なインライン3次元検査を実現します。
複数の方向から投光するRGBプロジェクターは、方向性の影響を受けず、死角が発生しません。また、画角の影響を抑える高精度なレンズや広い視野・高分解能のCMOSにより、最大60.2×60.2mmの視野全域をわずか0.6秒、繰り返し精度1μmの精度で3次元検査することができます。
XTシリーズのメカニズムとメリット
- A
- 高速制御の「4投光RGBパターンプロジェクター」は、死角なく画像取得できるほか、RGB照明を個別に照射することで高解像度のカラー画像の取得を可能にします。
- B
- 高精度な「テレセントリックレンズ」の搭載により、高さ・深さのある対象物も実寸で正確に捉えます。
- C
- インライン用3次元カメラとして最高クラスである994万画素のCMOS撮像素子を搭載。3次元・2次元の画像を広視野・高精細に撮像します。
- D
- カメラ本体内の専用プロセッサで3D画像を生成しながら次の画像を撮像する並列処理を行うことで、検査タクト向上を実現します。
光沢や多重反射の影響を受けず安定測定
「両軸投光アルゴリズム」により方向が90°異なるプロジェクションパターンを投光・解析することで、光沢による多重反射の影響を抑えます。
また、従来は対象物の光沢などの影響で無効画素になっていました。XTシリーズでは、「多重反射抑制パターン」で投光パターンを変えて撮像することで、無効画素の発生を抑えることができます。
複数の検査を同時に実現するツール
「XTシリーズ」では、インライン3次元検査における使いやすさと検査精度を兼ね備えた、検査アルゴリズムと多彩な検査ツールを用意しています。その一部を写真のA〜Eで示し、下記で解説します。
- A
-
「3D寸法幾何」高さ・傾きなどの3次元計測に対応します。計測箇所を選ぶだけの操作で任意の箇所の距離や角度などを検出可能です。
- B
-
「差分(3Dブロブ)」3次元データで異物・異品種を検出します。良品との差分を実寸で判別することで精度良く検出可能です。
はんだボールを検出 - C
-
「プロファイル計測」3次元形状のあらゆる角度・位置でも任意の箇所の断面プロファイルを取得し、実寸を計測。コプラナリティと部品の実装高さの同時計測が可能です。
- D
-
「3Dブロブ」任意の面の断面積や塊の体積を計測します。従来の画像処理での画素数での判別とは異なり、実寸で数値を取得します。
- E
-
「2Dカラー検査」従来通りの2次元カラー画像による、OCR(文字認識)や傷、エッジなどの検査を高精細に行うことができます。
XTシリーズは、ほかにも高度なインライン3次元検査を簡単に行うための多彩なツールやアルゴリズム、機能・設定を備えています。詳しくは事例・カタログをご覧ください。
パターンプロジェクション照明
パターンプロジェクターを搭載した照明ユニットです。カメラ、画像処理システムと組み合わせることで、広視野に対して高精度なインライン3次元検査が可能です。3D撮像モードと使いやすいインターフェースにより、さまざまなインライン3次元検査をサポートします。
さらに、2次元検査用の照明も搭載しているため、3次元・2次元検査を同時に実施することができます。
パターンプロジェクション照明のメカニズムとメリット
パターンプロジェクション照明は、「3次元検査照明」に加え、外周部分に「2次元検査照明」を搭載し、2次元・3次元検査を同時実施できるため、検査の合理化が可能です。
3次元検査照明
専用点灯制御ICにより、複数枚のストライプパターンを高速投影し、対応カメラはワークからの反射光をリアルタイムで受光・解析し、死角のない3次元検査を実現します。
2次元検査照明
LumiTrax™モードに対応し、異なる方向から投光した複数枚の画像を解析することで、形状(凹凸)とテクスチャ(模様)の2次元画像を生成します。
選択可能な専用高機能カメラ
超高速撮像を可能とするCMOSと専用制御回路を搭載した専用カメラは、パターンプロジェクション照明使用時、1回のトリガーで最大212回の撮像が可能です。また、専用カメラは複数から選定できるため、用途に適ったセットアップを導入することができます。
「3D撮像モード」で多様な3次元検査を実現
「3D判別」3ステップで3次元形状を比較
登録した高さ情報を含む3D形状と比較し、差分を検出するツールです。計測エリア内の全域で形状比較が可能なため、品種判別や有無検査など複数の検査項目を同時に実施可能です。
- 左
- 登録3D形状
- 中央
- 入力3D形状
- 右
- 差分検出
「輪郭判別」任意の高さの輪郭一致度を判定
任意の高さの断面における輪郭情報を登録し、輪郭比較します。輪郭の一致・不一致部分を判別し、合致した箇所の割合(一致度)を算出してOK/NG判定が可能です。2次元画像の面積では不可能だった品種判別が実現します。
「断面積判別」任意の高さの断面積で正確に検査
検査対象物の任意の高さの断面積を計測します。高さ情報を用いるため、背景や対象物の色・表面状態の影響を受けることなく検査が可能です。
ほかにも段差を判別する「プロファイル判別」やピーク高さを算出する「高さ判別」など、さまざまなツールを用いることで3次元情報を活用した検査をスムーズに実行できます。詳しくはカタログをご覧ください。
凹凸や模様を確実に抽出する「LumiTrax™モード」
異なる方向から2次元検査照明を点灯させて撮像した複数枚の画像を分析し、形状(凹凸)とテクスチャ(模様)の画像を生成するモードです。照明・カメラと検査アルゴリズムにより、2次元画像検査においても従来の課題を解決します。
形状(凹凸)情報の抽出
同色・ノイズ・柄・光沢などワークの表面状態に影響されず、形状(凹凸)情報のみを抽出します。
テクスチャ(模様)情報の抽出
ハレーションや周囲環境(外乱光)を抑えて、テクスチャ(模様)情報のみを抽出します。