「デザインレビュー(DR)」の理想的な運用方法
多くの企業でデザインレビュー(DR)が実施されていますが、忙しい専門家が出席できなかったり、設計者の一方的な説明で終ってしまったり、活発的な議論がなされず、形式的な会議になっているという声を聞きます。しかし、デザインレビュー(DR)は次の工程に不良を残さない、設計プロセスにおけるトラブルを防ぐ防波堤のような存在です。こちらではデザインレビュー(DR)の理想的な運用方法と、トラブルを防止するポイントを紹介します。
4タイプのデザインレビュー(DR)
デザインレビュー(DR)と言っても人によって解釈は異なりますが、一般的に以下の4種類に分類できます。商品設計におけるデザインレビューは、タイプ2およびタイプ3の意味合いが強くなります。
タイプ1 発注者から受ける審査 |
製品やシステムの受注者が主催する審査会議です。会議では、製品やシステムの発注者が受注仕様書をもとに製品設計や開発段階の問題点とその対策などを確認します。 |
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タイプ2 開発プロセスの移行審査・承認 |
商品企画、製品企画、製品設計、生産準備などの各設計フェーズの最終段階で、次の段階に移行してよいか確認する審査会議です。基本的には、営業・設計・生産技術・品質保証・購買・製造など、商品に関わるすべての部署が参加し、機能・性能・コスト・法令などの要求仕様を満たし、信頼性・安全性などの問題はないかを確認します。 |
タイプ3 計画の評価と問題点抽出を行う組織的活動 |
商品企画から生産、保守・サービスまで含め、各設計段階の区切りのよいタイミングで専門家を集め、設計内容の問題抽出と対策可否検討を行う会議です。タイプ2のデザインレビュー(DR)は承認という要素が強いですが、タイプ3のデザインレビュー(DR)は品質・安全性・操作性・コストなどの問題点を洗い出す審査要素が強くなります。「フォーマルデザインレビュー(FDR)」とも呼ばれます |
タイプ4 部内で行われる技術的討論 |
タイプ1~3は、関連部署や専門家を交えた会議ですが、タイプ4はチームや部内で完結する技術討論会です。開発計画に公式で組み込まれるものではなく、専門家を招集する義務もありませんが、早期に問題点を抽出して対策を打つためには必要不可欠な少人数で行う会議です。少人数で必要に応じて実施するものなので、正式にデザインレビュー(DR)に含めないこともありますが、こちらではデザインレビュー(DR)の一種として取り扱います。また、「インフォーマルデザインレビュー(IDR)」と呼ぶこともあります。 |
デザインレビュー(DR)の頻度と階層化
商品設計におけるデザインレビュー(DR)は、一般的に「企画」「構想設計」「詳細設計」「試作・評価」の各段階で行われます。その限られた時間で品質・安全性・操作性・コスト・生産性・販売後のサービスまで含めて検討することは実質不可能です。理由としては単純で審査する項目が多すぎるからです。
また、確実に審査するために回数を増やすにも、毎回各部門担当者や専門家を招集することも困難です。そこで議論のポイントを分け、早い段階かつ必要な参加者のよるデザインレビュー(DR)の実施が有効です。先程説明した4タイプのデザインレビューの中で「タイプ4 部内で行われる技術的討論」に該当します。
設計者は、商品企画や構想設計、出図などの各フェーズの最後にチーム内・部内で技術討論会を実施します。さらに必要に応じて担当部署の責任者や専門家を招集し、設計を中心にした具体的な課題を抽出します。議論のポイントを絞って短時間の技術討論会を増やすことで、設計段階の見落としも防げます。
上記はあくまで一例ですが、社内で規定されている通常のデザインレビュー(DR)に加え、チームや部内でのデザインレビュー(DR)を実施。デザインレビューを階層化し、設計レベルでの技術討論の頻度を増やすことで品質向上につながります。
また、階層ごとに参加者や審議内容を細かく分けることで、商品化認定に位置づけられている会議で設計の議論になったり、経営層が設計詳細に対して指摘したりといったズレを防止できます。
参加者の役割を明確にする
デザインレビュー(DR)に参加するレビュアーは、その分野に精通した専門家であることが大前提です。専門家不在では議論ができず、それが形式的なデザインレビュー(DR)の原因にもなっています。そこでデザインレビュー(DR)は、必ず専門家を招集し、難しい場合はスケジュールを変更するなどの対処が必要です。
また、デザインレビューで設計者が最も困ることが、その場の思いつきによる指摘です。レビュアーには、その場限りの指摘にならないように責任を持たせることが大切です。例えば、「指摘したレビュアーは、問題が解決するまで責任を持つ」など、思いつきで指摘しないようにルール化することも効果的です。レビュアーに責任を持たせることで、設計者だけの責任ではなくなり、思いつきの指摘も減り、効率的に品質向上につながります。ただし、ルール化する際には、レビュアーが指摘をためらわないようにする工夫も必要です。
デザインレビュー(DR)の質を高める試作
デザインレビュー(DR)は、チームや部内で行うものもあれば、関連部署全体、経営層が参加するものまでさまざまです。その際に意思疎通を図り、スムーズに進行するために試作品の活用が有効です。以前であれば試作には一律で手間と予算がかかりましたが、3Dプリンタを活用することで手軽に造形モデルを作成することも可能になりました。完成品に近い試作を時間をかけて準備する前に、簡単な構造や干渉問題などを確認するための造形モデルを3Dプリンタで用意し、3D CADに詳しくない参加者との意思疎通はもちろん、チーム・部署内での検討時にもより深い議論ができるようになります。3D プリンタの活用については、以下のページも併せてご覧ください。