試作方法の違いを理解して設計する
量産の方法と同様試作にも機械加工や簡易金型(注型)、それに加え3Dプリンタなどの方法があります。一般的に試作は、数個の生産のみなので3Dプリンタや簡易型(注型)を使用しますが、稀に機械加工で製作する場合もあります。こちらでは、それぞれの方法の違いを中心に説明します。
簡易型(注型)・ 3Dプリンタ・機械加工の特長
試作に用いられる簡易型(注型)・3Dプリンタ・機械加工の特長について説明します。
簡易型(注型)
基本的な原理は、量産時に使用する金型(本型)と同じです。耐久性が本型に比べて劣る分、コストを抑えて作成可能です。一般的には、シリコンゴムなどを使用します。簡易型(注型)を含む、型についての違いは以下のページを併せてご覧ください。
簡易型(注型)試作の特長
量産時に使用する金型(本型)よりも低コストで作成可能です。マスターモデルがあれば簡単に型を作ることができ、内部のボスやリブなどの成形もできるので、強度確認や性能評価をしたい場合の試作に最適です。
3Dプリンタ
3Dプリンタは、3D CADのデータをベースに立体造形できる装置の総称です。もとは「高速(Rapid)」に「試作(Prototyping)」をするために生まれ、最近では低価格化が進み広く普及するようになりました。その特徴は、従来であれば1週間以上かかっていた試作を最短1日でできるスピードと、3D CADのデータがあればすぐに造形モデルを出力できる手軽さです。3Dプリンタを使った試作については、以下のページで詳しく解説しているので併せてご覧ください。
3Dプリンタ試作の特長
3Dプリンタによる試作は、使う材料にもよりますが、透明な樹脂なら中身が見やすく、検証しやすいというメリットがあります。機械加工や簡易型(注型)に比べて造形モデルを作るスピードが速いので、複数のデザイン案を図面ではなく実物で確認できることも大きな特長です。また、3Dプリンタで作った造形モデルをマスターに使い、簡易型(注型)を作って数個から十数個の試作品を量産することもできます。
3Dプリンタによる試作で確認できることは、以下のページで解説しているので併せてご覧ください。
キーエンスのインクジェット方式3Dプリンタ「アジリスタ」のカタログにも詳しく掲載していますので、ぜひご覧ください。
機械加工
「量産方法を理解して設計する」でも説明していますが、 「切削加工」「塑性(そせい)加工」「射出成形」などの加工を総称して「機械加工」と呼びます。複雑な形状の試作で機械加工が用いられることは少ないですが、最終製品に近い状態での確認が必要な場合などに採用されます。
試作方法の違い比較表
簡易型(注型) | 3Dプリンタ | 機械加工 | |
---|---|---|---|
加工に必要なデータ | 2D図面または3Dデータもしくはマスターモデル | 3Dデータ | 2D図面または3Dデータ |
加工できる材料 | プラスチック、ゴム など | 金属、非鉄金属、プラスチック、石膏、ゴムなど3Dプリンタ専用の材料 | 金属、非鉄金属、プラスチック、石膏、ゴム、など |
納期 | マスターモデルがあればすぐに作成可能 | 最短1日以内 | サイズにもよるが1週間以上 |
製作コスト | 外注加工費(材料費+加工費+人件費など) | 材料費のみ(自社に3Dプリンタがある場合) | 外注加工費(材料費+加工費+人件費など) |
機械的性質/熱的性質など | 機械的性質・熱的性質は材料に依存 | 強度は弱い熱的性質は材料に依存 | 自由 |
寸法精度 | マスターモデルおよび型の材質などに依存 | 造形方式によって異なるが数十ミクロンから数百ミクロン | 精密加工で数ミクロンから数十ミクロン |
要求レベルに応じて試作方法を選択
試作の方法は、加工できる形状や寸法精度、使える材料などに違いがあり、試作品の要求によって使い分けることが大切です。量産品と同等の機械的性質、熱的性質、寸法精度が必要な場合は、簡易型(注型)や機械加工が選択肢になります。
3Dプリンタは、精度や材料に制限がありますが、複雑な形状でも手軽に造形できることがメリットです。強度や耐久性の検討ではなく、デザイン性・組付性・操作性などを検証する場合には3Dプリンタによる造形モデルが有効です。
高精度な3Dプリンタで試作の効果をアップ
試作には、さまざまな方法がありますが、それぞれ一長一短です。そこで注目を集めているのが3Dプリンタです。キーエンスの3Dプリンタ「アジリスタ」は、15μmという積層ピッチを誇り、商品開発における細部の検証にも使用できる精度を実現しています。
機械加工は図面化が面倒で複雑な形状だと手間がかかり、金型成型は準備する時間とコストがかかりました。キーエンスの3Dプリンタは、3D CADデータから造形できるので手間がかからず、透明度の高い材料を使用しているので内部の検証も可能です。試作のスピードアップのも効果的です。次のページからは試作におけるスピードと精度の重要性説明します。