筐体の材料

筐体に使われる材料は、大きく「金属」「非金属」の2種類です。さらに金属は「鉄鋼」と「非鉄金属」、非金属は「無機化学物」「有機化学物」「複合材料」に分けられます。こちらでは、筐体設計に用いられる材料の種類や特性について解説します。

材料選定の基礎知識

筐体に使われる材料の説明に入る前に、材料選定で最低限必要な基礎知識について説明します。筐体は、さまざまな機械が収められ、求められるスペックや使用環境も千差万別です。基盤や液晶などの電子部品を収める筐体、エンジンやモータを収める筐体、工場のような過酷な環境で使用される筐体など、使用用途に最適な筐体を設計するには材料特性を正しく理解することが大切です。その際に以下の項目を見比べ、材料選定を行います。

機械的特性 強度・剛性・弾性・靭性・重量・非強度・非剛性・摩耗性・寿命 など
電気的特性 電気伝導性・帯電性・磁性 など
熱特性 耐熱性・熱伝導性・断熱性・体積膨張性・変態点・寸法安定性(線膨張係数) など
環境特性 耐熱性・耐寒性・耐腐食性・粉塵/有害物質性・リサイクル性 など
加工特性 切削性・鋳造性・鍛造性・溶接性・溶着性・表面処理性(めっき・塗装) など
コスト 材料の値段・加工費・品質安定性・入手性 など
その他 経年特性・磁化特性・反射/透過性・色 など

筐体に使われる材料の基本的な分類

筐体に使われている材料は以下のようになります。大きく分けると金属材料と非金属材料の2種類です。非金属材料は、樹脂を中心とした「有機材料」とセラミックが該当する「無機材料」に分類されます。さらに金属・有機材料・無機材料を組み合わせた複合材料というものも使われています。

筐体に使われる材料の基本的な分類
A
金属素材
B
非金属素材
a
金属(Metals)
b
有機材料(Plastics)
c
無機材料(Ceramics)
d
複合材料(Composites)

金属

金属

金属材料は、「鉄鋼」と「非鉄金属」の2種類に分けられます。鉄鋼は、鉄や鋼、ステンレスなどの材料を指します。非鉄金属は、鉄鋼および含鉄合金を除いたアルミニウムやニッケル、チタン、銅とそれらの合金を指します。鉄鋼と非鉄金属の種類と特徴について以下にまとめています。金属材料の加工方法については、以下のページをご覧ください。

金属材料
鉄鋼 非鉄金属
鋼(スチール)、工具鋼、炭素鋼、含鉄合金、ステンレス など アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、銅、これら金属を含む合金 など
鉄鋼の特徴は、硬く、割れにくいことです。最も一般的な金属材料で、熱処理によって強さ、硬さ、粘り、耐衝撃性、耐摩耗性、耐腐食性、被削性、冷間加工性などの性質を向上することができます。サビに弱く、重いことがデメリットです。ただし、添加する物質によってステンレスのように錆びにくい鉄鋼を作ることもできます。鉄鋼は、安価なのでコストを抑えたい場合に有効な材料です。 加工性や入手性が良く、耐熱性・耐腐食性に優れているので、機械設計で最も多く使われている材料が非鉄金属です。鉄鋼に比べて軽いので、高強度・軽量な筐体を作るには欠かせない素材です。安価で軽量なためアルミニウムが一般的ですが、より軽量・高剛性なマグネシウムやチタン、それらの金属を含む合金なども利用されています。

金属材料の加工に欠かせない「熱処理」については、こちらのサイトで詳しく学ぶことができます。

非金属

非金属

非金属材料は、「無機化学物」「有機化学物」「複合材料」の3つに分類されます。無機化学物はセラミック、有機化学物はプラスチックやゴムなどの樹脂となります。また、金属や無機化学物、有機化学物を組み合わせた複合材料もよく利用されます。樹脂材料の加工方法については、以下のページをご覧ください。

非金属材料
無機化学物 有機化学物 複合材料
セラミック プラスチック(熱可塑性樹脂/熱硬化性樹脂)、ゴム(天然ゴム/合成ゴム) 繊維強化プラスチック(FRP)、繊維強化金属(FRM)、繊維強化セラミック(FRC)、金属基複合材(MMC)など
科学的に安定したセラミックは、腐食や耐薬品性に優れています。また、非常に硬く、熱に強い特性がありますが、割れやすいという問題があります。そのほか電気や熱の伝導特性、加工性も他の素材に比べると悪くなります。 樹脂には、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂などがあり、大別すると整形後に再加熱することで変形する「熱可塑性樹脂」と、加熱しても変形しない「熱硬化性樹脂」の2種類に分けられます。金属やセラミックに比べて強度や耐久性は望めませんが、軽量で絶縁性に優れていることが特徴です。加工性が良く、比較的安価に量産できることもメリットです。 金属やプラスチック、セラミックなど、2種類以上の材料を組み合わせることで強化した複合材料です。一般的なものでは、ガラス繊維や炭素繊維と樹脂を組み合わせた「繊維強化プラスチック(FRP)」「繊維強化セラミック(FRC)」などがあります。材料単独では得られない機能・性能を持たせた強化材料となります。

「樹脂成形」の基礎から成形トラブル対策まで学べる学習サイトはこちら。

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