CHAPTER 4

切削工具

主に金属などの材料を削って加工する切削加工において、その刃先となる工具はどのような素材でできているのでしょうか。ここでは、旋盤に使用される工具の一例として、バイトとチャック装置について解説するとともに、工具自体の材料について紹介します。

バイト

バイトは、旋盤などで加工物の切削に使用される刃物のことです。種類は多岐にわたりますが、基本としては外径の切削に用いる「片刃バイト」、溝削りなどに用いる「突切りバイト」、穴をつくるための「中ぐりバイト」が頻繁に用いられます。
なお、現在は刃先の研磨などの手間を省くため、刃先が交換できる「スローアウェイ」のバイトが普及しています。これはバイトホルダーと刃先のチップに分かれていて、カッターナイフの刃のようにチップの切れ味が落ちると交換できるタイプです。

刃先のチップ(画像下)と
バイトホルダーに装着した状態
刃先のチップ(画像下)とバイトホルダーに装着した状態

チャック装置

チャック装置(もしくはチャック)は、旋盤やボール盤の「つかみ」部分を指します。旋盤であれば、加工物を固定する装置であり、ボール盤ではドリルの刃を固定する部分です。
チャック装置には機械構造で締め付ける「メカニカルチャック」や、磁石で固定する「マグネットチャック」、真空状態で固定する「真空チャック」など、機構や用途の違いによってさまざまな固定方法があります。メカニカルチャックでは、三つの爪で固定するタイプと四つの爪で固定するタイプがあります。
旋盤やボール盤で精度の高い加工を行うには、加工物や工具を確実に固定し、大きな負荷がかかっても微動だにしないチャック装置の存在が欠かせません。

加工物を固定する爪(3か所の爪で締め付けて固定)
加工物を固定する爪(3箇所の爪で締め付けて固定)
三つ爪タイプのチャック

切削工具の材料

切削工具の材料は工具鋼とも呼ばれ、強度と耐摩耗、耐衝撃、耐高温などに優れている点が特徴です。この中で通常、普通鋼と呼ばれる炭素鋼は鉄と炭素の合金でできています。現在では、清浄度が高く機械的性質や熱処理特性が安定した工具鋼が普及しています。
工具鋼の代表的なものとしては、「高速度鋼」および「超硬合金」を挙げることができます。高速度鋼は炭素鋼にタングステンやクロムなどを加えた合金です。用途に応じて刃先の形を自由にしやすいことから、切削加工で広く用いられています。ハイスピード鋼の名称が略されて、製造の現場では「ハイス鋼」と呼ばれています。一方、超硬合金は炭化タングステンなどを用いたもので、難加工材や金型などの加工に用いられます。

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