塗布による接着

接着とは、「接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態」を指します。ここでは、接着の仕組みや接着剤の種類、また機能性接着剤について説明します。

接着のメカニズム

接着のメカニズムは、大きく下記の3つに分類することができます。

機械的結合

材料表面の孔や凹凸に接着剤が入り込み、硬化することにより接着します。この効果は「投錨効果(アンカー効果、ファスナー効果)」と呼ばれています。

機械的結合イメージ
  1. 被着材
  2. 接着剤

物理的相互作用

接着剤の基本的な原理とされており、 あらゆる「分子の間の引き合う力」であるファン・デル・ワールス力(分子間力)による接着を指します。 この力は、「二次結合力」とも呼ばれます。

物理的相互作用イメージ
  1. 被着材
  2. 接着剤

化学的相互作用

被着材と接着剤の化学的な相互作用により、「原子どうしが化学結合」することで、比較的強い接着力が得られます。「一次結合力」とも呼ばれ、共有結合や水素結合などが挙げられます。

化学的相互作用イメージ
  1. 被着材
  2. 接着剤
  3. 化学結合

上記の分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上記のとおりとは限りません。

接着剤の種類と機能

接着剤の分類

塗布による接着は、接着剤が被着体を「ぬらし(濡らし)」、それが「固化する」ことで、ものどうしが結合することです。接着剤には液体状のもの、または固体を熱で溶かし、それが固化することで接着するものなどさまざまなタイプがあります。大きく下記の3つのタイプに分類することができます。

一液・二液系(ウレタン/エポキシなど)
液体の接着剤で、「一液系」は、空気中の水分や熱で硬化します。「二液系」は、主剤と硬化剤といった2種類の液剤を混合(二液混合)することで硬化します。一般的にホットメルト系と比べて、接着強度が高いです。
ホットメルト系
固体(ブロック状や粒状)の接着剤を熱で溶かして使用します。硬化時間が短く、硬化条件が少ないことが特徴です。種類として、ポリエステル、オレフィン、ゴム、EVA、PA系などがあります。
反応型ホットメルト系
一般的なホットメルトに耐熱性を持たせた接着剤です。大気中の水分に反応して硬化します。溶融温度、塗布温度ともに低く、さまざまな被着体に用いられます。

上記の分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上記のとおりとは限りません。

機能をもつ接着剤

物体どうしを接合することが接着剤の基本性能ですが、用途に応じてさまざまな硬化方法や接着速度、また接着層に導電性や耐久性、透明度、弾性をもたせるなど、多彩な機能や性質をもった「機能性接着剤」が用いられています。

硬化性に機能をもつ接着剤の例
種類 機能
瞬間硬化接着剤 高速硬化する接着剤(5秒以下で高速硬化するものなど)
接触硬化接着剤 片側にA剤、もう一方にB剤を塗布し、AとBの接触で硬化。2剤の混合工程が不要
UV硬化接着剤 光透過性材料の接着で、UV(紫外線)を照射すると瞬時に硬化
嫌気硬化接着剤 ネジのすき間などに浸透させて、空気(酸素)が遮断されることで硬化
硬化物が性質・機能をもつ接着剤の例
性質 機能
透明性 レンズのガラス屈折率に近い透明性をもつ
導電性 電磁波を吸収する機能を持ち、電磁波障害を避ける
耐熱性 高温に耐える(アルミナ、ジルコニアなどの無機系)
弾性 伸び率が極めて高い。熱膨張係数の異なる異種材料どうしの接着や耐久接着に使用
剛性 抵抗溶接などの「点」の接合と、接着剤による「面」の接合を併用することで接合部の剛性を高める(ウェルドボンド)

その他、シール性、絶縁性、難燃性、伝熱性、発泡性など、多種多様な性質や機能をもった接着剤があります。

広がる接着剤の用途

接着剤や塗布装置の多様化・高機能化と同様に、接着接合の用途は、さまざまな分野で広がりをみせています。ディスプレイ(LCD、有機EL)やスマートデバイス(スマートフォン、タブレット)などの薄型化による接着剤の極微少量塗布といった精密な接着用途のほか、自動車や航空宇宙分野など、軽量化・高剛性化を目的とした異素材の強力接着においてニーズが高まっているのが「構造用接着剤」です。

構造用接着剤とは

一般的に、強度が求められる接合に特化した接着剤です。接着剤の塗布により「面」での接合が可能であるため、軽量かつ強い接合が得られます。また、スポット溶接やボルト、リベットなど「点」の接合と組み合わせることで、より剛性の高い接合を得ることができます。代表的なものとしては、自動車の車体組立工程で、スポット溶接と併用される「ウェルドボンド」などがあります。

構造用接着剤の用途

欧米では、半世紀以上前から航空機やヘリコプターに始まり、超音速ジェット飛行機、アポロ宇宙船、スペースシャトルなど航空宇宙分野でも活用されてきました。
現在では、環境負荷軽減や生産性向上を目的に、自動車の車体をはじめ複合材料(マルチマテリアル)化にともなう異材接着のニーズが高まっています。そこで、軽量で強度が高い「構造用接着剤」が、宇宙開発のような高度・先端分野のみならず、自動車といった量産分野においても注目されるようになりました。

構造用接着剤の異材接着用途例
自動車関連
要件 車体の軽量・高剛性化のための複合材料接合
材料 アルミ製シャシ+CFRP製車室
接合方法 ウレタン系構造用接着剤+少数のボルト
各種モータの磁石固定(FA用サーボモータなど)
要件 耐高熱・高強度な異材料接合
材料 Nd(ネオジム)磁石+積層鉄心
接合方法 SGA接着剤(反応系アクリル系接着剤)
太陽電池パネル(人工衛星用)
要件 耐ヒートサイクル(-150°C~+200°C)、耐放射線性、透明性など
材料 太陽電池セル+カバーガラス
接合方法 シリコーン系接着剤

ものづくりの塗布 トップへ戻る