自動車(部品製造)における塗布
自動運転技術やEV(電気自動車)、HV(ハイブリッドカー)、コネクテッドカーなど自動車の進化とともに、構成部品も多様化・多品種化します。 エネルギー、動力・駆動、排気・冷却、ECU、センサ類・コネクタ類、通信・制御システム、インターフェイス、二次電池(バッテリー)など、さまざまな部品の高度化によって先進的な技術が実現します。また、軽量化や生産効率への要求に応えるため、「塗布」による接着やコーティングが用いられています。
自動車(部品製造)における「接着」
自動車部品の製造における接着目的の塗布では、組立・組付工程における各種接着剤塗布のほか、オイルや水の漏れを防ぐ液体ガスケット、シール材(シーラー・プライマー)の塗布が挙げられます。
- 接着剤(瞬間・嫌気性・UV硬化型など)塗布
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- コンビネーションランプ、ヘッドライト、サイドミラー
- ラジエーターホース、ホイールカバー、ショックアブソーバ
- 内装(座席シート・車室・天井などのファブリック、ドア内側の部品など)
- センサ類(走行制御システム用センサ、エアバッグセンサ)
- 車室内機器(ダッシュボードの計器やパーツ、ナビゲーションやAVシステムなど)
- 液体ガスケット・シール材(CIPG、FIPGなど)の塗布
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- エンジン部品(シリンダヘッド、シリンダブロック、オイルパンなど)
- ミッションカバー、マニホールド、トリム部品など
- ECU(電気制御ユニット)のパッケージングなど
トピック:品質に直結する、シール材(シーラー・プライマー)の塗布
従来のOリングやパッキンといった固形のシーリング部品に替わり、ディスペンサロボットによる液体ガスケット・シール材(シーラー・プライマー)の自動塗布を用いることで、生産効率向上とコスト削減が実現します。
一方で、高粘度なシール材の自動塗布では、連続した高アスペクト比のビード状に、シール材を安定的に塗布する必要があります。このビードに欠けなどの形状不良があった場合、オイルや水漏れの原因となり、製品の品質劣化や安全性低下の原因にもつながります。
そこで、ディスペンサに追随したシール材塗布直後の形状検査が、不良流出防止に最も有効な手段といえます。
トピック:塗布で防止する、ネジの緩み
自動車をはじめ乗り物に使用するネジは、特性上、振動が繰り返し与えられることで緩みが生じます。しかし、特殊な接着剤をネジに塗布して接合・固着させることで、緩みを防止する方法が、エンジン部品の封止やエアバッグを固定するネジなどに用いられます。
ネジ用の接着剤には、弾性(制振性)、止水性を持つもの、緩めたり締め直すことができる樹脂融着タイプ、または、超微小なカプセルを含有させ締めることによって固着させるタイプなど、目的に応じてさまざまな種類があります。
ネジへの緩み防止接着剤は、刷毛で塗られる場合もありますが、ディスペンサを用いることで、大量のネジに対し、定量の液剤を安定的に効率良く塗布することができます。また、刷毛から抜けた毛がネジの溝に付着するといった不良が生じません。
なお、ネジに焼付防止剤などを塗布(機能付与)する場合も、同様の要領で自動化することができます。
自動車(部品製造)における「機能付与・表面処理」
自動車部品の製造工程における機能付与・表面処理では、目的によって乾式(ドライコーティング)や湿式(ウェットコーティング)が用いられます。
乾式ではエンジン部品の摩擦箇所表面へのDLC(Diamond Like Carbon)コーティングなどが注目されています。湿式では、液剤の塗布を行います。ほかにも、摩擦熱や圧力付加による不具合を抑制する各種グリス、部品の表面を保護するコーティング剤など液剤や適用箇所は多種多様です。
- 各種グリス塗布
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- エンジン周辺:電装部品・補機軸受、プーリ内蔵ワンウェイクラッチ、エンジンスタータ、電動パワーステアリング、ワイヤーハーネスなど
- 足回り・駆動系:ホイール軸受(ハブユニット軸受)、ハブキャップ、等速ジョイント、プロペラシャフト、ボールジョイントなど
- 各種モータ:ワイパー、ドアミラー、パワーシート、電動アンテナ、ABS(アンチロックブレーキシステム)、EGR(排気ガス再循環装置)、電動スロットルなど
- コントロール用ケーブル:アクセル、パーキングブレーキ、ウィンドウレギュレータなど
- その他:シャシ部品、ドア部品、ECU・IGBTモジュール、シート部品、インパネ(エアコンやボタン類などの摺動部)など
- 塗布による各種コーティング
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- ハードコート:ヘッドライト、コンビネーションランプ、ポリカーボネート(PC)樹脂窓(乾式と併用される場合あり)など
- 防湿コーティング:ECU基板、モータ基板など
- その他:金属部品の防錆、金属・樹脂部品の止水コーティング、ガラスの飛散防止・撥水コーティング、塗装・メッキ処理など
トピック:高度化する狭小部へのグリス自動塗布
自動車部品の塗布工程において、アクセスし難い複雑な形状や狭小部に対しては、自動塗布が困難とされてきました。
しかし、近年ではディスペンサロボットの3次元モーションと斜めからの飛滴による非接触式(ジェット式)塗布を組み合わせた、高度な自動塗布が注目されています。例えば、各種ギアボックスやドアロック、パワーウィンドウ、シートレールなど、複雑な形状や入り組んだ箇所へのグリス塗布の自動化が可能です。
また、ECU基板やモータ基板などの防湿コーティングにおいては、非接触式ディスペンサなどの自動コーティング装置の制御によって、マスキングすることなく必要なエリアのみに対して、精密かつスピーディな自動塗布が可能となります。