面粗さ(ISO 25178)の用語

ISO 25178表面性状(面粗さ測定)で使われている用語について説明します。

原表面 測定装置を用いて測定したXY平面方向の計測データにより構成される表面を表します。主に、高さデータが処理対象になります。
基礎表面(primary surface) 原表面に対してS-フィルターを適用して得られる表面を表します。
表面フィルター(surface filter) 表面に対して適用するフィルター処理を表します。
S-フィルター(S-filter) 小さいスケールの成分を取り除くフィルター(ローパスフィルター)を表します。JIS B 0601-2001のカットオフ値λsに相当するフィルターです。触針式表面粗さ計の場合は、先端形状に依存するノイズを除去します。
L-フィルター(L-filter) 大きいスケールの成分を取り除くフィルター(ハイパスフィルター)を表します。うねりなどを除去して粗さ成分だけを抽出するフィルターです。JIS B 0633-2001のカットオフ値λcに相当するフィルターです。
F-オペレーション(F-operation) 基礎表面から形状を除去するための処理を表します。傾き補正に相当する形状除去のためのフィルターです。
S-F表面(S-F surface) 基礎表面に、F-オペレーションを適用した表面を表します。
S-L表面(S-L surface) S-F表面にさらにL-フィルターを適用した表面を表します。
計測表面(scale-limited surface)

S-F表面またはS-L表面を表します。線粗さ計測での粗さ曲線、うねり曲線に相当します。

基準表面(reference surface) 計測表面に対応する基準となる表面で、ISO 25178表面性状機能では評価領域の平均高さの平面を表します。
評価領域(evaluation area) 計測表面のうち、評価対象とする部分を表します。
定義領域(definition area) 評価領域のうち、パラメータ定義に使われる部分を表します。
高さ(height) 計測表面における各点の基準表面からの距離を表します。基準面より低い点は負の値となります。
自己相関関数 表面粗さの平面方向の周期性を評価するのに用いられます。
角スペクトル(グラフ) 表面のどの方向に筋目(金属の場合はヘアラインという)があるか判断するためのグラフを指します。
山頂点(peak) 表面の中で、周囲の隣接する点よりも高さの高い点のことを表します。
山(hill) 最大登り傾斜の経路が頂点へと繋がる、頂点周囲の領域を表します。
谷底線(合水線・凹線)(course line) 隣接する山同士を分割する曲線を表します。
谷底点(pit) 表面の中で、周囲の隣接する点よりも高さの低い点のことを表します。
谷(dale) 最大下り傾斜の経路が谷底点へと繋がる、谷底点周囲の領域を表します。
稜線(分水線・凸線)(ridge line) 隣接する谷同士を分割する曲線を表します。
鞍点(saddle point) 稜線と谷底線が一点で交差する点を表します。
山領域高さ(local peak height) 山頂点と、その山頂点と稜線で繋がる鞍点のうち最も高さが近い点との高さの差です。
谷領域深さ(local pit height) 谷底点と、その谷底線と谷底線で繋がる鞍点のうち最も高さが近い点との高さの差です。

領域分割(segmentation)

watershedアルゴリズム(watershed algorithm)

形態パラメータの算出に用いる領域を分割するために、watershedアルゴリズムを用います。表面に対して水を降らせると、水は表面の形状に沿って谷底点に到達します。その後も継続して水を降らせ続けると、異なる谷底点から溜まっていった水面が接する点が現れます。この点の集合が谷領域を分割する稜線となります。 山領域の場合も天地を入れ替えて考えることにより同様に分割することができます。

Wolfプルーニング(Wolf pruning)

山頂点や谷底点は隣接する領域よりわずかでも高いあるいは低い点であればよいため、微細な凹凸のある表面には膨大な山頂点、谷底点が存在することになりあます。こうした表面に対してwatershedアルゴリズムを適用すると、非常に細かい山領域と谷領域に分割されてしまいます。この過剰分割(over-segmentation) を抑制するために、山領域高さ、もしくは谷領域深さが、ある閾値以下の領域領域を取り除く処理がWolfプルーニングです。閾値は表面の最大高さ(Sz)に対する割合で与えられ、デフォルトの値は5%です。

  • 領域分割(segmentation)
  • 領域分割(segmentation)
  • 計算表面高さ画像
    計算表面高さ画像
  • watershedアルゴリズムによる山領域分割結果(Wolfプルーニング:5%)
    watershedアルゴリズムによる山領域分割結果
    (Wolfプルーニング:5%)

閉じた領域(closed area),開いた領域(open area)

  • 計測表面高さ画像
    計測表面高さ画像
  • 負荷面積率60%における断面画像
    負荷面積率60%における断面画像
    • 青:閉じた谷領域
    • 赤:閉じた山領域
    • 白:開いた山領域
    • グレー:開いた谷領域

形ある高さcにおいて定義領域の境界に接していない領域を閉じた領域といい、接している領域を開いた領域といいます。高さcは負荷面積率で与え、デフォルトの値は50%です。

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