樹脂成形材料の概要と種類

樹脂成形に用いられる樹脂(プラスチック)つまり合成樹脂は、人工的な高分子化合物(ポリマー・ハイポリマー)です。樹脂成形に用いられる材料の成り立ちや分類・種類と用途について説明します。

樹脂成形材料の成り立ち

石油原料を用いた樹脂成形材料の場合、下記の要領で「モノマー(単量体)」から「ポリマー(重合体)」・「ハイポリマー(高重合体)」を生成(重合)し、樹脂成形材料である「ペレット」や「粉末」に加工されます。

(1)モノマー(単量体)の生成

原油を蒸留する過程で得られる「ナフサ」を分解・化学合成することで、小さい分子(低分子化合物)である「モノマー(単量体)」を生成します。エチレンやプロピレンなどがあり、これらは石油化学基礎製品と呼ばれます。

(2)ポリマー(重合体)・ハイポリマー(高重合体)の生成

モノマーが互いに結合し、巨大な分子(高分子化合物)を生成(重合)することで、「ポリマー(重合体)」や高度に重合した「ハイポリマー(高重合体)」となります。例えば、エチレン分子が重合したポリマーは「ポリエチレン」、プロピレンが重合したポリマーは「ポリプロピレン」となります。

原油からのポリマー生成の例
原油からのポリマー生成の例

(3)ペレットや粉末への加工

ポリマー・ハイポリマーを樹脂成形材料として適した状態(ペレットまたは粉末)に加工します。機能を向上させる添加剤や着色料を樹脂に混ぜる「コンパウンド」という工程を経たのち、ペレットや粉末にすることもあります。
次項で解説する「熱可塑性樹脂」では、樹脂を米粒状にしたペレットを用い、「熱硬化性樹脂」では、粉末状の樹脂を用います。

樹脂の性質による分類

樹脂(プラスチック)は、熱を加えると溶けて(溶解)やわらかくなり、変形させること(成形)ができます。冷やすと変形した形のまま固まります(固化)。

樹脂は、冷却によって固化した後(成形後)の性質によって、2つに大別されます。

  • 「熱可塑性樹脂」成形後でも加熱をすると再び可塑性をもち変形する
  • 「熱硬化性樹脂」成形後に加熱しても変形しない
樹脂の性質による分類

固化後の性質から、熱可塑性樹脂はチョコレート、熱硬化性樹脂はビスケットによくたとえられます。以降では、それぞれの種類や特徴、用途について説明します。

熱可塑性樹脂の種類

熱可塑性樹脂は、耐熱温度などによって分類されます。
一般的に変形温度が低いため加工しやすく大量利用される「汎用プラスチック」と、耐熱性や機械的強度にすぐれ、力がかかる用途に対応した「エンジニアリングプラスチック(エンプラ)」です。
「エンプラ」には、「汎用エンプラ」と、特に耐熱性に優れた「スーパーエンプラ」があります。

熱可塑性樹脂の種類

上記の分類は一例です。分類にはさまざまな手法があり、必ずしも上記のとおりとは限りません。

汎用プラスチック

「汎用プラスチック」は、変形温度が低く成形が容易なため、幅広い製品に使用されています。ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどは比較的安価であるため、雑貨や包装、農業用途など、さまざまな製品の大量生産に用いられています。

主な汎用プラスチックの種類と用途例
ポリエチレン(PE) 低密度ポリエチレン(LDPE) フィルム、ラミネート、電線被覆
高密度ポリエチレン(HDPE) フィルム、食品容器、シャンプー・リンス容器、バケツ、ガソリンタンク、パイプ
エチレン・酢酸ビニルアルコール共重合体(EVA) 農業用フィルム、ストレッチフィルム、玩具
ポリプロピレン(PP) 自動車部品、家電部品、包装フィルム、食品容器
ポリスチレン・スチロール樹脂(PS) OA・TVのハウジング、CDケース、食品容器、玩具
塩化ビニル樹脂・ポリ塩化ビニル(PVC) 上・下水道管、ホース、パイプ、継手、雨樋、波板、サッシ
ABS樹脂(ABS) OA機器、自動車部品(内外装品)、電機製品、ゲーム機
AS樹脂(SAN) 食卓用品、使い捨てライター、電機製品
ポリエチレンテレフタレート(PET) ペットボトル、容器、絶縁材料、光学用機能性フィルム、磁気テープ
メタクリル樹脂(PMMA) 自動車のテールランプレンズ、コンタクトレンズ、食卓容器、照明板、水槽プレート

エンジニアリングプラスチック(エンプラ)

「エンジニアリングプラスチック」は、汎用プラスチックに比べ、耐熱性や機械的強度が高い樹脂(プラスチック)です。材料としての信頼性が高いため、工業用部品や自動車部品などの高付加価値製品にも用いられます。

主なエンジニアリングプラスチックの種類と用途例
<汎用エンプラ>
ポリアミド(PA) 自動車部品(吸気管、ラジエタータンク、冷却ファン他)、食品用フィルム
ポリカーボネート(PC) DVD・CDディスク、電子部品ハウジング(携帯電話他)
ポリアセタール(POM) 各種歯車(DVD他)、自動車部品(燃料ポンプ他)、各種ファスナー・クリップ
ポリブチレンテレフタレート(PBT) 電機製品、電子部品、自動車電装部品
ポリフェニレンエーテル(PPE) ポンプ、継手、給湯口、自動車部品
<スーパーエンプラ>
フッ素樹脂 フライパン内面コーティング、絶縁材料、軸受、ガスケット、パッキン
ポリイミド(PI) 半導体用部品、通信機器、絶縁材料、接着剤
ポリエーテルスルホン(PES) 精密機器、自動車部品、調理用品
ポリエーテルイミド(PEI) プリント基板、ICソケット、自動車部品

熱硬化性樹脂の種類

熱硬化性樹脂は、成形後に再び溶解して使用することができません。つまり、高温でも溶解しない性質(耐熱性)が高い材料です。

加熱前の熱硬化樹脂は、低分子化合物(オリゴマー、プレポリマー)です。単独または硬化剤、開始剤、触媒などを配合して加熱すると、分子同士が橋を架け合う架橋反応が進行し、3次元構造かつ不溶・不融の硬化物となります。

耐熱性に加え、絶縁性も高い熱硬化性樹脂は、食器類や断熱材をはじめ、電気絶縁部品、半導体関係など幅広く用いられます。熱可塑性樹脂と異なり、リサイクルは困難です。

主な熱硬化性樹脂の種類と用途例
ユリア樹脂(UF) ボタン、キャップ、電気製品(配線器具)、合板接着剤
メラミン樹脂(MF) 食卓用品、化粧板、合板接着剤、塗料
不飽和ポリエステル(UP) 浴槽、波板、漁船、ボタン、ヘルメット、釣り竿、塗料
エポキシ樹脂(EP) IC封止材、プリント配線基板、塗料、接着剤、各種積層板
シリコーン樹脂(SI) 食品用器具類、耐熱・耐寒容器、シール・目地材、コーティング材、医療部品
ポリウレタン(PUR)

発泡体:クッション、自動車シート、断熱材
非発泡体:工業用ロール・パッキン・ベルト、塗料、防水材、スパンデックス繊維

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