押出し成形:Tダイ法

ここでは、押出し成形(Tダイ法)の種類・メカニズムから注意すべき欠陥・不良まで、詳しく説明します。

Tダイ法の概要

「Tダイ法」は、押出し成形の一種です。押出し機の先にある金型「Tダイ」から、樹脂(プラスチック)を押し出すことで成形します。
「Tダイ」は、衣装用ハンガーに似た形状であるため「ハンガーダイ」とも呼ばれます。

Tダイ(ハンガーダイ)
Tダイ(ハンガーダイ)
Tダイ(ハンガーダイ)のメカニズム
正面図
正面図
断面図
断面図
  1. A.溶融樹脂
  2. B.マニホールド
  3. C.リップ

「Tダイ法」は、フィルムやシートに特化した成形方法で、高温での押出しと急冷が可能です。単層を成形する場合、溶融樹脂はマニホールドを通って、吐出口であるリップから押し出され、平板状に成形されます。

光学的性質にすぐれた光学フィルムや、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)・無軸延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)など透明で丈夫な包装向けフィルムの成形に適しています。

Tダイ法の種類

Tダイ法は、単層のシートやフィルムの成形だけでなく、複数の異なる樹脂を重ね合わせた多層の製品製造にも適しています。

共押出し多層Tダイ法

複数の樹脂を同時に押し出す「共押出し」により、シートやフィルムの多層成形が可能です。その手法として、Tダイの手前で樹脂を合流させる「フィードブロック法」と、単層をそれぞれマニホールド内で広げてから、Tダイの吐出口であるリップ出口付近で合流させる「マルチマニホールド法」があります。

フィードブロック法
フィードブロック法
マルチマニホールド法
マルチマニホールド法

2軸延伸法

フィルムの成形では、樹脂を縦・横の両方向に延伸する「2軸延伸法」を用いることで、強度や透明性が向上します。
例えば、OPPフィルムの「OPP(Oriented PolyPropylene)」は、「延伸されたポリプロピレン」を指します。つまり、「2軸延伸法」で製造されていることを意味します。

ラミネート法

「ラミネート法」は、樹脂や紙、アルミ箔など材質・機能の異なる材料を積層する技術です。Tダイを用いた「押出しラミネート」では、強度の低い紙を基材に、ガスバリア性のあるアルミ箔や、2軸延伸したポリエチレンなどを積層することで、飲料や食品に適した包装資材を製造することができます。

Tダイ法のメカニズム

「Tダイ押出し成形機」は、主として(1)押出し機(2)Tダイ(3)冷却ロール(4)引取り機(5)巻取り機(6)切断機から構成されています。

一般的なTダイ押出し成形機の構造
一般的なTダイ押出し成形機の構造
  1. A.ホッパー

(1)押出し機

加熱溶融した樹脂(プラスチック)を「Tダイ」に向けて押し出します。

(2)Tダイ

樹脂シート・フィルムの成形に特化した金型です。Tダイは、樹脂を吐出する「リップ」の開き具合で成形品(シート・フィルム)の厚みを制御することができます。

Tダイ
  1. A.Tダイ
  2. B.冷却ロール
  3. C.フィルム

(3)冷却ロール

高温の樹脂を急冷し、固化させます。

(4)引取り機

固化した成形品を引き取り、巻取り機に搬送します。

(5)巻取り機

搬送された成形品をロール状に巻き取ります。

(6)切断機

成形品を所定量巻き取ったあと、切断します。

Tダイ法で生じる欠陥・不良

Tダイ法によるフィルム成形の工程で、厚みの均一さや、幅の制御に問題があると、欠陥・不良の発生につながります。
また、薄肉製品であるため静電気による異物付着や、ロール搬送時の巻込み、切断機の刃にフィルムが貼りつくなど、さまざまな工程で注意と対策が必要です。

形状
厚みの不均一(偏肉)、ネックインサージングピンホール など
表面
フィッシュアイダイライン、表面の筋 など

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