ブロー成形(中空成形・吹込み成形)

ここでは、ブロー成形の種類・メカニズムから注意すべき欠陥・不良まで、詳しく説明します。

ブロー成形の概要

「ブロー成形」は、古くからあるガラス瓶の製造工程を応用した技術で、空洞の樹脂(プラスチック)成形品の製造に適します。溶融樹脂の内側から空気を吹き込み、膨らませて成形することから、「吹込み成形」や「中空成形」とも呼ばれます。

例えば、液体用の容器を製造する場合、充填する液体によっては、ガスバリア性のある樹脂を用い、酸素の透過による酸化を防ぎます。また、薬品向け容器の製造では、耐薬品性のある樹脂を含む複数の成形材料を層状に成形する「多層ブロー成形」を利用します。

用途として、ペットボトルや液体化粧品・液体洗剤などの容器のほか、自動車のガソリンタンクや排気マニホールドなどが挙げられます。

ブロー成形の種類

ブロー成形は、容器など中空構造の樹脂製品の成形方法として、大きな需要があります。樹脂成形材料の進化とともに、ブロー成形の適用範囲が広がり、多種多様な樹脂製品の製造が可能となりました。

代表的なブロー成形

代表的なブロー成形の手法として、下記の2種類が挙げられます。

押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)

加熱・可塑化させた樹脂を押し出し、ダイで円筒状の「パリソン(ホットパリソン)」を成形します。それを冷却・固化させず、ダイレクトに金型内に入れ、空気を吹き込んで成形します。

押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)
  1. A.パリソン(ホットパリソン)
  2. B.金型
射出ブロー成形(射出延伸/2軸延伸ブロー成形)

熱可塑性樹脂をあらかじめ試験管状の「プリフォーム(コールドパリソン)」として射出成形します。それを次工程で再加熱し、「延伸ロッド」で金型内に伸ばし入れ、高圧空気を吹き込んで成形します。
代表的な製品として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を材料としたペットボトルが挙げられます。

射出ブロー成形(射出延伸/2軸延伸ブロー成形)
  1. A.延伸ロッド
  2. B.金型
  3. C.プリフォーム(コールドパリソン)
  4. D.ヒーター

多層ブロー成形

多層の樹脂容器の製造に用いられます。2種以上の材料樹脂を「共押出し」して、多層の「プリフォーム(コールドパリソン)」を成形します。それを加熱し、金型内で樹脂に空気を吹き込んでブロー成形します。
例えば、内容物の酸化・変質防止、強度向上を目的に、ガスバリア性の高いエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などを共押出ししたパリソンを使用します。この成形法は、食用油や調味料、ガソリンタンクなどの樹脂容器の成形に適しています。

多層ブロー成形
  1. A.ポリエチレン(PE)
  2. B.接着層
  3. C.エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)など

3次元ブロー成形

コンピュータ制御を用い、複雑な金型の形状に沿って、円筒状のパリソンを寝かせるように誘導します。
縦方向にパリソンを入れる「押出し(ダイレクト)ブロー成形」と異なり、材料のドローダウンバリの発生を回避した成形が可能です。
この成形方法は、クーラー用やヒーター用のホースなど、湾曲部や蛇腹のある複雑な形状の製品を高品質に製造することができます。

3次元ブロー成形

ブロー成形のメカニズム

ブロー成形機は、主として、(1)押出し機(2)パリソン成形(3)型締め・エアブロー(ブロー工程)・冷却の3つの機構から構成されています。

押出しブロー(ダイレクトブロー)成形機の構造
押出しブロー(ダイレクトブロー)成形機の構造
  1. A.ホッパー
  2. B.押出しスクリュー
  3. C.加熱シリンダー
  4. D.ダイ
  5. E.パリソン
  6. F.金型
  7. G.エアブロー装置
  8. H.冷却水孔

(1)押出し機

「押出し機」で、加熱溶融した樹脂(プラスチック)をリング状のダイから押し出します。複数個のダイを用い連続的に樹脂を押し出すことで、生産効率を高めているものもあります。

(2)パリソン成形

ブロー工程の前に予備成形する「パリソン」は、大きく2つに分類されます。

パリソン(ホットパリソン)
図で示した「押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)」の場合、「パリソン(ホットパリソン)」の押出し成形とブロー工程を連続して行います。
まず、押出し成形で円筒状の(底がない)「パリソン」を予備成形します。余熱をもったまま金型内に入れ、ブロー成形するため「ホットパリソン」とも呼ばれます。
プリフォーム(コールドパリソン)
「射出ブロー成形(射出延伸/2軸延伸ブロー成形)」の場合、材料となる「プリフォーム(コールドパリソン)」の射出成形と、ブロー成形を個別に行います。
あらかじめ熱可塑性樹脂を試験管状の(底がある)「プリフォーム」として射出成形し、冷却・固化させているため、「コールドパリソン」とも呼ばれます。
次工程で、それを再加熱してブロー成形します。「プリフォーム(コールドパリソン)」は、小型で可搬性が高いため、材料生産者から中間製品として仕入れる場合もあります。

(3)型締め・エアブロー(ブロー工程)・冷却

図で示した「押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)」で容器を成形する場合、型締めによって円筒状の「パリソン(ホットパリソン)」の底部分を成形します。
パリソン内部に圧縮空気を吹き込むことで、冷却した金型の内壁に樹脂を押しつけ、金型内部の樹脂を冷却・固化させます。その後、金型を開き、成形品を取り出します。

ブロー成形で生じる欠陥・不良

ブロー成形の工程で起きるさまざまな現象は、成形品の品質に影響を与えます。例えば、押出しブロー成形(ダイレクトブロー成形)で生じるドローダウンは、偏肉という形状欠陥を招くことがあります。
また、「メルトフラクチャー」は、パリソン(ホットパリソン)の押し出し時に溶融樹脂の流れが乱れる現象で、成形品の肌荒れといった表面欠陥を招きます。これは、押出し工程のある樹脂成形全般で発生します。

形状
偏肉バリそりヒケ、成形品の気泡 など
表面
ウェルドライン、肌荒れ など

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