バーコードリーダの技術と正しい使い方レーザ式定置型バーコードリーダ
一般的なレーザ式定置型バーコードリーダの読み取り原理と構造から見た正しい使い方を解説します。
読み取り原理
レーザ式定置型バーコードリーダは、下図のように「レーザダイオード」「ポリゴンミラー」「モーター」「受光素子」から構成されます。以下のような原理でバーコードを読み取ります。
- ①レーザダイオードより発光したレーザ光を回転しているポリゴンミラーに当て、バーコード上をスキャンさせます。
- ②その乱反射光を受光素子(フォトダイオード)で受光します。
- ③受光した乱反射光は、図のようなアナログ波形になっています。
- ④このアナログ波形をデジタル波形に変換します。(A/D変換)
- ⑤このデジタル波形から、細・太バー、細・太スペースを判別します。
- ⑥バー、スペースの組み合わせから、バーコードの規則にしたがい、コード化(デコード)します。
その結果、得られた読み取りデータをRS-232Cなどから通信出力します。
- レーザ式バーコードリーダのモーター
- ポリゴンミラーを回転させるモーターは、移動体ワークでの高速読み取りを実現するため、バーコードリーダに電源を投入すると常に回転しています。そのためどのようなタイミングで読み取り開始の信号が入力されても、安定したバーコード読み取りを実現しています。
- 注意点
- モーターは常に回転しているため、運用期間が長期化すると、モーター劣化により正しく動作できなくなります。
- モーターは高速回転しているため、外部からの衝撃を受けると、軸受け部が損傷し、安定したレーザ光の照射ができなくなります。
レーザ式バーコードリーダの特性と正しい使い方
取り付け角度の設定
レーザ式バーコードリーダは、レーザ光をバーコードラベルに対して斜め方向から照射し、その乱反射光を受光することでバーコードを読み取っています。
当社製レーザ式バーコードリーダBL-1300シリーズでは、図Aのように15゜程度傾けて設置する必要があります。
図Bのようにレーザ光とバーコードラベルが直角になるように設置(正反射取り付け)すると、バーコードラベル面から極部的に非常に強い反射光(正反射光または直接反射光)が返ってくることになります。
「角度をつけて取り付けた」場合は、下図のように全ての反射光が乱反射であるため正常にアナログ波形からデジタル波形への変換ができていますが、「正反射取り付け」の場合は、正反射光を受光してしまうため下図のようにアナログ波形の一部分が乱反射に比べ非常に高いレベルになってしまい、正常にデジタル波形への変換ができなくなります。このため、正反射取り付けをした場合は、読み取りができないのです。
当社製レーザ式バーコードリーダBL-700シリーズ、およびBL-1350HAについては、下図のように本体から傾いてレーザ光が照射されています。したがって、本体を傾けて設置する必要はありません。
注意が必要なバーコードラベルと周囲の環境
- 金属面や銀色の下地に印字されたバーコード
- 金属面や銀色の下地に印字されたバーコード、または、ラミネート加工されたバーコードなどは、表面に光沢があるため、レーザ光が鏡面反射を起こしてしまい、読み取りにくくなります。
このようなラベルをお使いの場合は、バーコードリーダの取り付け角度などに十分注意して設置する必要があります。
安定した読み取りをおこなうために、できるだけこのようなバーコードは避けてください。
- 金属部分にレーザ光が当たっている場合
- 図のように、金属面が露出していてレーザ光がその金属面に当たっているような環境では、レーザ光が金属面で鏡面反射を起こし、それがバーコードリーダの受光部に入ると、正反射と同じ状態になってしまい、読み取りが不安定になることがあります。
レーザ光が当たっている金属面を何かで覆うか、つや消しの黒色の塗料などを塗布していただくことをおすすめします。
金属のネジ、ナットまたはネジ穴などにも注意してください。
取り付けの距離(読み取り距離)の設定
読み取り距離は、バーコードのナローバー幅(バーコードの一番細いバーの幅)の太さにより、その範囲は異なります。
下図は当社製レーザ式バーコードリーダBL-700の読み取り範囲特性を示しています。
バーコード種類 | ナローバー幅 | 読み取り距離 | 最大読み取りラベル幅 | |
---|---|---|---|---|
A
|
CODE39
|
0.15
|
205~275
|
210
|
B
|
CODE39
|
0.19
|
190~300
|
254
|
C
|
CODE39
|
0.25
|
175~325
|
275
|
D
|
CODE39
|
0.5
|
160~370
|
310
|
E
|
JAN1倍
|
0.33
|
185~320
|
270
|
これを見ると、バーコードのナローバー幅の太さにより、読み取り距離が変っていることが確認できます。
例えば、ナローバー幅が0.15mmの時(A)、読み取り距離は205~275mm。ナローバー幅が0.5mmの時(D)、読み取り距離は160~370mmとなっています。
このようになる理由は、バーコード上に照射されるレーザビームの大きさ、いわゆるレーザのスポット径に深く関わっています。下図はバーコードリーダからの距離とレーザのスポット径の大きさの推移を表わしています。
レーザ式バーコードリーダは、細いナローバー幅のバーコードを読むため、ある距離においてレーザのスポット径が最も小さくなるように調整されています(レンズを使用しています)。このスポット径が最も小さくなる距離 を焦点距離といいます(BL-700では230mm、BL-1300では120mm)。スポット径が小さいとナローバー幅が細いバーコードを読み取ることができ、焦点距離から遠くなれば、スポット径が大きくなってしまうため、ナローバー幅が細いバーコードは読み取れなくなります。
このように、読み取り距離は、レーザのスポット径でほぼ決定されるといっても良いのです。
- 取り付け距離については、以下のことに注意して設定してください。
- ナローバー幅の細いバーコードは焦点距離で使用してください。
- ナローバー幅の太いバーコードは、焦点距離から離れた位置でも使用できます。
- 読み取り距離の範囲を広く取りたい場合は、ナローバー幅をできるだけ太くしてください。
- 焦点距離に設置すれば、ナローバー幅の太さに関係なく読み取り可能です。
注意が必要なバーコードラベルと周囲の環境
焦点距離に設置すれば、ナローバー幅の太さに関係なく読み取りできますので、通常は焦点距離での取り付けを推奨しています。
しかし、以下のように細かなシミやカケが多いバーコードは焦点距離では逆に読み取りづらく、焦点距離から離すと読み取りやすくなることがあります。
理由としては、焦点距離ではレーザのスポット径が小さくなり、細かなキズや汚れでも大きな影響を受けますが、焦点距離から離れると、レーザのスポット径が大きくなり、その影響を受けにくくなるためです。
バーとスペースのコントラスト(PCS)
バーコードリーダは、照射したレーザ光の乱反射の強弱でバーコードを読み取っています。強弱の差が大きければ、読み取りやすいバーコードです。逆に、強弱の差があまりないと読み取りにくくなります。この乱反射の強弱を表す目安が、PCS(Print Contrast Signal)で、以下のような計算式により求めます。
(スペースの反射率)-(バーの反射率)
(スペースの反射率)
スペースが真っ白で反射率が100%に限りなく近く、バーが真っ黒で反射率が0%に限りなく近い場合、PCSは1になります。このようにPCSが1に近ければ近いほど読み取りやすいバーコードといえるのです。
より読み取りやすいバーコードを作りたい場合は、PCSができるだけ高い値になるよう、以下のことに注意する必要があります。
- PCSを高い値にするには…
- バーは濃く印字すること。
- バーを印字している色が薄い色であったり、プリンタの問題で印字が薄くなると、PCSは悪くなります。
- 下地(スペース部)はできるだけ白い色にすること。
- 段ボールのような反射率が低い下地の上にバーコードを作成する場合は、できるだけ反射率が低い色(黒、濃紺、濃緑)にしないと、PCSは悪くなります。
バーの色による読み取りの違い
レーザ式バーコードリーダには、可視光半導体レーザが使われています。
下図は各光源の波長に対する対象物の色による反射率を表わしたものです。たとえば、波長650nmの可視光半導体レーザでは紫、青、緑などは反射率が低く、黄、橙、赤などは反射率が高くなっています。
このように、赤、黄、橙などは反射率が高いので白(スペース)として、青、緑、紫は反射率が低いので黒(バー)として認識します。つまり、
白地に青色のバー | 読み取れます。 |
赤地に黒色のバー | |
黄色地に紫色※のバー | |
白地に赤色のバー | 読み取れません。 |
青地に黒バー |
赤紫や薄い紫色は反射率が高くなりますので、読み取りにくくなります。
安定した読み取りをおこなうためには、白地に黒のバーコードをご使用いただくことをおすすめします。
ただし、バーが濃紺、濃青、濃緑であれば、問題ありません。
当社製レーザ式バーコードリーダの特徴
当社製バーコードリーダBL-1300シリーズやBL-700シリーズでは、より広範囲な読み取り範囲や、角度特性を実現するため、以下のような機能を搭載しています。
AGC(Auto Gain Control):BL-700シリーズ、BL-1300シリーズ、BL-600シリーズ
AGCは以下のような動作をします。
「読み取り距離が遠い」「取り付け角度が大きい」または「バーコードラベルのPCSが低い」場合は、以下のようにバーコードリーダが受光する乱反射光の振幅は小さくなります。
AGCは、このように受光波形が小さい場合には、読み取りに最適なレベルまで振幅を増幅させるような制御をおこないます。
これにより、条件が悪い場合でも安定した読み取りを実現しました。
また、逆に「読み取り距離が近い」「取り付け角度が小さい」「バーコードラベルのPCSが高い」場合は、以下のようにバーコードリーダが受光する乱反射光の振幅が大きくなります。
この場合は、読み取りに最適なレベルまで振幅を小さくするような制御をおこなうことで、読み取りの安定性を向上させています。
このようにAGCは、バーコードリーダの受光波形を読み取りに最適なレベルになるように自動的に制御しますので、どのような条件(距離、角度、PCS)であっても、安定した読み取りを実現しました。
微分処理→ノイズ除去→エッジ検出→比率補正(SPAT!):BL-1300シリーズ
- ①微分処理
- BL-1300シリーズでは、受光波形を10bit階調で取得し、微分処理をおこないます。
- ②ノイズ除去→エッジ検出
- 印字のかすれや、バーコード面の模様など、バーコードの読み取りに関係のないノイズ成分を除去します。
ノイズ成分を除去したデータから、「バー」と「スペース」の切り替わりポイント(エッジ)を検出します。 - ③比率補正(SPAT!)
- 抽出されたエッジからバーとスペースを判別します。
印字のにじみや、取り付け角度によって発生する、バー、スペース幅の比率をSPAT!で補正します。