食品業界

食品業界で押さえておくべき、トレーサビリティ関連の法規制

歴史と進化 ニーズの拡大」でも触れましたが、BSE問題を発端に消費者の食の安全性に対する関心が高まり、食品業界では急速にトレーサビリティシステムの整備が進められています。こちらでは、食品トレーサビリティに関連する、牛トレーサビリティ法や米トレーサビリティ法、HACCPなどの法規制についてご紹介します。

牛トレーサビリティ法

BSE(狂牛病)のまん延を防止することを目的に施行された制度が牛トレーサビリティ法(牛の個体識別のための情報の管理および伝達に関する特別措置法)です。その牛がいつ、どこで生まれ、どこで育ったかなど、牛肉の生産履歴を開示する制度で、牛の管理者または輸入者は牛が出生した時点、または牛を輸入した時点で速やかに出生や輸入の年月日などの情報を農林水産大臣に届け出ることが義務づけられています。そして届け出が受理されると、国から個体識別番号を表示した耳標が支給され、これを当該の牛に装着しなければいけません。

この個体識別番号は消費者に届くまで使用され、追跡・遡及を容易に行うことが可能です。独立行政法人 家畜改良センターのWebサイトでは、個体識別番号を入力することで牛肉の出生年月日・雄雌の区別・母牛の個体識別番号・種別(品種)・飼養場所の履歴が検索可能です。

牛トレーサビリティ法

米トレーサビリティ法

米や米を原料とする米飯類・米菓などの取引に際して、産地情報などの記録・伝達を生産者から流通・販売に関わる事業者に義務づける制度が米トレーサビリティ法です。これにより事故や産地偽装などの問題が生じた場合にも、流通ルートを速やかに特定して回収、さらに原因を特定することで事業者の責任を明確にすることができるようになりました。

ちなみに“事業者”とは、生産者だけでなく、米や米の加工品を扱う製造業者・加工業者・卸売業者・小売業者・外食業者までを含み、そのすべての事業者に対して取引の記録作成と保存を義務づけています。

米トレーサビリティ法

米トレーサビリティ法に基づく取引記録の概要

記録保存義務の発生 対象品目の取引、事業所間の移動、廃棄を行った時点
記録事項
  • 品名
  • 産地(「国産」「○○国産」「○○県産」など)
  • 数量
  • 製造・加工年月日
  • 取引先名
  • 搬出入の場所
記録の保存方法 紙または電子媒体
保存期間 原則として3年間 伝票や帳簿に、所定の事項が記載されていればこの限りでない

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)

HACCP(ハサップ)とは、Hazard Analysis Critical Control Pointの頭文字を取った略称で、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。このHACCPは国連の国連食糧農業機構(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)と世界保健機構(World Health Organization:WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会が1993年に一部を発表し、世界各国で推進されている食品の衛生管理方法です。

HACCPでは、原材料の受け入れから製造、加工、出荷までにすべての段階で、食中毒などの可能性がある危険因子(Hazard)を科学的に分析(Analysis)し、これらを低減・除去するために必要な重要管理点(Critical Control Point)を安全管理の手法としてまとめています。日本では、1995年に定められた「総合衛生管理製造過程」にHACCPを取り入れています。

HACCPシステムの手順

従来の衛生管理とHACCPの違い

従来の衛生管理では、関連施設・設備の基準や食品の取り扱い方法などを規定し、最終製品を検査して安全性を確認していました。しかし、HACCPでは、工程ごとに危険因子を分析し、重要な工程に関しては管理を重点的に行い、製造プロセスごとに基準を定めて管理・検査を行います。工程全体を通じて対策を実施するため、食中毒や異物混入などを未然に防止でき、安全性を高めることができます。

従来の衛生管理とHACCPの違い

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