ものづくりの塗布用語集
このサイトに登場する用語や、関連ワードをご説明します。
用語 | 意味 |
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C | |
CFRP | Carbon Fiber Reinforced Plasticsの略で、炭素繊維と樹脂との複合材料である「炭素繊維強化プラスチック」。鉄やアルミよりも低密度で、軽量かつ強度が高い材料。金属と異なり繊維方向に弾性率と強度が高いため、繊維方向の割合による強度設計が可能。航空宇宙や自動車、スポーツ用品・器具など、軽量・高強度・高剛性(たわみにくい)といった特性を活かす分野で使われる。 |
F | |
FPC | Flexible Printed Circuitsの略で、フレキシブル基板、フレキシブル回路基板、フレキシブルプリント基板、フレキシブルプリント配線板などさまざまな呼び方がある。薄膜状の絶縁体であるベースフィルム(プラスチックフィルム・ポリイミド・PETなど)と、銅箔などの導電性金属を貼り合わせた基板に電子回路を成形。薄く柔らかい特徴を活かし、可動部分や折り曲げ部、薄型化や軽量化が求められている基板間・ユニット間の接続ケーブルなどの用途で、スマートフォンや液晶ディスプレイなどの電子機器に用いられている。 |
I | |
ITO膜 | ITO膜は、透明性・導電性をもつ膜で、透明導電膜とも呼ばれる。電気特性や透明度が高く、タッチパネルや液晶ディスプレイに活用されている。ITOは、Indium Tin Oxideの略で、酸化インジウムスズを指す。これは酸化インジウム(In₂O₃)と酸化スズ(SnO₂)の混合物で、それぞれの比率を変えることによりITO膜の抵抗値や透明度に影響する。成膜には、用途によってスパッタリング・真空蒸着などのPVD(物理的気相法)や、CVD(化学的気相法)、塗布などが用いられる。 |
M | |
MEMS(メムス) | Micro Electro Mechanical Systemsの略で、「微小電気機械システム」と訳される。一般的に、MEMSの大きさは、全長がmmオーダー以下、その部品はμmオーダー。技術範囲としては、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路のシリコン基板、ガラス基板、有機材料などの上に集積化したデバイスが挙げられる。主要部分は半導体集積回路の製造技術から成る場合もあるが、立体形状や可動構造を形成するためのエッチングプロセスもMEMSに含まれる。 |
T | |
TFT | Thin Film Transistorの略で、日本語では「薄膜トランジスタ」と呼ばれる。電界効果トランジスタの一種で、絶縁基板の上に薄膜だけでトランジスタを構成したものを指す。一般的に、半導体膜 (CdS、CdSeなど:膜厚 1μm 以下)、絶縁膜 (SiO、CaF₂ など:膜厚 0.1μm 以下) 、電極 (Al、Au など) で構成され、液晶ディスプレイなどに用いられている。 |
あ行 | |
アスペクト比 | 長方形では、2つの辺の長さの比を指す。円筒形の物体では、直径と高さの比を指す。3次元の構造物では、断面図形からアスペクト比が導かれる。線塗布においては、線幅に対して厚みが大きい場合、高アスペクト比と呼ばれる。 |
一次結合力 | 接着剤による接着で使われる用語で、化学結合(共有結合や金属結合、イオン結合など)を指す。 |
ウェブ(web) | フィルム、シート、紙や金属薄膜など平らな膜状の連続柔軟媒体で、一般的に切り揃えずにロール状に巻かれた基材。なお、ロール状での基材輸送は「ウェブ・ハンドリング」または「ウェブ搬送」と呼ばれる。 |
液体ガスケット | 流動性のある物質で、接合面に塗布することにより弾性皮膜あるいは粘着性の薄層を形成する。接合部に油密性・水密性・気密性を持たせることで、漏れの防止や耐圧機能を付与する。 |
オーバーコート塗布 | 表面の凹凸を平坦化することを目的に、材料を塗布しオーバーコート層を成膜すること。液晶ディスプレイ用のカラーフィルタ表面の凹凸を平滑化する場合などに用いられる。 |
か行 | |
回転遠心力 | 物体を回転(円運動)させたとき、中心から離れた方向に働く見かけの力(慣性力)。 |
界面張力 | 物質が分子間の引力によって、その界面の表面積を減少させようとする力。水銀や水が空中で球形になるのはこの力によるもの。液体の場合は、一般に「表面張力」という。 |
カスケード | 塗工面にできる、さざ波状の塗工欠陥。基材の速度が速い場合に生じる「リビング(縦筋状)」とは反対に、基材の速度が低速の場合に発生しやすい。 |
乾燥曲線(乾燥特性曲線) | 材料特性のひとつで、乾燥する単位材料表面積(乾燥面積)当たり(または、単位無水材料重量当り)、単位時間に蒸発する水分量で示される。 |
基材 | 製品や化合物のもとになる材料。ロール状に巻かれた平たいフィルム・シート基材は、ウェブ(web)とも呼ばれる。 |
空気同伴 | 基材上の空気を塗液で置き換える塗布において、高速塗工時に置き換えが間に合わず、空気が塗膜の中に残存してしまう塗工欠陥。 |
高分子 | 巨大な分子からなる物質を指し、分子の大きさは「分子量」によって表され、分子量の大きいものを「高分子量」、小さいものを「低分子量」と表現することに由来する。一般に、分子量が数千以上のものを「高分子」と呼ぶ。 |
固化 | 物質が、液体または気体の状態から固体の状態に変化すること。同義語として「凝固」がある。一般的に気体の場合は「昇華」と呼んで区別される。 |
さ行 | |
シール材 | シーリング材とも呼ばれ、シール剤またはシーリング剤と書かれる場合もある。防水性・気密性の付与を目的に継ぎ目や隙間に充填する、合成樹脂や合成ゴムなどを原料としたペースト状(のり状)の材料。シール材の塗布工程では、被塗物表面への密着性を高める「シーラー」や、接着性を高める「プライマー」といった下地材が併用されることが多い。そのため、自動車製造や建築塗装の分野では、シーラーまたはプライマーがシール材を含む言葉として使用される場合もある。 |
シリンジ | 一般的には、注射器を意味する。工業用の装置としては、容器に充填された液体(接着剤や銀、はんだペースト、グリス、液剤など)の持続的な送液装置(シリンジポンプ)を指す。 |
ストリーク | 「線状欠陥」とも呼ばれる塗工面の表面欠陥。発生原因は多岐に渡るが、例として、塗工量を調節するブレードなど塗工装置の一部に大きな粒子が引っ掛かってできる、線状の塗工面欠陥。 |
スラリー | 固体粒子が液体の中に懸濁している泥状、または、かゆ状の混合物。泥漿(でいしょう)とも呼ばれる。 |
接触角θ | 液体を固体表面に滴下したとき、表面張力で丸くなった液滴の接線と固体表面とのなす角度(液滴内部の角)。これは「ヤングの式」で表すことができ、θ(Contact Angle)で示される。液体と固体表面の表面張力が釣り合うことで(接触角θが0に近いほど)、固体表面が「ぬれている」。 |
セル模様 | グラビア厚膜塗工において、塗工パターンを成形する版のセル(グラビアセル)の内容積を増やした際、セルパターンが粗くなり、結果として塗工面にセルそのものの模様が転写されてしまう塗工欠陥。 |
全固体電池 | 全固体型電池、全固体リチウムイオン(LiB)電池などの呼び方がある。現行のリチウムイオン電池(LIB)で使用されている有機の電解液やセパレータのかわりに、無機の固体電解質を使用。固体電解質は、難燃性や熱的・化学的安定性があるため、エネルギー密度を高めても安全性・耐久性の維持が可能。超急速充電の実現が期待でき、電解液がないため設計の自由度が高いことから、電気自動車(EV)などでの実用化に向けて研究・開発が進められている。 |
せん断 | 物体をはさみで切るような作用。物体の断面に対し、平行に対になる方向から、互いに反対向きの力を与えることで起こる。 |
た行 | |
ダイ | ダイ(Die)は、固体の材料から形状をつくる「型」を意味する。一方、モールド(Mold)は、溶けた材料から形状を作る型を指す。ダイを用いた塗布方式として、「スロットダイ」が挙げられる。塗布前にあらかじめ定量ポンプなどで流量を制御する「前計量方式」に分類され、塗膜が流量/幅/速度で一定となるため、膜厚の精度が問われる光学フィルムなどの塗布に用いられている。ほかに多層塗膜を同時に成膜する「多層スロットダイ」などがある。 |
段取り替え | 生産する製品の種類、製造工程の内容変更に伴う作業前準備。ツールの取り替えや装置などの基準調整、材料や部材の切り替えなど。 |
チャンバー | 密閉された状態で回転するアプリケーターロールに接触し、タンクやポンプから供給される塗液を付着させるユニット。塗工前の塗液の空気接触を避けることができる。また、チャンバーの端にドクターブレードを装備したユニットは「ドクターチャンバー」と呼ばれる。 |
ティーチング | 産業用ロボットに複雑なプログラムを記憶させ、それが正しく再生、動作(ティーチングプレイバック)するよう設定する作業。ティーチペンダントを用いて動作を記憶させ、教示者が現場で実際に再生してさらに微調整を行う「オンラインティーチング」と、CADデータも利用した動作プログラムをコンピュータからロボットに転送し、複雑な動作を記憶させる「オフラインティーチング」がある。 |
ディップコーティング | ワーク(塗布対象物)を液中に浸漬するコーティング方法。浸漬後、液体の粘性力や表面張力、重力や速度を加味してワークを引き上げ、乾燥や焼成により溶剤を除去して均一な薄膜を形成する。 |
投錨効果(アンカー効果、ファスナー効果) | 接着剤が被着材の表面の微細な凹凸に浸入硬化し、釘、または、くさびのような働きをすることを指す。「アンカー効果」、「ファスナー効果」とも呼ばれる。 |
ドクターブレード | 塗工不良の原因となるコータの各種ロール表面の汚れや異物を取り除くための装置。また、意図的に最終的な塗工量よりも多くの塗液を塗布し、ブレードで不要分を掻き落とし膜厚をコントロールすることで、一定の膜厚を得る機能を持つ装置もドクターブレードと呼ばれる。 |
塗布ノズル・ニードル | ディスペンサの液剤の出口となる部分で、塗布する液剤や目的、条件によって使い分けられる。例えば、材質では、汎用性の高い金属製やプラスチック製のニードル、嫌気性液剤に対応するPTFEノズルなど。機構では、シリンジ装着の確実性を高める2条ネジタイプのニードルなど。サイズや形状では、精密塗布に対応する精密ノズルや高精細ノズル、ワーク側面に塗布できるよう湾曲したカーブノズルなど。ほかにも多種多様なノズルやニードルが存在する。 |
な行 | |
ナーリング | 密着性の高い塗工後のフィルムをロール状に巻き取っていく際、応力がかかる。特に「ゲージバンド」と呼ばれる厚い部分に応力が集中し、それが何層にも巻かれることで、塗工面や基材の変形・変質の原因となる。塗工後の基材両端をエンボス加工で高く(ナーリング)することで、巻き取り時の中央部分の密着を軽減し、塗工面と基材のダメージを回避する。 |
ぬれ性 | 固体表面とそこに滴下された液体との「接触角θ(Contact Angle)」の大小で、ぬれ性が表される。接触角が小さいほどぬれ性が高く、液体が固体表面に塗布されている状態といえる。反対に、接触角が大きいほど固体表面が液体をはじいている状態となり、ぬれ性が低い。 |
糊残り | 糊層(粘着層)の破壊現象を意味する。破壊現象は大きく3つに分類される。「投錨破壊」は基材層から糊層が分離し被着体側に移行する現象、「凝集破壊」は、糊層が基材層と被着体に分離する現象を指す。一方、「界面破壊」は正常な(きれいに剥がれる)状態とされる。 |
は行 | |
ハードコート | ハードコートは、スマートフォンやゲーム機の画面や、自動車、建材などの表面保護に用いられ、一般的に、表面硬度(鉛筆硬度H以上)や透明性(可視領域における光透過率90%以上)が要求される。硬度や塗布性の向上が進められている分野で、コーティング剤によるハードコートは材料から3種類に分類される。「有機系」は、ほかの2種に比べ硬度は低いが、取り扱いが容易でリコートが可能。「シリコン系」は、最も硬度が高く、耐久性も高いがリコート性が低い。「金属系」は、硬度が高いが、塗膜形成に焼成が必要なためコーティングの条件が限られる。 |
バレル | 塗布装置においては、塗液を格納する容器。胴の膨らんだ「樽(たる)」を意味し、慣用単位ともなっている"barrel"に由来。 |
ビード状 | 例えば、チューブからしぼり出したような「ひも状」に塗布すること。 |
表面張力 | 液体に働く、常にその表面積を最小にしようとする力。分子間の引力によって、表面の分子が内部から引かれるために起こる。 |
ファン・デル・ワールス力 | 常温で気体であるような分子は、温度が低くなって分子運動が弱まり、分子どうしが互いに近づいても、それぞれが安定しているため化学結合は起こらない。分子の接近によって分子間に力が働き、結合状態(液体や固体)になるときの分子間引力。二次結合力とも呼ばれる。 |
フィラー | 樹脂の機能を高めるために充填する無機または有機性の微粒子。ナノテクノロジーの発展に伴い、粒子径はミクロン、ナノ単位の超微粒子のフィラーが注目されている。 |
フォトリソ法(フォトリソグラフィー) | 基材に感光性のレジストを塗布し露光することで、露光部と未露光部で所望のパターンを形成する技術。半導体ICの配線などナノオーダーでの配線や微細加工に活用されている。 |
ブレード | 余分量塗布した塗液から必要量以外を掻き落とすことで、目的の膜厚を得る「へら」のようのな役割をする装置。 |
ポッティング | 一般的に、ケース内に装着された電子回路の保護を目的とした、ウレタン、シリコン、エポキシなどの絶縁材の注入を指す。また、意匠を目的に、ウレタン樹脂を用いた立体的なコーティングもポッティングといわれる。 |
ボンディング | 工業におけるボンディングとは、2つのワークを液体または半液体(ペースト、クリーム状など)の接着剤を用いて結合し、長期間持続する接合を指す。 |
ま行 | |
耳立ち | 塗工面が均一にならず、塗工幅の端部または両端部で塗工厚が大きくなる塗工(塗布)欠陥。 |
メニスカス | 液体を毛管(細管)の中に入れると、液体の表面は平らでなく、表面張力によって曲面となることをいう。水とガラスのように、液体と管の壁の付着力が大きい場合は下にくぼんで凹状となり、水銀のように管の壁を濡らさない場合はふくらんで凸状となる。 |
や行 | |
有機EL | 有機ELは、電流により自ら光る性質を持つ、有機物質を使った発光素子「OLED(organic light emitting diode)」を用いた技術。日本では発光素子(OLED)も含めて「有機EL」と呼ばれることが多い。有機ELを利用したディスプレイ「OELD(organic ectroluminescence display)」は、バックライトが不要で、低電力で高輝度、薄型・軽量であるため、スマートフォンやタブレット、薄型ディスプレイなどに活用されている。 |
ら行 | |
リビング | 塗工欠陥のひとつで、英語では”ribbing”と綴る。基材が走行する方向沿って塗工面にできる、周期的な畝状(縦筋・リブ状)の表面欠陥。基材速度が速い場合に発生しやすい。 |
ローピング | アプリケーターロール(塗材を塗布するロール)の周方向に沿って生じる筋模様の塗工欠陥。液の粘度が高い、または、ロール周速が速いほど生じやすい。 |