異物付着対策のQ&A
静電気対策の基礎知識、静電気による障害や破壊、除電器に関するよくある質問と回答をまとめています。
異物、ホコリが物体に付着する要因には、様々な要因がありますが、静電気も付着の要因として深い係わりがあります。
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金属体(導体)への付着のメカニズム
金属体(導体)に帯電した物質(異物やホコリ)が近づくと、金属体(導体)の中で、「静電誘導」が発生し、金属体(導体)内にある自由電子が物体表面に移動するため、物体表面が帯電したような状態になります。
この静電誘導による電位と異物・ホコリなどの静電気によって、クーロン力が働き、引き寄せあう力が発生し、「付着」します。 -
絶縁体への付着のメカニズム
付着する対象物が絶縁体の場合、磁石のN極とS極が引き合うのと同じように、逆極性に帯電している異物、ホコリがクーロンカによって「付着」します。
金属体への異物、ホコリの付着の要因は、Q1のように帯電した異物、ホコリが金属体に近づくことで発生する静電誘導が要因になりますので、金属体をアース対策していたとしても静電誘導は発生しますので、異物、ホコリの付着対策としては残念ながら効果がありません。
異物、ホコリの付着のメカニズムは、対象物が金属体(導体)なのか絶縁体なのかによって異なりますので、(Q1参照)当然のことながら、引き付けあう力の大きさの計算方法も異なります。
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金属体(導体)への付着の場合
下図のように金属体に電荷Q[C]の点電荷がd[m]の位置に近づいたときの吸引力について求めます。金属体の静電誘導により、金属体の内側には近づいてきている点電荷と同じ静電気力を持った点電荷−Q[C]が発生しています。これを、「鏡像電荷」といい、その電気力を「鏡像力」といいます。
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絶縁体への付着の場合
フィルムやシート材など、表面積/質量の比が大きい物体の場合、クーロン力はその物体に作用する重量よりはるかに大きくなります。図は、フィルム面に帯電した粒子が引き寄せられる付着のメカニズムです。
絶縁体のフィルム面が帯電している場合、その表面の電荷密度をσ[C/m2]とすると、電界はE=σ/2ε0[V/m]になり、帯電している異物、ホコリの電荷量をQ[C]とすると、接近した異物、ホコリは、帯電面にF=Qσ/2ε0[N]の力で引き寄せられることになります。
【例】
絶縁体のシート表面を摩擦すると、電荷量は単位面積あたり10-5[C/m2]程度になるので、数式に当てはめると、そのときの帯電体表面の電界強度は、F=5.65×105[V/m]程になります。
このとき、直径1μm程度で表面電荷10-5[C/m2]
に帯電している異物、ホコリが近づいたとします。この異物、ホコリが持つ電荷量は3.14×10-17[C]なので、異物、ホコリは、F=5.65×105×3.14×10-17=1.8×10-11[N]程の力となります。この異物、ホコリを比重2〜3程度とすると、重力のおよそ1200〜1700倍もの力で引付けられていることになります。
フィルム表面に異物などが付着した場合に、容易に離れないのはこのような大きな力が働いているためです。
Q1でもありましたように、金属体(導体)への付着の要因は、帯電した異物、ホコリが金属体(導体)に近づくことで、金属体(導体)内部で静電誘導が発生することにあります。
静電誘導は、アースを接地していても発生する現象ですので、金属体(導体)側の静電気対策を行っても効果が期待できません。
上記の内容から、付着する異物、ホコリに対しての静電気対策が重要になりますが、大気中に浮遊している異物、ホコリを狙って除電することは現実的に困難ですので、雰囲気(空間全体)を除電する(常に除電できる環境を作る)というのが一般的な対策方法になります。
絶縁体への異物、ホコリの付着要因は、お互いが帯電していることなので、クーロン力が働かないようにすれば効果が期待できます。
具体的な方法としては、異物、ホコリの除電を行うよりも、対象物側を除電する方が効果が高くなります。
理由
絶縁物が持つ電荷量と、ひとつひとつの異物、ホコリが持つ電荷量を比較すると、圧倒的に対象物がもつ電荷量の方が大きくなり、そのため、当然のことながらクーロン力も大きくなるため、対象物側を除電する方が高い効果が期待できます。
また、大気中を浮遊している、異物、ホコリよりも一般的に除電しやすいということも対象物側を除電することで効果が期待できる要因になります。
静電誘導とは、金属体(導体)のように電気を流すことのできる物質で発生する現象で、下記の図のように、帯電した物質が近づいてくると、金属体(導体)内部の電子が移動し、あたかも金属体(導体)の表面部分が帯電した物質と逆極性に帯電したような状態になる現象です。
金属体の表面に電子が集まり、金属体の表面がーに帯電しているようになります。
金属体の表面から電子が遠ざかり、金属体の表面が+に帯電しているようになります。
エアガンに圧縮空気を投入し、付着した異物を吹き飛ばすという対策は非常に一般的な対策であり、効果が期待できる対策ではありますが、付着の原因となる「静電気」を除去している訳ではないので、吹き飛ばした異物が再度付着してしまうことがあります。
このような場合、エアガンと除電器を併用するという、より効果を出せる方法があります。(エアガンで吹き飛ばすのと同時に除電を行うことで、再付着の原因となる静電気の除去を、吹き飛ばしと同時に行う方法です)
ガンアタッチメントに除電器をつけることでエアパージと除電を同時に行えます。強いエアを入れる事でホコリの吹き飛ばしも同時に行います。
除電器にエアを入れる事で容器内の異物を吹き飛ばします。バー全体からエアを入れる事で広い範囲の除電除塵を行います。
圧縮空気だけでなく、除電器を併用することで、
- 除電を行うことで、異物、ホコリが飛ばしやすくなる
- 吹き飛ばした異物、ホコリは、再付着の要因となる静電気が飛ばされると同時に除去されているので、再付着防止になる
などのメリットがあります。
全ての異物、ホコリで同じ結果になるとは限りませんが、参考データをご紹介します。
除電器使用時の効果例
方法エアシャワーに除電器を取り付けます。除電器によってホコリの静電気が取り除かれ、人から離れるようになります。除電器がない場合はホコリが人に貼り付いたまま、クリーン空間に持ち込まれることになり、クリーン度が低下する原因になります。
除電器の効果を確認する方法除去したホコリの量を数えるために、エアシャワー内に粘着テープを貼り付けて髪の毛の付着量を測定しました。粘着テープは大きさを統一し、貼る場所、交換周期(1日2回)、を決めて一ヶ月間測定した結果が上のグラフになります。(測定中は通常通り出入りをしていました)
除電器のON/OFFによる
エアーシャワーの除塵効果の違い
(代表例:10mm以上の髪の毛の付着量で測定)