チョコ停対策Q&A
静電気対策の基礎知識、静電気による障害や破壊、除電器に関するよくある質問と回答をまとめています。
【原因】
ワークをパーツフィーダに投入する際、すでにワーク同士が擦れあい、摩擦帯電が発生しています。
また、ワークが積み重なった状態で振動が加わると、そこでまた、ワーク同士が擦れあい、摩擦帯電が発生してしまうことになります。
このようにワーク同士が擦れあい、摩擦帯電が発生すると、それぞれのワーク同士の間で、クーロン力が働き、極性の違うものは引付けあい極性の同じものは反発するという現象が発生します。
帯電列表から考えると、同じ物質同士の場合、帯電量は非常に小さく、ほとんど帯電しないということになりますが、実際はワーク表面の清浄度や偏析、密度差等によって表面エネルギーの状態が異なる結果となり、そのため摩擦帯電が発生し+、-どちらにも帯電する結果となってしまいます。
(ワーク表面の中でも、+に帯電する場所と-帯電する場所が発生するなど、例え同じワークであったとしても帯電の仕方は一定にはなりません)
【対策】
「ワーク同士が擦れあう」ことで摩擦帯電が発生しますので、擦れあっているところで極力摩擦帯電が発生しないようにすることが、対策の第一歩となります。
つまり、ワークを投入する時及び、ボウル内でワークが積み重なっているところなどで除電できるようにイオナイザを設置し、貼り付き対策を行います。
フィーダー部が金属なのか樹脂性なのかによって、貼り付いてしまうメカニズムは異なりますが、いずれの場合においても、ワーク自体が帯電していることが大きく付着の要因に影響しています。
フィーダー部が金属の場合
フィーダー部が金属の場合、ワークの帯電が付着の主要因になります。
帯電しているワークを金属体に近づけると、金属体内で「静電誘導」が発生し、ちょうど金属体の表面がワークの帯電極性と逆の極性に帯電しているような状態となります。
このことにより、ワークと金属体の間で、電気的に引付けあう力が働き貼り付いてしまいます。
フィーダー部が樹脂性の場合
フィーダー部が樹脂性の場合、金属の時のような静電誘導という現象は発生しませんが、常にワーク同士がこすれあっていたり、フィーダー部とワークが擦れることで摩擦帯電が発生します。
この摩擦帯電によって、ワークとフィーダー部との間にクーロン力が働くことになり、それによって貼り付いてしまうことになります。
フィーダー部が金属の場合と樹脂の場合で意味合いは異なりますが、いずれの場合についても残念ながらアースを取ることは、貼り付き防止には効果が期待できません。
フィーダー部が金属の場合
フィーダー部が金属の場合、金属体自体が帯電しないようにすることに対してはアースの効果が期待できますが、貼り付き防止となると、貼り付きの原因がQ02にある通り、帯電したワークが金属体に近づく(接触する)ことによって発生する静電誘導が原因となりますので、アースを取ることは効果が期待できません。(アースを取っていようが取っていなかろうが、帯電したワークが近づくと自然現象として静電誘導が発生しますので、残念ながら効果が期待できません)
金属体の表面に電子が集まり、金属体の表面が
-に帯電しているようになります。
金属体の表面から電子が遠ざかり、金属体の表面が+に帯電しているようになります。
フィーダー部が樹脂性の場合
フィーダー部が樹脂性の場合、もともと、絶縁体に対してはアースを取ること自体が効果の無い対策になりますので、貼り付き防止効果は期待できません。(樹脂のような絶縁体の場合、アース対策自体が効果のない対策となります)
絶縁体の場合・・・
アース線を接続しても、電気は流れません。
帯電防止スプレーとは、一般的に表面活性剤のことであり、塗布された部分が大気中の水分を吸収し表面部分で電気が流れる仕組みを作ります。
つまり、塗布された部分が導電性を持つことになり、このことにより静電気の発生及び帯電を防止することになり、簡単にできる静電気対策となりますが、この塗布膜がなければ当然のことながら効果が発揮できなくなります。
上記の内容から、帯電防止スプレーをふりかけた瞬間は効果が期待できるのですが、しばらくすると、この塗布膜が摩擦等で剥がれてしまい効果を失ってしまいます。
ワーク同士のくっつきの場合
ワーク同士のくっつきの場合、ワーク自体が帯電していることがくっつきの要因となりますが、付着する力は下記のような式で表すことができます。
図のようにそれぞれ帯電しているワーク同士が向き合っている場合、その間に働く電界の大きさは、E=(V1-V2)/dとなり、その間に働く力の大きさは、
F=ε0E2/2=ε0(V1-V2)2/2d2
となります。
ワークが装置(金属部)にくっつく場合
ワークが装置(金属部)にくっつく場合、ワーク自体の帯電量が付着する力に直接影響することになります。
図のように帯電しているワークが装置(金属部)に近づいた場合、その間に働く電界の大きさは、E=V1/dとなり、その間に働く力の大きさは、
F=ε0E2/2=ε0V12/2d2
となります。
静電気が放電することによって発生する、静電気ノイズの影響が考えられます。通常、帯電しているだけの状態の場合、帯電量としては大きくても電気が流れていない限り特に大きな問題になることはありませんが、この静電気が放電を起こすと、その瞬間に電流が流れ、周囲の電界が大きく崩れることになります。
このときの放電電流が、直接機器に影響を与えてしまうことも考えられますし、電界が崩れることによって、ラジエーションノイズが発生し、このノイズによって影響を受けていことも可能性として考えられます。
一般大気中で、一般オフィス環境の場合、放電電圧と放電距離は、一般的に下記のような関係となります。
電圧値 | 放電しない距離 | |
---|---|---|
不平等電界の場合 | 平等電界の場合 | |
電界の様子 | ||
1.0kV以下 | 0.2mm | 0.2mm |
3kV | 2mm | 0.8mm |
5kV | 4mm | 1.5mm |
8kV | 8mm | 3mm |
10kV | 11mm | 3.5mm |
15kV | 18mm | 5.5mm |
20kV | 25mm | 8mm |
25kV | 33mm | 10mm |
30kV | 40mm | 12.5mm |
※JIS規格より、抜粋