静電気対策の基礎知識
静電気対策の基礎知識、静電気による障害や破壊、除電器に関するよくある質問と回答をまとめています。
日常的によく知られている静電気の発生要因は、
- 物を擦り合わせる(摩擦帯電)
- 密着しているものを引き剥がす(剥離帯電)
という2つの現象ですが、実はもっと簡単な現象によって静電気が発生しています。
〈接触帯電〉
接触帯電とは、2つの物体が接近し、接触することによって、物質をプラスまたはマイナスに帯電させる現象のことです。
上図のように、接触することによって、それぞれの物体の持つ表面エネルギーの違いにより、片方の物質表面にある原子殻から電子(マイナス)が飛び出し、プラスに帯電することになり、もう片方は電子(マイナス)が飛び込んでくることからマイナスに帯電することになります。
これが、静電気発生の仕組みになります。
基本的に静電気の発生は、物体が接触した瞬間に発生(接触帯電)していますので、摩擦による帯電(摩擦帯電)も、接触帯電の一部になります。ただ、摩擦による帯電(摩擦帯電)の場合、接触面が擦り合わされることで、接触する面積が増えることや、摩擦による物質表面の温度上昇等により、接触帯電に比べてはるかに大きな静電気が発生することになります。
接触している物体を剥離(分離)させるとき、例えば、粘着テープを剥がすときなどに強い帯電現象が起こります。
この現象はQ1の「接触帯電」と同じなのですが、剥離(分離)の動作によって帯電することから一般に「剥離帯電」と呼びます。
この剥離帯電の場合、密着度が高いほど、大きな静電気が発生します。 また、帯電量は剥離速度に依存します。(剥離の速度が遅いと小さい静電気放電が継続して発生するため帯電量は少なくなり、剥離速度が速いと静電気放電が抑えられるため、帯電量が大きくなります)
静電気も電気の一種ですので、まずは、+の静電気と-の静電気があります。
それぞれの静電気の持つ性質としては、それぞれ下記のような性質があります。
-
帯電物から飛び出す方向に電気的な力が働く
-
帯電物方向に向く電気的な力が働く
また、同じ極性に帯電している物質が近づくと、物質の間に反発する力(斥力)が働き、異なる極性に帯電している物質の場合、物質の間に引付けあう力(引力)が働きます。
このときに発生する電気的な力のことを「クーロン力」(単位:N)と呼び、その電荷量と力の関係が「クーロンの法則」により示されています。
金属体も帯電は起こります。
一般的に、金属体(導体)は帯電しないと思われがちですが、下図のように電気的に絶縁された状態の場合、やはり絶縁体と同様、摩擦や剥離といった現象に伴い静電気が発生します。
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接地されている場合、摩擦、剥離等の動作で静電気は発生しますが、直ぐに接地線(アース線)を伝って静電気が除去されることになります。
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接地されていない場合、摩擦、剥離等の動作で発生した静電気は、どこにも逃げ道がない為、静電気を逃がすことができません。(帯電)
人体に感じることのできる静電気は、一般的に±3000V(±3kV)以上といわれています。
表に、人体への衝撃と電圧との関係を表した表がありますので、この表を参考にしてください。
人体の電撃電位[kV] | 電撃の強さ |
---|---|
1.0 | まったく感じない |
2.0 | 指の外側に感じるが痛まない |
3.0 | 針で刺された感じを受け、チクリと痛む |
5.0 | 手のひらから前腕まで痛む |
6.0 | 指が強く痛み、後腕が重く感じる |
7.0 | 指、手のひらに強い痛みとしびれを感じる |
8.0 | 手のひらから前腕まで、しびれた感じを受ける |
9.0 | 手首が強く痛み、手がしびれた感じを受ける |
10.0 | 手全体に痛みと電気が流れた感じを受ける |
11.0 | 指が強くしびれ、手全体に強い電撃を感じる |
12.0 | 手全体に強打された感じを受ける |
「静電気安全指針」産業安全研究所編
2つの物質が接触や摩擦によって帯電するとき、どちらか一方が+に帯電し、もう片方が-に帯電することになります。
このようなとき、物質(例えば紙など)は、必ず+側に帯電するのかというと、実はそうではなく、+に帯電する場合もあれば、-に帯電する場合もあります。
では、この+・-どちらに帯電するのかは何によって決まっているのかというと、物質そのものの材質によって決まっているのではなく、接触(摩擦・剥離)する物質との組み合わせによって決まります。
つまり、通常は+に帯電する物質でも、より+に帯電しやすい物質と接触(摩擦・剥離)すると-に帯電するということになります。上記のように帯電極性は、接触する相手によって変化し、それらの傾向をまとめたものを「帯電列」といいます。
帯電列は、各物質の材質ごとに+に帯電しやすいのか、それとも-に帯電しやすいのかを順番に並べたものですので、接触する物質によってどちらに帯電するかを判断する目安になります。
また、帯電列上、順序が離れていれば離れているほど、一般的に帯電量が大きくなるといわれています。(帯電列上、同じ材質の場合、帯電が起こらないことになりますが、現実的にはたとえ同じ材質であっても帯電は発生します。しかしながら、帯電列上の順序が離れている場合と比較すると、帯電量は小さくなる傾向になります)
見方の例
-
- ガラスと木綿を擦った場合
- ガラス:+に帯電
木綿:-に帯電
-
- 木綿とテフロンを擦った場合
- 木綿:+に帯電
テフロン:-に帯電
電界(電場)とは、帯電した物体の周りに存在するもので、その帯電物の電荷によって働く力の存在する領域を表します。
例えば、ある空間に帯電物(電荷)が存在すると、その帯電物を中心に球状に広がり、中心から遠ざかるにつれて力の強さが小さくなります。
また、この電界の強さのことを「電界強度」と呼びます。この電界強度は、力の大きさだけでなく、方向性を持つ力となります。
(+の帯電物の場合、中心から外向きの力が働き、-の帯電物の場合、中心方向への力が働きます)
点電荷の作る、電界強度
ある空間に点電荷Q[C]が存在し、その電荷に働く力をF[N]とした場合の電界強度は、
E=F/Q[V/m]
(電界の単位[V/m]は、単位距離あたりの電位差を表します)となりますので、
F=EQ[N]
となり、点電荷の作り出す電界強度は、
E=Q/4πε0r2 ε0:真空の誘導率、r:距離
という式で表すことができます。
この式から、点電荷Q[C]からの電界強度は、電荷量に比例し、点電荷からの距離[r]の二乗に反比例することになります。
電気力線とは、ファラデーによって発明された、電気力の様子を視覚的に表現するための仮想的な線のことです。
電気力線は正の電荷から負の電荷へと向かう線として書く。
電荷のないところで途切れたり2つ以上の電気力線が交わったりすることはない。
ある閉曲面を通過する電気力線の本数はその閉曲面の内側に含まれる電気量に比例する。
というルールによって作図されます。
よって電気力線の密度が、弱い電気力の働く場所では疎に、強い電気力が働く場所では密となるように電気力線は引かれます。