静電破壊(ESD破壊)

IC(集積回路)などの電子部品は、微細な電気が流れるだけで回路に異常をきたします。静電気による放電も例外ではなく、電子部品が静電気によって破壊されることを「静電破壊」と呼びます。
ここでは、静電破壊のメカニズムと対策について見ていきます。

静電破壊のメカニズム

静電破壊は、単に帯電のみを理由として発生する現象ではありません。
帯電した静電気が放電することで通常より多くの電流が回路上に流れ、それにともなって発生した熱が電子部品を破壊するのです。

静電破壊のメカニズム
本来絶縁されている回路パターンが、放電によって発生した熱で破壊された例

つまり放電しなければ静電破壊は発生しません。静電破壊を防ぐには、放電しない状態を作ればいいのです。
放電するかしないかは電圧の差(電位差)の有無に関係します。例えば次の図のように、人体が10 kV、車が0 Vの状態で車のドアに手を触れると放電が起きます。両者の間に電圧の差(電位差)がある場合、電圧が高い方から低い方へと放電が起きます。高い方から低い方へ電気が流れることでバランスを取ろうとするのです。

静電破壊のメカニズム

したがって、電子部品と触れるものとの間の電圧の差(電位差)をなくせば、放電しない状態を作ることができます。

静電破壊のメカニズム
電圧の差(電位差)がなければ放電しない

静電破壊の対策

静電破壊対策のポイントは、主に次の3点です。

  1. 静電気を発生させない(設計で対策)
  2. 静電気を除去する(アース、除電器など)
  3. 放電させない(導電マットなど)

各業界で、一般的とされる静電気の管理レベルは次のとおりです。

  • 半導体業界: ±100 V以下(素子によって耐性に違いがあります)
  • 液晶業界: ±100 V以下
  • MRヘッド: ±10 V以下
  • GMRヘッド: ±5 V以下

具体的な対策は、アース、導電化、除電器(イオナイザ)です。特に、アースが取れない場合は除電器(イオナイザ)の使用が便利です。

要因別の対策例

静電破壊による電子部品の壊れ方にはいくつかのパターンがあります。トラブルのメカニズムを理解すれば、とるべき対策がわかります。

人体帯電モデル:人から電子部品への放電

人体帯電モデル:人から電子部品への放電

静電気を帯びた人が電子部品に触れることで放電が起き、破損するパターンです。この場合、リストストラップなどで人を除電すれば部品の破損を防ぐことができます。

マシンモデル:装置から電子部品への放電

マシンモデル:装置から電子部品への放電

静電気を帯びた装置から電子部品への放電が起き、破損するパターンです。装置がアース接地されていれば防ぐことができます。

デバイス帯電モデル:電子部品自体の帯電による破壊

デバイス帯電モデル:電子部品自体の帯電による破壊

電子部品自体が帯電し、どこかに放電して破損するパターンです。部品自体の静電気をなくす必要があるため、除電器(イオナイザ)の使用が効果的です。

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