ISO13849-1の改訂
「機械の安全性-制御システムの安全関連部:設計のための一般原則」であるISO13849-1の改定とその背景、カテゴリによる要求事項について説明します。
改訂の背景
国際規格のひとつ「ISO13849-1」 (機械の安全性-制御システムの安全関連部:設計のための一般原則) が2006年に改訂されました。改訂の背景として、制御システムの安全関連部を構成する安全機器にトランジスタやMOS-FETなどの半導体部品が使われ、制御の方法もハードワイヤによる制御からソフトウェアによる制御へ移ってきたことが挙げられます。
従来の「カテゴリ」の考え方では機械式安全装置や強制ガイド式リレーを用いたシステムアーキテクチャ(構造)によって安全性が決定されていたため、部品の「信頼性」や「品質」による安全性については十分に考慮できているとは言えませんでした。
そのような状況の中、2000年頃から機械の安全性を機能と信頼性の面から規定しよう、という流れが起こりました。これが「機能安全」という考え方です。従来のEN954-1をベースとしたISO13849-1:1999に、機能安全が定義されたIEC61508(IEC62061)の内容を取り入れて改訂されたのが、ISO13849-1:2006です。
改訂内容
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- ISO13849-1:1999
- 従来のISO13849-1:1999 では、制御システムの安全関連部が不具合(障害)に対する抵抗性と不具合(障害)条件下でどのような挙動をおこなうかを、その構造によって分類する「カテゴリー」という考え方がありました。
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- ISO13849-1:2006
- ISO13849-1:2006 では、構造による分類である「カテゴリー」に加えて、部品の信頼性や品質(故障率や自己診断率)など定量的に表される項目を組み合わせて、安全関連部の信頼性を定義します。
参考:改訂前の要求事項
ISO13849-1:1999では、カテゴリの決定方法と要求事項を規定しています。
記号 | 記号の内容 | ランク | ランクの内容 |
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S | ケガの度合 | S1 | 軽傷(打撲傷等) |
S2 | 重傷(手足の切断、死亡等) | ||
F | 危険にさらされる度合 | F1 | ほとんど無い |
F2 | 頻繁から常時 | ||
P | 危険を避けられる度合 | P1 | 可能 |
P2 | 不可能 |
- 記号の解説
- ランク分けの際、目安となる例を紹介します。
- S:休業が必要、もしくは応急処置で済まされない傷害はS2(重傷)とみなす。
- F:1日1回以上、危険源へ接近の必要性( 正常運転時、保守、補給等)がある場合、F2( 頻繁から常時)とみなす。
- P:危険物の接近速度が250mm/秒 以上の場合、P2(不可能)とみなす。
※参照規格 ANSI/RIA R15.06より
ISO13849-1:1999におけるカテゴリ要求事項
カテゴリー | 要求事項の概要 | 制御システムの動作 |
---|---|---|
B | 制御システムや保護装置の安全関連部は、想定される外的影響に絶えられるよう、適切な規格にしたがって設計、構成、選定及び組立がなされること。 | 故障発生時、安全機能は失われる。 |
1 |
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故障発生時、安全機能は失われるが、その発生確率はカテゴリBよりも低い。 |
2 |
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3 |
(1)単一故障により安全機能が喪失しないこと。 (2)できる限り単一故障が検出できること。 |
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4 |
(1)単一故障により安全機能が喪失しないこと。 (2)次の安全機能が動作する時、又はそれ以前に単一故障が検出できること。 |
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※安全原則とは、(1)短絡保護にヒューズを使用する、(2)部品寸法に余裕を持たせる、定格の低減を行う、(3)不具合時必ず回路オープンになるようにする、(4)不具合を早期発見する、(5)接地対策を行う、等のことをいいます。