産業用ロボットの生産性を高めるカギは
位置決め能力とキャリブレーション
産業用ロボットは、生産性向上や省人化、品質向上など、多くの導入メリットがあり、自動車・自動車部品業界をはじめ、高い精度が要求される電機業界・電子デバイス業界、安全性が求められる食品業界・医薬品業界でも積極的に活用されています。しかし、従来の産業用ロボットは、溶接やハンドリングなど、基本的な作業に利用範囲が限定されていました。

それが近年では、「センサ(カメラ)」「画像処理システム」を組み込んだ「ロボットビジョンシステム」の登場により、利用範囲が大きく変化しています。そこで今回は、産業用ロボットとロボットビジョンシステムによって可能になった「位置決め」「キャリブレーション」に注目し、生産性向上のポイントを解説します。
産業用ロボットの位置決め能力が作業の幅を広げる
従来の産業用ロボットは、決められた動作を繰り返し行うことに特化し、位置ずれなどに対処できないという課題がありました。そこで製品に合わせて専用のラインやパレット、パーツフィーダーなどを用意する、または人間の手作業でワークの位置や向きを揃える必要があり、手間とコストがかかっていました。この位置決めを自動化する方法のひとつがロボットビジョンシステムです。
ロボットビジョンシステムは、センサ(カメラ)でワークの位置や角度を捉え、画像処理システムで識別・判断し、ロボットに作業指示を出します。ロボット単体が“体だけの状態”だとすれば、ロボットビジョンシステムはセンサ(カメラ)が“目”、画像処理システムが“脳”の役割を果たし、対象物を確認・認識・判断をしながら人間のように作業ができるわけです。
人間 | ロボット単体 | ロボットビジョン システム |
|
---|---|---|---|
対象物を確認する | 目 | - | センサ(カメラ) |
対象物を認識・判断する | 脳 | - | 画像処理システム |
対象物を掴んだりする | 体(手) | ロボット(ロボットアーム) | ロボット(ロボットアーム) |
ロボットビジョンシステムの導入で位置決めができれば、専用のラインやパレット、パーツフィーダーなどが不要になり、手間・コストの削減と大幅な効率化が可能になります。高精度な位置決めにより、1つのラインで異なる製品の生産を同時に行うこともできます。単純作業しかできなかった産業用ロボットは、位置決め能力を得ることで作業の幅が広がります。そのためには、ロボットビジョンシステムがカギを握っています。

今までは難しかった位置決めにも対応する最新テクノロジー
以前のロボットビジョンシステムは、センサ(カメラ)や画像処理システムの能力が低く、正確な位置決めが困難でした。しかし、近年では、センサ(カメラ)や画像処理システムの技術革新、アプリケーションの開発により、非常に高い精度で位置決めが可能になり、以下のような生産現場の悩みを解決できます。
- 製品に合わせて専用ラインを設計しなければいけない
- 製品ごとに専用パレットやパーツフィーダーを用意しなければいけない
- パーツフィーダーなどの設置スペースを用意しなければいけない
- 人による位置決めは時間がかかり、生産性を上げられない
- 専用ラインは不要、異なる製品を1つのラインで生産できる!
- 専用パレットやパーツフィーダーは不要、コスト削減に効果を発揮!
- パーツフィーダーは不要、限られたスペースに産業用ロボットを設置できる!
- 高精度なセンサ(カメラ)や画像処理システムなら微細な変化も検出可能!
最新テクノロジー01 高解像度のセンサ(カメラ)
近年は高解像度のセンサ(カメラ)が普及し、高精度な撮像が可能になりました。キーエンスでは、あらゆる対象や工程に対応できる多彩なセンサ(カメラ)をラインナップしています。さらに4つのカメラと1つのプロジェクターを一体化した3Dロボットビジョンシステムも用意し、作業やワークに合わせて最適なシステムを構築可能です。
2Dセンサ(カメラ)
- 6400万画素
- 取り込み範囲:8192×7808画素
- 2100万画素
- 取り込み範囲:5104×4092画素
- 500万画素
- 取り込み範囲:2432×2040画素
- 200万画素
- 取り込み範囲:1600×1200画素
- 47万画素
- 取り込み範囲:784×596画素
- 31万画素
- 取り込み範囲:640×480画素
3Dロボットビジョンシステム
4カメラ1プロジェクターの一体型
136枚の取得画像から最適解を0.5秒で算出
最新テクノロジー02 幾何形状パターンマッチング
「ShapeTraxTM」
ロボットビジョンシステムの画像処理では、一般的にパターンマッチング(パターンサーチ、テンプレートマッチング)という技術が用いられます。パターンマッチングは、撮像した画像データの中から登録したパターン(サンプル、テンプレート)と同じものを検出します。ただし、部品の精度にばらつきがあったり、照明が安定しなかったり、欠損や重なりなどがあるとパターンを正確に検出できないケースがあり、精度を上げると処理時間がかかり、生産効率が低下するという問題がありました。
キーエンスのロボットビジョンシステムは、パターンマッチングの精度向上を図るとともに、対象の輪郭情報を用いてサーチする幾何形状パターンマッチング「ShapeTraxTM」という技術を採用しています。ShapeTraxTMは、従来のパターンマッチングでは検出が難しい不明瞭な画像や、低コントラストな環境下でノイジーな画像でもノイズと必要な情報を自動的に判別し、高速で安定したサーチを実現。高いロバスト性で登録時の状態から撮像状態が変化しても正確にサーチできることが特徴です。
- 【課題】
- きれいなマスターワークを用意できない
照明が安定せず、理想的な輪郭抽出が難しい




- 特徴描画ツール
- ワークの形状に合わせて特徴を描画可能な「特徴描画ツール」で安定したサーチを実現します。
ワークの形状に合わせ特徴を描画可能
- 【課題】
- ピック可能なワークだけを認識したい
- 検出対象選別条件
- サーチと同時にワーク周囲スペースの有無を検知し、ピッキング可能か判別します。わずかな特徴の違いによる裏表判断も可能です。
- 重なり排除
- 重なっているワークを認識してサーチ対象から除外します。隠れているワークのみを除外することも可能です。
- 【課題】
- 視野の端にあるワークも安定検出したい
- ゆがみ許容範囲
- レンズのゆがみは、視野の端にいくほど大きくなりますが、ゆがみ許容範囲を設定することが可能です。レンズ特性やサーチ対象の傾きによって生じるゆがみに対する検出安定性が向上します。
最新テクノロジー03 3Dロボットビジョンシステム
従来の2Dロボットビジョンシステムは、高さが検出できないので重なり合った対象物の位置を認識することが困難でした。そのようなお悩みに応えるため、キーエンスでは3Dロボットビジョンシステムを用意しています。例えば、箱の中にバラ積みされたワークのピッキングなど、2Dロボットビジョンシステムでは難しかった作業も可能です。
方向依存性・死角のないサーチを実現
4つのカメラで生成した死角のない画像と新開発3Dサーチで高速に最適な検出結果を導きます。ワークの位置や向きに影響を受けない安定したサーチを実現します。

業界最高のロバスト性能を実現
新開発のプロジェクターと高精細CMOSセンサにより、強力な照射光量と広いダイナミックレンジを実現します。複雑形状や拡散反射が弱いワークでも形状を正確にとらえることが可能です。

確実な表裏判別、回転位相決めを実現
輪郭形状の特徴と表面形状の特徴を同時に用い、細かな特徴も確実に捉えます。また、対象物の細かい特徴を登録できるので従来難しかった表裏判別や回転の位相決めを可能にします。

いつも試行錯誤・・・
よくあるお悩みのひとつ、キャリブレーションとは?
キャリブレーション(Calibration)は、日本語に訳すと「較正(校正)」になります。産業用ロボットは、時間の経過とともにプログラムの座標位置からずれが発生するので、そのずれを調整する作業をキャリブレーションと呼びます。産業用ロボットのキャリブレーションは、「調整(アジャスティング:Adjusting)」という意味合いも強くなっています。そして産業用ロボットの導入が進まない、導入しても生産性が上がらない要因としてキャリブレーションの手間が挙げられます。
一般的な産業用ロボットは、ティーチングペンダントを使い、ロボットを実際に動かしながら動作を記録・再生する「ティーチングプレイバック方式」を採用しています。このティーチングペンダントを使って行うティーチングを「オンラインティーチング」と呼び、新規プログラムを作成するときはもちろん、日々のキャリブレーションでも必須の作業です。
そのため産業用ロボットを利用するうえでティーチング技術者(ティーチングマン)が必要不可欠です。しかし、熟練のティーチング技術者を育成するには時間がかかり、育成には手間と人件費がかかります。チィーチング技術者がいたとしても、始業時や段取り替えで都度ティーチングを行う必要があるので工数がかかり、作業者によって精度にばらつきも発生するという問題がありました。
- 【キャリブレーションの課題】
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- 手動でのティーチングは時間がかかる
- 操作する人によって精度にばらつきが発生する
- 設置ずれが生じたときに再調整が難しい
- ティーチング技術者が不足している

誰でも簡単にできるオートキャリブレーション機能
キャリブレーションの課題を解決するために、キーエンスのロボットビジョンシステムは「オートキャリブレーション機能」を搭載しています。従来は、人が目で確認し、ティーチングペンダントを操作しながら行っていたキャリブレーションがワンクリックで完了するので、大幅な時間短縮と生産性アップにつながります。2Dロボットビジョンシステムはもちろん3Dロボットビジョンシステムにも対応しています。また、キーエンスのロボットビジョンシステムは、多くの産業用ロボットメーカーに対応しており、メーカーを設定するだけで各社の標準コントローラーと接続できるので手間もかかりません。すでにある産業用ロボットという資産を活かせます。
- 【オートキャリブレーションで課題を解決】
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- ワンクリックで簡単にキャリブレーションができる!
- 誰が操作しても常に高精度、製品品質の安定につながる!
- 設置位置がずれても即実行、即復旧ができて再現性が高い!
- ティーチング技術者の育成にかかる時間とコストを大幅カット!
3Dロボットビジョンシステムもオートキャリブレーションに対応
ロボットビジョンを使って位置決め自由自在、しかも簡単!
産業用ロボットは、非常に便利な反面、作業範囲が限られていたり、専用ラインを用意する必要があったり、技術者の不足など多くの課題がありました。しかし、ロボットビジョンシステムを活用することで課題解決が可能です。そのカギを握るのがロボットビジョンシステムによって実現した高精度な位置決めとオートキャリブレーションです。キーエンスの2Dロボットビジョンシステム/3Dロボットビジョンシステムは、ともに精度・安定性ともに高く、オートキャリブレーションに対応しているので生産性アップに効果的です。そのほかにも多くの機能で生産性向上に貢献します。以下の「ロボットビジョンの活用事例」には、業種別・工程別に生産性アップの具体的な方法をまとめています。ぜひ併せてご覧ください。